尊敬するリーダー1位
世界最大級のコンサルティング&監査法人であるPWC(プライスウォーターハウスクーパース)。
同社が2013年に実施した「世界のCEOが尊敬するリーダー」で1位に輝いたのが、かつての英国宰相ウィンストン・チャーチル(1874-1965)だった。
そのチャーチルが首相に内定する1940年5月9日から、下院で演説する6月4日までの27日間を描いたのが本作である。
40年5月9日。ヒトラー率いるナチスドイツ軍は、すでに東欧と北欧を制圧し、ベルギー国境にまで軍を配置していた。
10日。ついにナチス軍はベルギー、ルクセンブルク、オランダに侵攻開始。
英国では国防政策の誤りを世論から糾弾されたチェンバレン首相が退陣し、チャーチルが首相に就任する。
それまで政治家として幾多の失敗を繰り返してきたチャーチル。だが、挙国一致の連立政権の首相として野党が首を縦に振るのは彼しかいないという妥協の選択だった。
屈服か抗戦か
英国へのナチス軍の上陸が現実味を帯びてくるなか、身内である保守党はヒトラーとの和平工作に傾く。
13日。チャーチルは首相としての最初の演説で徹底抗戦を訴えるが、保守党内は冷ややかだ。
25日。英国軍など連合軍30万人余はフランスのダンケルクでナチス軍に包囲され、絶体絶命の危機にあった。
ムッソリーニのイタリアを仲介役にヒトラーとの和平交渉を強く主張するチェンバレンら。それは罠だと言うチャーチルの言葉も受け入れようとしない。
ヒトラーに屈するべきか、劣勢のなかで断固として戦うべきか。苦悶するチャーチルのもとに、27日の夜、人目を避けてある人物が訪れる。国王ジョージ6世だった。
「私は君を支持する。街へ出て人々の声を聞け」
そして6月4日、下院でチャーチルの演説がはじまった――。
重厚なキャストとスタッフ
この映画の見どころは、まず豪華なキャストだ。
チャーチルを演じるのは、名優ゲイリー・オールドマン。本作でも第75回ゴールデン・グローブ賞主演男優賞にノミネートされた。
孤独な宰相を励ます妻クレメンティーンには、「イングリッシュ・ペイシェント」などで名高いクリスティン・スコット・トーマス。
国王ジョージ6世には、「ローグ・ワン/スターウォーズ・ストーリー」のベン・メンデルソーン。
監督は「プライドと偏見」「つぐない」で絶賛を浴びたジョー・ライト。
脚本は「博士と彼女のセオリー」のアンソニー・マクカーテン。
当時の戦時作戦室や議会を忠実に再現したプロダクション・デザイナーには「美女と野獣」のサラ・グリーンウッド。
メーキャップには、既にハリウッドを引退して現代美術家になっている辻一弘が、主演ゲイリー・オールドマン直々のオファーで参加した。
実際の議事堂で撮影許可
映画の最大の見せ場であり焦点は、「言葉の魔術師」チャーチルが演説の草稿を紡ぎ出していく場面であり、ラストの6月4日の下院演説だ。
とりわけ危機に直面した際のリーダーにとって、言葉がいかに重要か。
大宰相であったチャーチルは、じつは執筆した回顧録『第二次世界大戦』で53年のノーベル文学賞を受賞している。
映画とは関係ないが、その53年、昭和天皇の名代として、まだ戦後の反日感情が強かった英国を訪問した皇太子・明仁親王(今上天皇)を首相として迎えたのもチャーチルである。
この折、チャーチルは徹底して明仁親王を丁重に遇し、日英が敵愾心を乗り越えて友好関係に転じられるよう心を砕いて、やはり名スピーチをおこなっている。
なお、映画の中でチャーチルが国会議事堂内を大股で歩くシーンには、特別許可を得て本物の議事堂が使用されている。
首相官邸(ダウニング街10番地)も、外観のシーンは実際の官邸でロケがおこなわれた。
言葉によって英国民を鼓舞し、ヒトラーの野望を打ち砕いた宰相。その最初の27日間のドラマを、ぜひ映画館で楽しんでほしい。
映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(原題:Darkest Hour)
3月30日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー!
アカデミー賞最有力!
ゴールデン・グローブ賞主演男優賞<ゲイリー・オールドマン>受賞!監督:デレク・シアンフランス
製作:デビッド・ハイマン、ジェフリー・クリフォード
製作総指揮トム・カーノウスキー、ロージー・アリソン監督:ジョー・ライト
製作:ティム・ビーバン
エリック・フェルナー
リサ・ブルース
アンソニー・マッカーテンキャスト:ゲイリー・オールドマン、クリスティン・スコット・トーマス、リリー・ジェームズ、スティーブン・ディレイン、ロナルド・ピックアップ
2017年|イギリス|125分
配給:ビターズ・エンド、パルコ© 2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.