東京都の私立高校授業料実質無償化
1月25日、小池都知事になって初めてとなる東京都の新年度(平成29年度)予算案が発表された。
待機児童対策や無電柱化などへの予算とともに、定時制や専修学校を含む私立高校の授業料実質無償化対策も盛り込まれている。
予算案発表に先立つ16日、小池知事は「年収760万円未満の世帯を対象に、平均授業料の44万2千円を国と都で負担する」方針を明らかにした。
東京都にある440の高校のうち、私立高校は5割を超す236校(平成28年現在)。このほど安倍政権が打ち出した給付型奨学金とあわせて、〝経済格差による教育格差〟是正へ首都東京からの大きな一歩となる。
ところで、この小池知事が自身の選挙公約にもしてきた私立高校無償化について、共産党があきれたプロパガンダを流している。
知事の発表から2日後、共産党の機関紙『赤旗』が、まるでこれが共産党の実績であるかのように報道したのだ。
今回の方針は私立高校生の父母や教職員、都民と日本共産党などの運動が実ったものです。(『赤旗』1月19日付)
しかも「党と住民の運動実る」と見出しを付けて同党都議を登場させ、
私立高校生の授業料負担軽減や、給付型奨学金は、私たちが都民のみなさんと力を合わせて要求してきたものであり、歓迎します。(同)
というコメントまで掲載した。
知事「公明党と話が整った」
この小池知事の発表は各メディアでも大きく報じられた。だが、それらテレビや新聞がそろって報じたのは、知事がかねてから無償化を推進していた公明党と協議をし、公明党と合意ができたことで実現に至ったという経緯なのだ。
東京は私立の高等学校に通う割合という比率が他と比べまして段ち(※編集部注「段違い」)に高いんですね。誰もが学べる環境を実現していくと。公明党さんからもこれでいこうと話が整った。(「日本テレビ」ニュース1月17日)
私立高の実質無償化は都議会第2会派の公明党が強く要望していた。今回の判断は今夏の都議選をにらんだ連携策とみられ、知事は「公明党と話が整った。一致できてよかった」と強調した。(『日本経済新聞』1月17日付)
小池氏が連携する都議会公明党は、国の就学支援金の基準と同じく年収九百十万円未満の世帯まで拡充し、私立高の授業料の「実質無償化」を図るよう要望していた。(中略)小池氏は「公明党さんとも『これでいこう』と話が整った」と舞台裏を明かした。(『東京新聞』1月17日付)
ここまで各メディアがわざわざ公明党との連携の結果を報じているのに、「共産党の実績」と『赤旗』1面でデカデカ報じる相変わらずの体質。国政はもとより、どこの地方議会にいっても共産党が他会派から相手にされず嫌われる理由である。
さすがにこの厚顔無恥な〝実績横取り〟は腹に据えかねたのだろう、1月25日付『公明新聞』が「編集メモ」で痛烈に一蹴している。
一連の報道と公明党の取り組みを見れば、公明党が「授業料無償化」の〝旗振り役〟として重要な役割を果たし、知事の決断を引き出したことは明らかだ。
一方、今回の決定を共産党の成果と関連づける記事を17日付で載せた主要紙は一紙としてない。これでは、同党が「赤旗」でいくら〝自分たちがやった〟と宣伝しようが、「実績横取り」を狙っていると指摘されても仕方あるまい。
共産党による横取り狙いの〝実績〟アピールは、いつも選挙が近づくほど目立つようになる。
関連記事:
「給付型奨学金」がついに実現――〝貧困の連鎖〟を断て(ライター 松田 明)
「分断」を煽っているのは誰か――ポピュリズムに走る野党(ライター 松田 明)
与野党の明暗が分かれた1年――から騒ぎに終始した民進党(ライター 松田 明)
小池知事〝笑顔の握手〟のワケ――「改革」支持した都議会公明党(ライター 松田 明)
「野党共闘」は狸の化かし合い――民共それぞれの暗い思惑(ライター 松田 明)
「不都合」を隠したのは誰か――年金国会で醜態重ねる民進党(ライター 松田 明)
新代表の〝耐えられない軽さ〟――「おまいう大賞」に輝いた蓮舫氏(ライター 松田 明)