「維新は国政を担う力がない」 ――鈴木宗男氏インタビュー(ダイジェスト版)

ライター
松田 明

(写真=共同)

 衆議院が解散し、10月15日公示、27日投開票の衆議院選挙へ向け、各党が短期決戦にしのぎを削っている。
 今回の選挙の最大の争点は、やはり「政治とカネ」になるだろう。野党側は、自民党の政治資金収支報告書不記載問題を〝裏金〟と攻め立てている。
 だが、領収書なしで政党が特定議員に資金提供する「政策活動費」等は、これまで公明党と共産党を除くすべての主要政党でまかり通ってきた。立憲民主党は「政治資金パーティーの禁止」を国会で叫びながら、その国会会期中に幹部らが政治資金パーティーを開催しようとしていた。
 日本維新の会にいたっては、最後まで政策活動費の存続を主張し、その領収書の公開さえ10年後に先送りするよう改正案を書き換えてしまった。日本維新の会は2023年の11月と12月の2カ月間だけで約620万円の政策活動費を使っているが、その大半は幹部の飲食代で、しかも1回あたりの参加人数も支払先も黒塗りしている。
 その意味では、野党も含めて「政治とカネ」の問題が厳しく問われる選挙であり、現実に政治改革を前に進められる能力のある政党を見きわめる選挙でもある。
 10月7日、日本維新の会は広島3区支部長の瀬木寛親氏に「不適切な会計処理があった」として、衆院選では非公認にすると決定した。

 なぜ、日本維新の会ではこれほど不祥事が連続するのか。同党の掲げる「身を切る改革」の実態はどうなのか――。1983年の初当選以来、長い政治キャリアを持ち、日本維新の会・国会議員団副代表をつとめながら昨年10月に同党を離党した鈴木宗男・参議院議員に、単刀直入にインタビューした。
 以下、そのダイジェスト版を紹介する。
 

※インタビューの全編を読みたい方はこちら⇒「鈴木宗男氏インタビュー全編」

トップの独断性で人が育たない

――日本維新の会は昨春の統一地方選で全国的に大きく躍進しました。しかし、この1年半だけで約40人が離党。不祥事も日替わり週替わりで起きています。こうした異常な事態が続く要因をどう考えられますか?

鈴木宗男・参議院議員 私は国会議員団の副代表として、日本維新の会に4年半いたんです。つまり、代表である馬場氏の次の責任者ですよね。しかし、1回も相談されたことがない。党内の資金の流れも一切開示されない。トップの独断性が強すぎるんです。すべて「馬場-藤田」の意向に従うというかね。民主主義という姿かたちが見えません。

 私は1人でも生きていける議員だからいいのですが(笑)、維新は経験の乏しい4回生以下の議員ばかりですよね。これでは人が育たないし、やる気をなくしてしまう。組織のガバナンスが利いていないから不祥事が多発するんですね。

――日本維新の会は今度の衆議院選公約で「政治腐敗の浄化」を掲げています。しかし、政治資金の横領や収支報告書の未提出で除名される者など、維新そのものが「政治とカネ」でも醜聞が絶えません。

鈴木 日本維新の会は「政治とカネ」で深刻な問題を抱えている政党だと思います。お金の透明性、情報開示が足りない。
 以前、下地幹夫さんが在籍していたときに指摘されたのですが、下地さんは当時、党の大幹部(国会議員団副代表であり選対本部長)でした。
 その下地さんが「党内の金の使い方がまったく明らかにされていない」と言われたんです。しかも、お金が大阪に全部集中しちゃう。日本維新の会は少なくとも今では約34億円の政党助成金をもらっているんです。では、その34億円の使われ方がきちんと情報開示されているかと言えば、されていない。

「身を切る改革」と言うけれども、私から言わせれば何も切っていない。国会議員の歳費を2割天引きしているだけです。それを被災地に7億円寄付したと豪語しているけれども、そんなものは「身を切る改革」ではありません。
 では34億円もの政党助成金をどう使っているのかと、私は逆に尋ねたいですね。天引きした議員歳費にしても、これこれを寄付しましたというお知らせは来ます。しかし、その他の使途は明かさない。

現実には何の実績もない日本維新の会

――党の生みの親である橋下徹氏も、維新の「政治とカネ」については、「自分たちの執行部の金の使い方すら徹底検証できない政党に政府のチェックなんてできるわけがない」「ここまで徹底して隠したがるというのはよほどチェックされたら困る金の使い方をしているのかと疑ってしまう」(10月1日の橋下氏のX)と痛烈に批判していました。

鈴木 維新の人たちが今、さかんに自民党の〝裏金問題〟を騒いでいる。じゃあ、維新のあなた方は自分たちの政治資金の帳尻合わせをちゃんとやっていますか? と、お尋ねしたいですね。一部の幹部だけで、さんざんブラックボックス化した政策活動費を使ってきた維新に、自民党を責める資格はありません。

 ご存じのとおり、日本維新の会は大阪の地域政党からスタートして国会にも進出してきましたね。しかし、私から言わせれば国政を担うだけの力量がない。議員の資質が足りない。
 名前は「日本維新の会」で、そのネーミングに惹かれた有権者も多かったでしょう。しかし、所詮は大阪の地域政党でしかないのです。

 逆に言えば、大坂の地域政党であるうちは、まだよかった。「東京に負けるもんか」と言っていればよかった。しかし、国政に進出すれば、オール日本でものごとを考える責務が生じます。
 自民党や公明党には、やはり政策通の議員が多数揃っている。さまざまな意見や価値観があるなかで、合意形成して実現する力量もある。

 維新は「身を切る改革」なんていう歯切れのいいことも言ってきましたね。しかし、国政でこれを実現しましたというのは何かあるでしょうか。「大阪・関西万博」は維新が要望したけれど、当時の安倍さんと菅さんの尽力で誘致できたものです。じゃあ、万博開催を要望した側の維新は、何か汗をかいたでしょうか? どんな努力をしたのか。あと半年後に開幕するのに、いまだに問題噴出でバタバタやっている。

維新は共産党そっくりの全体主義

――政治資金規正法の改正をめぐる国会論戦でも、最後まで「政策活動費」の存続を主張し、しかも「領収書の公開は10年後」と法律の付則に書き込ませたのは日本維新の会でした。ところが、法案を通した後で、「政策活動費の廃止」などと言っています。

鈴木 維新はテープレコーダーのように、ことあるごとに「既得権の打破」と言うわけですよ。それを〝改革〟するんだと言う。しかし、そんなのはもはや言葉の遊びです。実態は「反対のための反対」です。異論を許さないトップダウンも含めて、私は日本維新の会は共産党とそっくりだと思っています。
 維新は自分たちを〝真の改革政党だ〟と言いますが、真逆です。「改革」を語る資格はない。上が決めたことに黙って従えというのだから、むしろ「全体主義」に近い。

 トップとそのお気に入りのインナーサークルだけで赤坂あたりで飲み食いして、「馬場-藤田」にツケ回しし、明細も明かさない政党の金で処理している。その原資は本(もと)をただせば政党助成金、つまり税金も入っているわけでしょう。赤坂で飲み食いする政治家、ツケ回しなんていうのは、それこそ60年くらい前の「宴会政治」の時代の政治家ですよ。
 既得権の打破とか、改革とか言いながら、維新がやっていることは、きわめて古い体質の政治そのものなんです。これが、維新に4年半いた私の率直な感想です。

 維新は今になって選挙公約に「企業・団体献金の禁止」を入れています。これまでは、パーティ券の購入など、事実上の企業・団体献金を受けてきました。個人の購入であっても、実際には企業として処理している場合もあります。今後そういうことはしないのか、まずはそこの説明をしてもらいたいですね。

 ましてや維新は関西で知事も市長も持っている。知事や市長は大統領制と同じで絶大な権限を持っています。影響力が大きい。やむなく付き合わざるを得ない企業も多い。関西の有権者は、もっと維新に対して厳しい目を向けるべきだと思います。「言ってることと、やってることが違っていないか」と。

公明党は〝大人の対応〟に徹してくれた

――公明党が連立政権に加わって、この10月で25年になりました。鈴木さんは公明党が日本の政治に果たした役割をどう見ておられますか?

鈴木 公明党が連立に参加したのは1999年10月、小渕政権のときでした。当時は大銀行すらデフォルト(債務不履行)を起こしかねなかった金融危機で、日本発の世界恐慌が起きることが真剣に危惧されていました。私は当時、自民党で官房副長官でした。
 どうしても政治を安定させなければ、大変なことになる。それで、小渕政権は公明党にお願いをしました。公明党が連立に加わってくれたことで、日本は危機を脱しました。

 2001年7月の参議院選挙のとき、私は総務局長、今の選挙対策委員長を拝命していました。自民党と公明党とで選挙をやる、その責任者だったわけです。
 その後、自民党を離れて外から25年の歴史を振り返るとき、まずやはり公明党の決断のおかげで日本は危機を免れたという率直な感謝があります。

 同時に、公明党は一貫して〝大人の対応〟をし続けてくれたなと思います。おかげで、これだけ長く自公の連立が保たれてきたと思っているんです。私は自公連立へのレールを敷いた1人として、公明党に申し訳ないという思いでいます。
 この点、私は自民党の若い議員の皆さんにも、そういう歴史の事実をよくわかってもらいたい。公明党がいかに我慢をして連立を守ってくれたか。ここをわからないと、自民党は大変なことになるなと心配しております。

 25年といえば4分の1世紀です。慣れてしまって自公連立が当たり前だと思っている人もいる。あるいは、とくに選挙の強い人は、「自分は公明党の応援がなくても選挙勝てるんだ」と思っているかもしれない。でも、それは自分1人の話です。民主主義はその考えではダメなんです。仲間を助けよう。友党である公明党がまず第一だ。自民党にこういう心構えがなければですね、本当の幅広い合意形成、国民に根差した政治はできません。

(2024年10月10日/参議院議員会館で収録)

※インタビューの全編を読みたい方はこちら⇒「鈴木宗男氏インタビュー全編」

 
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まつだ・あきら●ライター。都内の編集プロダクションに勤務。2015年から、「WEB第三文明」で政治関係のコラムを不定期に執筆。著書に、『日本の政治、次への課題』(第三文明社)がある。