立憲民主党はまず法令を守れ――他党に厳しく自分にはゆるゆる

ライター
松田 明

110枚の違法立て看板を出した犯人

 茨城県守谷市の発信したX(旧ツイッター)が思わぬ反響を呼んだ。
 同市内の街路樹に違法に設置された立て看板。市の職員と思われる男性が、工具を使って街路樹に縛り付けられたワイヤーを切断し、違法看板を撤去している写真と共に、こう投稿されていた。

本日、都市整備部ではふれあい道路などの幹線道路に設置されている違法な立看板を、市内全域で一斉撤去しました。
道路上の街路樹や電柱などに無許可で立て看板を設置することは違法ですので、
絶対におやめください!!(6月5日の同市公式アカウントのポスト

 許可を得ずに電柱や街路樹などの公共物に看板やポスターが掲示されている光景を見た人もいるだろう。屋外広告物条例などに違反する、明らかな違法行為だ。
 この守谷市のポストに注目が集まったのは、街路樹に縛り付けたワイヤーを切って、職員が取り外そうとしている看板の文字だった。写真は、立て看板の表が見えないようにとの配慮で、あえて裏側から撮影されていた。
 ところがよく見ると、看板の一部に「立憲民主党幹事長」と読める文字が確認できたのである。
 そう。この〝違法看板〟を設置したのは、立憲民主党だった。6月6日に岡田幹事長が同市内で街頭演説することを告知する看板を、立憲民主党は守谷市内だけで110枚、違法に設置。しかも市から再三にわたって撤去を求められながら無視して放置していたというのだ。

 市に対し、街路樹などに岡田氏の街頭演説を告知する看板が無断設置される事例が相次いでいると報告されたという。市は5月下旬以降、立民側に再三撤去を求めたが、設定した期日を過ぎても放置されたままだった。このため、市都市整備部は5班10人態勢で市内全域で看板の撤去に踏み切った。5日に103枚、6日に7枚を回収したという。
 隣接する取手市でも同様の看板が確認されたという。(『産経新聞』6月6日

党首みずからが公選法違反

 法令を守れないといえば、4月の衆議院補選でも、立憲民主党の泉代表の「遊説」が問題になったばかり。
 公職選挙法では「車上の選挙運動の禁止」として、以下のように定められている。

第百四十一条の三 何人も、第百四十一条の規定により選挙運動のために使用される自動車の上においては、選挙運動をすることができない。ただし、停止した自動車の上において選挙運動のための演説をすること及び第百四十条の二第一項ただし書の規定により自動車の上において選挙運動のための連呼行為をすることは、この限りでない。

 自動車を使った選挙運動は禁止されている。ただし例外として、「停止した自動車の上において選挙運動のための演説をすること」と、「選挙運動のための連呼行為をすること」だけは認められている。
 連呼行為というのは、文字どおり同じことを繰り返して言うこと。通常は、候補者の名前や政党名などを連呼することを指す。
 ところが、立憲民主党の候補者であった山田勝彦氏(現・衆議院議員)が嬉々としてXに投稿していた動画は、泉健太代表が疾走する車の中でマイクを握り、車載の拡声器を使って山田候補への支援を延々と訴えかける光景だった。
 このあきれた投稿には700を超える引用ポストが付き、党首自ら公職選挙法を堂々と破るのかといった批判が起きた。
 選挙運動で、やっていいことと、いけないことを、党首自身が理解していない。もしくは、知っていても平然と違法行為をおこなう。
 過去には、立憲民主党の尾辻かな子衆院議員が選挙カーをコンビニの出入口前の障がい者専用スペースに駐車している様子がSNSで拡散し(2021年10月15日)、尾辻議員は謝罪に追い込まれた。

「事前運動」そのもの街頭演説

 6月6日の参議院総務委員会で、浜田聡議員(NHK党)が取り上げたのは、ANNの報道番組で流れた〝あるシーン〟についてだった。
 東京都知事選挙に立候補を表明している立憲民主党の蓮舫参議院議員と枝野幸男衆議院議員が、6月2日、東京都内の有楽町駅前で街頭演説をおこなった場面だった。
 蓮舫議員は、

七夕に予定されている東京都知事選挙に蓮舫は挑戦します。皆さんのご支援、どうかよろしくお願いします。

と声を張り上げた。
 そのあと、応援弁士として立った枝野議員もまた、

みんなで蓮舫さんを勝たせましょう。

と呼びかけた。
 公職選挙法でいう「選挙運動」とは、特定の選挙について特定の候補者の当選を目的として、当選を得るため、得させるために、直接または間接的に必要かつ有利な行為とされている。
 そして、公職選挙法で選挙運動が認められているのは、公示日(告示日)に立候補の届け出をしてから投票日の前日までに限ってである。
 浜田議員は、この蓮舫議員と枝野議員の発言は「事前運動」に該当するのではないかという批判が多数寄せられていることを紹介。「事前運動」に該当する3要件として、「選挙の特定」「候補者の特定」「投票依頼」を挙げた。
 蓮舫氏は立候補の届け出もしていない段階で、みずから今年の東京都知事選挙に挑戦することを述べて自身への支援を求めた。また、枝野氏も「蓮舫さんを勝たせましょう」と、都知事選での当選を呼びかけているのである。
 浜田議員は、この6月2日の街頭演説は、「事前運動」の3要素がそろっているのではないかと疑義を呈し、東京都など所管当局に調査を要請した。
 なお、蓮舫議員といえば5月27日に都知事選への出馬を表明し、このように早速フライング気味の事実上の選挙活動を展開しているにもかかわらず、6月20日の告示まで参議院議員を続けて「自動失職」となる選択をした。
 その結果、6月1日時点で在職している議員を対象に支給される夏のボーナス約310万円を懐にすることになる。

蓮舫氏が当選すれば共産党都政?

 さて、この蓮舫議員の出馬表明に、真っ先に飛びついたのが日本共産党である。小池晃書記局長は出馬表明があった5月27日、間髪を入れずに、

最強、最良の候補者を得ることができた。「反自民」「非小池(百合子知事による)都政」。旗印は明確だ。

と発言。これに応えるように、5月29日には蓮舫氏も多くの報道陣に公開するかたちで東京都議会の日本共産党控室を訪問。

蓮舫氏は「立候補を決めた。ぜひ一緒に、住みやすい、暮らしやすい、明るいあたたかな東京をつくらせていただきたい」とあいさつ。大山氏から花束を受け取ると、都議らから拍手と歓声が上がりました。(『しんぶん赤旗』5月30日)

 日本共産党との蜜月ぶりを両者ともに隠そうともせず強くアピールした。
 あきれたのは、まだ蓮舫氏が選挙公約すら発表していない6月3日の時点で、共産党の東京都委員会が「蓮舫参議院議員 都政に挑戦!」という両面刷りのビラを用意したことだ(日本共産党 東京都委員会ホームページ)。
 ビラの表面には小さくしてはいるが「七夕の選択 7/7 都知事選」とある。あきらかに都知事選挙の当選を呼びかける配布物だ。
 しかも、本人が何ら公約を発表していない時点で、「都政を変えればこんなにできる」と、「神宮外苑、晴海、築地の再開発中止」「羽田新飛行ルート中止」「英語スピーキングテスト中止」などといった日本共産党の主張が列挙されている。
 蓮舫氏が当選すれば、もはや都議会与党になって、共産党都政を実現できるとでも考えているのだろう。
 念のために言っておくが、蓮舫氏は自分が当選すれば日本共産党が主張するこれらを実現するなどと、ひとことも語っていない。
 語ってもいないことを、あたかも実現できるかのように流布する、日本共産党らしい宣伝ともいえるし、一蓮托生、もはや「立憲共産党」と言われようがおかまいなしの、猛烈な抱きつき作戦ともいえる。
 日本共産党は、党の改革を求めた古参幹部を次々と除名。イメージチェンジで田村智子委員長に顔を変えたものの、やはり改革を求めた神奈川県議を満座の席で吊るし上げるなど、党内から「パワハラ」を糾弾する声が噴出し、党勢が一段と低迷している。

幹部が範を示さない政党

 国会では政治資金規正法の改正案が衆議院を通過した。6日におこなわれた各党の討論で、公明党の中川康洋議員は、立憲民主党が「政治資金パーティーの全面禁止」を訴えながら、その渦中で岡田幹事長や大串選対委員長らが自身の政治資金パーティーをギリギリまで準備していた事実を批判。
 しかも、それに対して党首である泉代表が一方では「問題ない」としながら、他方で「ひっくりかえってのけぞった」と発言していたという報道を紹介。

公明党は、こんな幹部みずからが範を示さない、また党内不一致で、かつ党のガバナンスが機能していない政党が提出した法案を信用することができないし、そのような政党に、この国の政治を、また日本の未来を任せるわけにはまいりません!(衆院本会議での質問に立つ公明党・中川議員

と訴えた。
 SNS上などでは、支持政党や信条を越えてこの中川氏の演説に喝采と共感の声が集まった。
 自民党の違法行為を追及しながら、党内での意見集約すらできず、執行部のガバナンスも利かない。さらに基本中の基本の公職選挙法すら守ろうとしない立憲民主党。政権交代を訴えながら日本共産党にからめとられていく立憲民主党。
 そんな政党に日本の政治を託すことなど到底できない。

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まつだ・あきら●ライター。都内の編集プロダクションに勤務。2015年から、「WEB第三文明」で政治関係のコラムを不定期に執筆。著書に、『日本の政治、次への課題』(第三文明社)がある。