自民党が公明党と連立する理由
日本は「成長社会」の時期を過ぎて、すでに「成熟社会」に入っている。
人口減少、少子化、高齢化、地方の過疎化といった問題を抱えながら、東日本大震災や熊本地震からの復興を進め、IT化が進む中で雇用を創出し、安心して子供を産み育て、どこの家に生まれてきた子供も自分が望む教育を受けられる社会をどう作っていくか。
政治が取り組まなければならないことは、あまりにも幅広く、複雑だ。
何を優先してほしいか、国民の意見はさまざまだ。
現在の自民・公明の連立政権が、日本が「成熟社会」に入ったとされる1990年代終盤からスタートしたことも偶然ではない。与党の政治にも、過去の自民党政治に加え、女性や若者、子育て世代、困難な中で生きる人々など、さらに多様な支持と声が必要になっているからだ。
自民党に比べれば国政では小さな議席に見える公明党が、これほど長く安定して連立政権を担えているのは、ひとつには支持基盤が強固で、ブームや風に流されないということもある。だが、理由はそれだけではない。
市区町村議会議員の数(平成27年末時点/総務省報道資料※)
公明党 2714人
共産党 2666人
自民党 2013人
民主党 735人
諸派 378人
社民党 253人
維新の党 137人
こころ 9人
元気 4人
都道府県議会議員の数(平成27年末時点/総務省報道資料※)
自民党 1338人
民主党 311人
公明党 207人
共産党 151人
諸派 90人
社民党 39人
維新の党 29人
生活の党 6人
※総務省 選挙関連資料「地方公共団体の議会の議員及び長の所属党派別人員調等」(平成27年12月31日現在)
「小さな声」を聞く力
じつは、公明党が連立与党として機能できるのは、圧倒的な数の地方議員がいることも大きいのだ。
日本の市町村議会で最も多くの議員がいるのが公明党。都道府県議会と合わせても、自民党に次ぐ第2党である。
しかも、ここが重要だが、公明党の場合が他党と違うのは、国会、都道府県議会、市町村議会で、議員に上下や親分子分の関係がない。「チーム3000」「ネットワーク政党」と称しているように、意思の疎通がとてもスムーズにいく。
自民党にとって、こうした機能を持つ公明党を連立のパートナーに持つことは、自分たちだけでは見えない問題、聞こえない声を拾い、「成熟社会」の新しい複雑な政治運営を可能にするうえで欠かせないのだ。
1000万人超の若者の意見を集めて官邸に要望を届けたボイスアクション、熊本地震で住宅ローンのある被災者への義援金が差し押さえられないようにする議員立法、2年後をめざす給付型奨学金の創設検討開始など、自公政権はたしかに動きが早い。
連立与党の一員となった今も、公明党には全国3000人もの地方議員と国会議員との強いネットワークが生きています。
「地方創生」と「一億総活躍社会」の看板は自民党が提示したわけですが、中身(政策)の具体案を提言できるのは、自民党ではなく公明党なのです。(『第三文明』8月号 藪野祐三・九州大学名誉教授)
私たちの暮らしの現場とどうつながっていくのかを見ていくと、遠いところに思えている国政選挙もまた、大切なものだと実感できてくる。
「参院選直前チェック」シリーズ:
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参院選直前チェック② 当選した「野党統一候補」はどこへいくんだ?
参院選直前チェック③ 「3分の2を取らせない」のごまかし
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参院選直前チェック⑦ 若い世代ほど自公政権支持な理由