維新・西田薫候補(大阪6区)が謝罪会見――他人の後援会や故人が「推薦人」に

ライター
松田 明

解散した団体や死亡した人が「推薦人」に

 選挙戦最終盤の10月24日、驚くような報道が出た。
 日本維新の会公認の西田薫候補(大阪6区/大阪市旭区、鶴見区、守口市、門真市)の陣営が、実際には推薦を受けてもいない団体や亡くなった人の名前を「推薦人」と記載した選挙運動ハガキを有権者に送っていたというのだ。
維新公認の候補者「推薦受けてない」後援会を「推薦人」と記載――「カンテレNEWS」10月24日

 ハガキには「私たちは西田薫さんを応援・推薦します!」とあり、「私も推薦します」という欄に「西端後援会」と印字されている。
 これは、前・守口市長だった西端勝樹氏の後援会のことだが、既に後援会そのものが解散している。実在しない後援会である上、維新の西田氏を推薦した事実もない。
 西端前市長は日本維新の会に所属していたが、政策をめぐって府議である西田氏と対立していた。
 後援会の元会長は関西テレビの取材に対し、

無断で名前を使われると非常に迷惑している。(「FNNプライムオンライン」10月24日

と怒り心頭だ。

 さらに西田氏の陣営は、この「私も推薦します」の欄に、既に亡くなっている人の名前を書き、2000人にハガキを送っていた。

公選法が定める「虚偽事項の公表罪」

問題を指摘された選挙ハガキ(@PVxMfCLJi7URsW2)

 この虚偽記載のハガキが画像付きでSNSに投稿されて騒動が大きくなると、24日午後になって渦中の西田薫氏が謝罪会見を開いた。
 名簿の第一紹介者の氏名を誤って推薦人欄に記載してしまったと釈明したが、存在しない前市長の後援会名を記載するなど、〝ミス〟で済まされる問題ではない。
 会見で西田氏は24日午後の選挙活動だけを自粛し、25日からは通常通り再開すると述べた。
 しかし、選挙活動を自粛するはずの24日午後、西田氏の選挙カーが走り回っていたと、選挙区の有権者からは疑問の声があがっている。

 日本維新の会の共同代表の吉村洋文・大阪府知事はマスコミの取材に対して謝罪の言葉を述べながらも、西田氏の処分については一言も触れなかった。
 公職選挙法では「虚偽事項の公表罪」(235条)が定められている。

 当選を得又は得させる目的をもつて公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者の身分、職業若しくは経歴、その者の政党その他の団体への所属、その者に係る候補者届出政党の候補者の届出、その者に係る参議院名簿届出政党等の届出又はその者に対する人若しくは政党その他の団体の推薦若しくは支持に関し虚偽の事項を公にした者は、二年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。(※下線は筆者)

 菊地幸夫弁護士は関西テレビに対し、

公職の候補者は、推薦とか支持に関して、虚偽の事実を公表すると、2年以下の禁固または30万円以下の罰金に処すると規定されています。
もし有罪になってしまえば、当選が取り消され、失職するということになりますから、決して軽いものではありません。(「FNNプライムオンライン」10月24日)

と、この虚偽記載の選挙ハガキが重大な事案であることを指摘している。

机を叩いて市職員に詰め寄る

 西田薫候補については、次期大阪府議会議長と言われるほど維新のなかで影響力を持つ一方、これまでもさまざまな問題が浮上していた。
 昨年9月の「FRIDAY DIGITAL」は、西田氏が守口市政に介入し、市議や市職員にパワハラをおこなったとされる出来事を報じている。

FRIDAYは怪文書に書かれた内容を確かめるべく、守口市の市議会、市職員、西田事務所の関係者など15名以上を取材。維新の会の守口支部に所属していた元市議のA氏は、こう証言した。
「政策を巡って敵対していた西端勝樹守口市長(当時)への嫌がらせで″採決事項に反対しろ″と西田氏に指示され、その通りに動きました。守口支部長である西田氏に公認取り消しや選挙妨害を匂わされ、従うしかなかったんです……。その後、嫌気が差して維新を辞めました」
FRIDAYは西田氏が市職員を拘束した際のものとされる音声を入手。そこには机を叩き、「どうなってんですか、その危機管理意識は」と職員に詰め寄る西田氏の声が録音されていた。パワハラを受けたという元市職員B氏が語る。
「西田氏に長時間拘束されて、その対応に追われ、十分なコロナ対策が出来なかったことが市民に申し訳ないです」(「FRIDAY DIGITAL」2023年9月8日

守口市議会が百条委員会を設置

 さらに今年8月には、守口市の文化や芸術事業に関する「社会教育関係団体補助金」に関し、議会への事前説明がないまま対象が拡大し増額されたとして、疑惑を解明するための百条委員会が設置された。

守口市は、文化や芸術の発展のため、関係する団体に「社会教育関係団体補助金」を支給していて、今年度は補助の対象を拡大し、予算を50万円から100万円に増額しました。
新たな補助の対象には、大阪維新の会の府議会議員が会長を務める団体も含まれています。
補助金の増額について市議会は、▽事前に議会への説明がなく、▽予算編成の最終段階で唐突に増額された形跡があるとして特別委員会を設置して調査を進めてきました。(「NHK 関西NEWSWEB」9月4日

 しかし、大阪維新の会所属の守口市・瀬野憲一市長らはなぜか特別委での職員への個別聞き取りを拒否。そこで、より権限の強い百条委員会の設置が決まった。この問題の「大阪維新の会の府議会議員」というのが、ほかでもない西田氏のことなのだ。
 一向に改善しないパワハラ体質や「セクハラ」「政治とカネ」など不祥事の連続に、離党者や立候補辞退者が続出している日本維新の会。有権者の厳しい目が注がれている。

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まつだ・あきら●ライター。都内の編集プロダクションに勤務。2015年から、「WEB第三文明」で政治関係のコラムを不定期に執筆。著書に、『日本の政治、次への課題』(第三文明社)がある。