「野党共闘」という矛盾――理念なき数合わせに高まる批判

ライター
松田 明

露呈した「共闘」の限界

 民主党政権が崩壊し、自民党・公明党の連立による第2次安倍内閣が発足してから、この2016年10月26日で1400日、ちょうど200週間を経た。民主党政権が3人の首相を足して171週間だったから、これをすでに大きく上回っている。
 この間、民主党政権時代に比べて株価は倍増し、企業利益も賃金も上昇。就業者数は110万人以上増え、反対に失業者数は53万人減少した。有効求人倍率はすべての都道府県で1を超え、大卒求人率は7年ぶり、高卒就職率はじつに24年ぶりの高水準となっている。大学新卒者の5人に1人は就職先がなかった民主党政権時代とは隔世の感すらある。
 野党は「アベ政治を許さない」という陰気なメッセージを繰り返すだけで、与党に対抗できる政策も現実味のある政権構想も示せずにいる。内閣支持率や政党支持率の推移、7月の参院選や直近10月の衆院補選の結果を見ても、多くの国民が自公連立政権にさらなる期待を寄せていることは明らかだろう。
 野党の大敗に終わった補選翌日の『毎日新聞』は、

 ここ数年の国政選挙で野党が連敗している背景には、争点形成能力の不足がある。野党第1党の民進党が主導した補選で自民に太刀打ちできなかったことは痛手だろう。
 次期衆院選に向けて野党共闘をどうしていくかは重要な課題だ。与党に対抗していく争点形成を抜きに、数合わせを優先するような姿勢では「安倍1強」の壁は崩せない。(10月24日「社説」)

 と、政策も理念もおよそ一致せず政権の実現性もない、民進党と共産党などの「野党共闘」を〝数合わせ〟と批判している。

〝自己否定〟以外の何物でもない

 この1年余、民進党が共産党主導の「野党共闘」に飲み込まれていくことに、同党の支持母体である連合は危機感と不快感を募らせてきた。
 そもそも前身の民主党は政権交代可能な二大政党制という理想を掲げて設立されたはずだし、民進党の野田幹事長はこの9月の臨時国会でも、

 自民党に代わり政権を担い得る政党をめざすことを国民にお誓いする。(9月27日/野田幹事長の代表質問)

と大見得を切ったばかりだ。
 国家観も安全保障政策も経済政策もまったく一致しない共産党と〝統一候補〟を立てて共闘することは、自己否定以外の何物でもない。連合が、先の衆院補選でも共産党への嫌悪感を隠さなかったことは、むしろ当然のことだろう。
 この動きに危機感を強めている共産党の志位委員長は、記者会見でけん制した。

 連合指導部の「共産党と一線を画せ」との要求に従う道を選ぶのか、野党と市民の共闘に真剣に取り組む道を選ぶのか。民進党は前向きな決断をしてほしい。(『朝日新聞』10月27日付)

 自分たちの支持者だけを「市民」と呼ぶ、あいかわらずの手前勝手な尊大さには、本当にウンザリさせられる。
 日本が共産党に指導される国になることを夢想している者など、イデオロギーに染まった少数のコアな共産党支持者以外には誰もいない。およそリアルな政権担当能力を欠いた同党には、「政権への批判と憎悪の受け皿」という役割以上の何もないからだ。
 一度は政権を与えられながら、なぜ自分たちは国民の負託にこたえられなかったのか。今また共産党の〝不安商法〟に便乗し続けることが国民の望んでいる姿なのか。民進党は本気で総括をして、ぜひ「前向きな決断」をしてもらいたい。

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