〝情念〟に揺さぶられる先進諸国
2017年元日の各紙社説は、いずれも「分断を煽るポピュリズム」への警鐘を鳴らしている。
「反グローバリズム」の波が世界でうねりを増し、排他的な主張で大衆を扇動するポピュリズムが広がっている。国際社会は、結束を強め、分断の危機を乗り越えなければならない。(「読売新聞」)
昨今、各国を席巻するポピュリズムは、人々をあおり、社会に分断や亀裂をもたらしている。民主主義における獅子身中の虫というべきか。(「朝日新聞」)
トランプ現象で見られたように、選挙が一時の鬱憤晴らしになれば、民主主義そのものの持続可能性が怪しくなっていく。(「毎日新聞」)
英国のEU離脱、米国の大統領選挙、欧州に吹き荒れる極右と排外主義の嵐。今や先進諸国の政治は、負の情念に揺さぶられている、というのだ。
グローバル化が進み、どの国ももはや一国だけでは成長や豊かさが望めない。高齢者と若い世代。都市部と地方。変化に対応できる教育を受けた者と、その機を逸した者。さまざまなレイヤーで格差が広がるなか、生きていくうえでの「安心」「安全」さえも格差と認識され、憎悪と対立の火種になる。
嫉妬と漠然とした不安が高まると、それを政治的な求心力にしようと大衆を扇動する動きが出てくるのは当然であり、これは日本でも同じである。
「中道」を歩む自公政権
政権発足から5年目に入った安倍政権は、自公連立の安定した政治基盤を支えに、着実に成果を上げている。
2016年末の日経平均株価の終値は5年連続して上昇。年末としては20年ぶりの高水準となった。
太平洋戦争開戦から75年の節目で、安倍首相がハワイ真珠湾を慰霊し、日米の戦後史に「和解」を刻んだ。とりわけ、「リメンバー・パールハーバー」という75年来の憎悪の言葉を、そのまま使って〝和解の新たな記憶〟に転換させた知恵は、特筆されるものであったと思う。
敵か味方か、シロかクロか、100%安心か否か、という極端に傾きがちな時代のなかで、安倍政権は成熟した「中道」政治を進めている。政権発足当初に安倍首相が見せていたタカ派色を考えると、公明党との連立が、きわめて絶妙なバランスを保っている成果といえるだろう。
国内においても、昨年の参院選で自民党が「この道を。力強く、前へ」とアクセルを踏んだのに対し、連立パートナーの公明党は「希望が、ゆきわたる国へ」と、社会の亀裂を回避し修復する方向に目配りを見せた。
自公の連立そのものが、いわば多様な立場の結合であり、結果、自公は圧勝している。
時代遅れの政治手法
では、現下の日本において〝分断と対立〟を煽るポピュリズムに走っている者は誰なのか。
1月1日、小沢一郎氏は自宅で開いた新年会で挨拶し、昨年の「野党共闘」の結果を総括した。
けっして野党の勝利とはいえない。むしろ、大きな、私は、敗北であったと思っております。(「産経新聞」WEB版1月1日付)
国民の現在の政治に対する不平、不満、不信…。これはね、もうメディアの調査の内閣支持率うんぬんということとは全く別にですね、非常に大きくなっていると思っております。(同)
内閣支持率が高いということは、そこに多くの人の望む者が反映されているからなのだが、この老政治家は「不平、不満、不信」が「非常に大きくなっている」と煽る。
すっかり共産党に主導された野党4党の「共闘」が、なぜ国民から支持されず敗北に終わったのか。それはなにより、批判ばかりで対案がなく、こうした〝不平、不満、不信〟を煽って社会を分断しようとする政治感覚の古さと狡さに、人々がうんざりしているからではないのか。
2017年、政治に求められているのは、「分断を乗り越えていく」知恵と手腕である。不安と憎悪を煽り、社会に亀裂を作ることで票を稼ごうとする政治手法は、もはや害悪でしかない。
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