なぜ維新の「不祥事」は続くのか――中学生への性的暴行で逮捕者

ライター
松田 明

吉村知事の〝部下〟だった斎藤知事

「大阪以外で初めて誕生した維新系知事」だった斎藤元彦・兵庫県知事。元総務官僚だった斎藤知事は、総務省時代の2018年から大阪府に出向し、府の財務部財政課長をつとめていた。
 吉村大阪府知事とは、いわば〝上司と部下〟の関係。2021年7月の兵庫県知事選挙で、日本維新の会は自民党と共に斎藤氏を推薦し、選挙戦では大阪市長であった松井一郎氏(当時の日本維新の会代表)、大阪府知事の吉村洋文副代表らが兵庫県下に乗り込んで熱烈に支援した。
 だが、その斎藤知事は今や、無所属議員まで含めた県議会の全会派の全議員から「辞職」を求められている。
 斎藤知事が内部告発した元局長を調査結果も待たずに処分した問題で百条委員会が設置されても、日本維新の会の馬場代表は静観の姿勢を崩さなかった。
 しかし、8月の箕面市長選挙で維新所属の現職が惨敗すると、8月31日になって藤田文武幹事長が兵庫維新の会幹部や県議団と協議に入った。世論の読み間違いというよりも、維新に蔓延する〝驕り〟〝ガバナンスの欠如〟のあらわれであろう。

維新はかねて国会議員や地方議員の不祥事が相次ぎ、党内ガバナンス(統治)が効いていないとの指摘を受けてきた。(『日本経済新聞』9月2日

維新県議「元局長をつるし上げてやる」

 じつは内部告発した元局長に対しては、斎藤知事だけでなく、知事を支える維新の県議らによる強硬な糾弾もあったという。ジャーナリストの今西憲之氏は「アエラ・ドット」に生々しい証言を綴っている。

複数の県議や県職員によれば、同じころ、維新の県議から、
「元局長をつるし上げてやる」
といった発言を聞いたという証言もあった。(「アエラ・ドット」8月21日

 知事の命令で片山副知事らが当該元局長から押収した公用パソコンには、一部私的な情報も含まれていた。百条委員会の初会合で、維新の県議から「資料はすべて開示する」という話が出ており、7月初め、元局長は弁護士を通し、告発内容と無関係な内容については百条委員会で公開しないよう申し入れていたという。
 7月8日午前、百条委員会の臨時理事会でこの申し入れについて検討されたが、維新の県議は「プライベートな問題だから公開しないでとは、あまりに都合のいい身勝手な論理ではないか」「パソコンの所有者は兵庫県、データも兵庫県のものだ」との強硬主張を変えなかった。
 元局長の死亡が報道されたのは同日夜。前日に命を絶っていた。元局長と連絡を取っていた県幹部は、以下のように語っている。

「彼は『百条委員会がかなり強硬だが、すべてのデータを出すのはこらえてほしいと旧知の県議らにこっそりお願いした』と言っていた。県民局長だったのですから、情報網も広い。8日に百条委員会の臨時会が開かれることも把握しており、データを出せという結論になることを悲観していた。もう少し待ってくれれば非公開とわかったのに」(同)

吉村氏の辞職で繰り上げ当選

 その維新で、新たに衝撃的な事件が起きた。日本維新の会で衆議院議員を2期つとめた椎木保容疑者が、9月8日、中1女子生徒に性的暴行を加えたとして、不同意性交の疑いで逮捕されたのだ。
 椎木容疑者は2017年の衆議院選挙では「大阪2区」から出馬したが落選。その後は、千葉5区支部長に就任していた。
 椎木容疑者は8月20日夕方、東京・歌舞伎町で「2万円あげるから遊ぼう」と女子生徒を誘い、カラオケ店内でわいせつな行為をした疑い。

椎木容疑者はこの日、付近の路上で女子生徒に声を掛けて2人で店に入ったという。店長が110番通報して発覚した。(『産経新聞』9月9日

 椎木容疑者は、証券会社社員、教員、市役所職員などを経て、2012年12月の衆議院選挙で日本維新の会から初当選。2014年の選挙では落選していたが、2015年10月、吉村洋文氏が大阪市長選に立候補するため衆議院議員を辞職したことで繰り上げ当選していた。
 維新では、大阪維新の会の大阪府議団代表をつとめていた笹川理氏が、同僚の女性議員にパワハラやストーカー行為をしていたとして2023年6月に除名処分になったばかり。その後、被害を受けた女性議員からは新たに「性的暴行」で大阪府警に被害届が出されている。

元・大阪府議会議長も除名処分

 日本維新の会と、その母体である大阪維新の会では、あまりにも不祥事が多く、党内のいざこざも増えている。あきれるような不祥事の連鎖については、これまでもたびたび報じてきたが、その後、本年4月下旬からの4カ月あまりのあいだに報道された主な事案だけでも次の通りである。

4月19日
 日本維新の会所属の足立康史・衆議院議員のSNS投稿をめぐる内紛。東京維新の会代表の柳ヶ瀬裕文参院議員から日本維新の会の馬場代表宛に「足立康史議員の発言に対し厳格な対処を求める上申書」が提出された。

4月23日
 足立康史・衆院議員がユーチューバー女性の名誉を傷つけたとして、東京地裁が足立氏に慰謝料など33万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

5月20日
 日本維新の会に所属し、次期衆院選で福岡11区から出馬予定の村上智信氏が、金を払って人を雇い怪文書を配布させたとして党本部から厳重注意を受けたことが報道される。(「週刊現代」5月20日

5月22日
 早坂敦・衆院議員の街宣車が、仙台市若林区の交差点付近に停車。運行中の市バスが15分にわたって立ち往生した。道路交通法では交差点の5メートル以内での駐停車を禁じているが、維新の街宣車はそれを守っていなかった。

5月23日
 大阪湾に迷い込んだクジラの「淀ちゃん」の死骸処理費が市の見積もりの倍以上になっていた問題で、市民団体が横山大阪市長(大阪維新の会幹事長)に賠償を求め提訴。市は3774万円と試算していたが、市が随意契約した業者には8019万円が支払われていた。
 訴状では、市の経営改革課長が局長らに積算額の引き上げをメールで求め、「積算根拠は後から検討する方法」を進言したと指摘。「根拠なく総額を合意」したとして、契約は違法で無効としている。
 6月になって市契約管財局は契約に関する調査結果を公表し、業者の見積書の一部がないまま予定価格を決定するなど6つの問題行為を認定した。

同じく5月23日
 埼玉県・上尾市議会の津田ひとみ議員が、飲酒後に自転車で単独事故を起こしたとして日本維新の会の党籍を返上した。津田議員は地域の親睦会で飲酒し、酩酊状態で帰宅しようとして転倒したが、本人はその前からの記憶がないほど酔っていたという。

5月28日
 公選法違反の疑いで、警視庁が日本維新の会の千田昌寛・江東区議を書類送検していたことが報道される。千田区議は昨年4月の江東区議選の選挙運動期間中に、SNSで投票を呼びかける有料広告を掲載していた。(『東京新聞』5月28日

6月1日
 日本維新の会は、足立康史衆院議員に6か月の党員資格停止処分を決定した。「党内で正当な手続きをとることなく、東京維新の会や党本部に対する批判をSNS上で繰り返した」というもの。

6月4日
 大阪・関西万博に小中高生らを無料招待する大阪府の事業をめぐり、維新府政の強権的な手法に抗議するとして、大阪・交野市が市内の万博ポスターを撤去した。

6月7日
 大阪維新の会の吉村洋文代表は、所属していた土井達也府議を6日付で除名処分にしたことを明らかにした。土井達也府議は2020年から大阪府議会の 第113代 議長をつとめた人物。
 阪南市内の産業用地造成事業をめぐり、維新公認で当選した水野謙二市長の情報公開のあり方などを問題視して、5月31日に離党届を出したと会見していた。土井府議は10月18日閉会の府議会定例会後に辞職するという。

6月11日
 日本維新の会の県組織「広島維新の会」は、党本部が承認した会派名と異なる名称で広島市議会に届け出たとして、広島維新の会幹事長の大田智弘市議を役職停止3カ月にした。
 大田市議は、自民の2市議が合流して計5人で超党派の会派を結成した際、党本部に「広島維新の会・至誠会」で承認願を提出し了承された。しかし、6月1日に市議会事務局へ届けた際、「未来の風 自民・広島維新の会」とした。

大田市議は「『広島維新の会』を政党名と思い込み、自民の名も並べないといけないと考えて一存でやった。申し訳ない」と述べ、空本代表は「要職にある者が認識不足だ」と話した。(『毎日新聞』6月11日

 
6月16日
 仙台市若林区で「宮城維新の会」の軽ワゴン車が横転。配電設備を壊して一時300戸が停電した。

6月23日
 福岡県警久留米署は、「福岡維新の会」に所属する大木町議・馬場高志容疑者を道交法違反(酒気帯び運転)容疑で現行犯逮捕した。福岡維新の会は同日、逮捕を受け、馬場容疑者を除名処分にすることを決めた。

6月28日
 大阪府枚方市議会は、伏見隆市長(大阪維新の会所属)に対する問責決議案を賛成多数で可決した。議会が見送ったはずの教育長人事案が再提出されるなど、市長が議会を軽視しているというもの。大阪維新の会以外の主要4会派が決議案を提出した。
 伏見市長は3選を果たした昨年10月の市長選後に「祝勝会」の横断幕が掲げられた集会に出席。この際も公職選挙法に抵触するとして問責決議案が可決されている。
 同市では与党である維新市議団と市長のあいだも一枚岩ではなく、10人いる維新市議団は問責決議案に「反対」することなく退席した。

逮捕されても議員はやめない

 維新の不祥事はまだまだ続く。

7月3日
 福岡県大木町議会は臨時会を開き、酒気帯び運転容疑で現行犯逮捕された「福岡維新の会」馬場高志議員に対する辞職勧告決議案を全会一致で可決した。

7月10日
 北名古屋市の小村貴司市議が、所属していた愛知維新の会からの除名処分によって精神的な苦痛を受けたとして、同会を相手取り慰謝料など350万円の損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁に起こした。

7月12日
 大阪府の四條畷市議会は、大阪維新の会所属の坂本勇基と渡辺裕(なわて葵風会)の両市議に対する懲罰特別委員会を設置した。理由は市職員らへの高圧的と取れる言動があったなどというもの。
 10日に開かれた公共施設の再編に関する委員会審議で、坂本市議は自身が求めた概算資料が市側から提出されなかったことに対し、市の職員に「民間なら出さなあかん」「出せへんてありえへん」などと大声を出し、たしなめた委員長にも怒声を上げた。
 8月2日に開催された懲罰特別委員会で坂本市議は、「不快に感じられた方におわびする」と陳謝した。

7月18日
 昨年10月に日本維新の会を除名された呉松福一・射水市議が、「富山維新の会」を相手取り、処分無効と300万円の損害賠償を求める訴訟を富山地裁に起こすことが報じられた。党規則では除名処分の際は対象者への聴取を実施すると定めているが、「富山維新の会」は呉松氏への聴取をおこなわないまま処分したという。

8月16日
 兵庫県の斎藤知事への告発問題に関し、死亡した元局長への内部調査をおこなった人事課を所管する兵庫県総務部長が体調不良を理由に交代した。この告発問題で 県幹部が業務を離れるのは3人目。

8月26日
 大阪府守口市議会は、市の「社会教育関係団体補助金」に関し調査特別委員会(百条委員会)の設置を決めた。

守口市は、文化や芸術の発展のため、関係する団体に「社会教育関係団体補助金」を支給していて、今年度は補助の対象を拡大し、予算を50万円から100万円に増額しました。
新たな補助の対象には、大阪維新の会の府議会議員が会長を務める団体も含まれています。
補助金の増額について市議会は、▽事前に議会への説明がなく、▽予算編成の最終段階で唐突に増額された形跡があるとして特別委員会を設置して調査を進めてきました。(「NHK関西NEWSWEB」9月4日

 
9月2日
 維新の国会議員が問題発言。日本維新の会の掘井健智・衆院議員(比例近畿)が、元西播磨県民局長(7月に死去)の内部告発文書について、「自民党とつくった怪文書」だと発言し、亡くなった元県民局長のパソコン内にあったプライバシー情報まで漏らしていたことが報じられた。
 日本維新の会の藤田文武幹事長は9月11日の記者会見で、堀井議員を厳重注意したと発表した。

9月2日
 酒気帯び運転の疑いで逮捕され、略式命令を受けた大木町の元「福岡維新の会」馬場高志・町議会議員に対する2度目の辞職勧告決議案が町議会で可決。
 これに対し、町議はあくまで議員を続ける意向を示した。

9月8日
 元衆議院議員・椎木保容疑者が、中1女子生徒に性的暴行を加えたとして、不同意性交の疑いで逮捕される。

「大きなものをやりとげたことはない」

 ここまでが、4月下旬からのわずか4カ月余りの期間にメディアで報じられた主な不祥事などの報道である。尋常な数ではない。
 党内での内紛による足の引っ張り合い。公職選挙法違反。道路交通法違反。元府議会議長への除名。行政職員への暴言。風説の流布やプライバシーの暴露。あげくの果ては中1少女への性的暴行である。
 党のガバナンスうんぬんという以前に、およそ公職に就く資質のない多くの人間が、議員バッジを付けたり首長の座に就いていることがそもそもの問題ではないのか。
 とりわけ現在の維新の国会議員のありさまについては、〝生みの親〟である橋下徹氏も批判を繰り広げている。

「今の維新の国会議員の中心メンバーというのはほとんどが行政権を持って政策を実行したという経験がないまま国会議員になり、そこから10年間何をやっていたかというと、永田町の中で『飲み食い政治のなれの果て』なんです」と厳しく指摘した。(「東スポWEB」6月22日

 その上で「じゃあ維新の国会議員が何をやったのかというと、細かな国会の駆け引きはあったにせよ、何か大きなものをやりとげたことはない」と批判した。(同)

 公人になる資質を大きく欠いた有象無象たちが、言葉巧みに有権者を幻惑し、「維新」のブランド人気だけで当選して権力の座に就く。
 本来、政治家になることは社会のために有益な仕事をする「手段」のはずだが、彼らの多くは自分がバッジを付けることが「目的」になっている。だから、耳を疑うような不祥事が次から次へと起き続ける。
「身を切る改革」どころか、そんな人間たちを血税で養っているのが維新という政党ではないか。

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まつだ・あきら●ライター。都内の編集プロダクションに勤務。2015年から、「WEB第三文明」で政治関係のコラムを不定期に執筆。著書に、『日本の政治、次への課題』(第三文明社)がある。