「池田大作」を知るための書籍・20タイトル(上) まずは会長自身の著作から

ライター
本房 歩

 2023年11月15日、池田大作・創価学会インタナショナル(SGI)会長が逝去された。
 池田会長は日蓮仏法を世界192ヵ国・地域に流布したのみならず、仏法を普遍的な人間主義の基盤へと高め、宗教や文化、政治体制を越えて、平和と教育と人道の連帯を広げた。
 各国指導者や学識者らからの異例の弔意は、その思想と功績の巨大さをあらためて証明している。
 一方で、巨大さゆえに池田会長の人物と思想、その軌跡の全容を把握することは容易ではない。会長についてこれまで世に出てきた書物も玉石混交である。より深く会長の思想の本質に迫りたいと思う人もいれば、まず生涯の概要を知りたいという人もいるだろう。
 そこで「池田大作」を理解し語るうえで必読と思われるテキストをピックアップしてみた。
 なお書評子の個人的な選書であり、原則として現時点で新刊が発売中のものとした。この他にも挙げるべき書籍は多々あると思うがご了承いただきたい。
 この(上)で取り上げるのは、池田会長自身の著作。

『人間革命』(全12巻)

 1965年1月から「聖教新聞」に連載が開始された、戸田城聖・第二代会長を主人公とする長編小説。獄死した初代会長・牧口常三郎の遺志を胸に、焦土となった戦後の日本に宗教革命の民衆運動を広げていく。
 多くの宗教運動が勃興した戦後の日本で、なぜ創価学会だけが大きく発展したのか。名もない貧しい庶民を抱き抱えて励ましながら、確かな未来への遠望を描き、山本伸一(小説中での池田会長の名)をはじめとする後継の青年たちを薫陶していく戸田城聖の赤裸々な人間像が綴られている。
 戸田を主人公としながらも、第10巻以降は山本伸一が戸田に代わって実質的な指揮をとっていく。戸田城聖の出獄から書き起こされ、山本伸一の第三代会長就任まで、創価学会における「師弟不二」とはいかなるものかが、史実を通して明らかになっていく。1993年2月11日に完結した。
 なお本作の新聞連載回数は1509回。連載途中の1973年と76年には橋本忍・脚本、升田利雄・監督で、当時の日本映画界を代表する出演者たちのもと正編と続編として映画化された。

『新・人間革命』(全30巻)

『人間革命』の完結から半年後の1993年8月6日に執筆が開始された。第三代会長となった山本伸一を主人公とする長編小説。伸一が初の海外指導に出発する1960年10月の場面からはじまり、2001年11月の創立記念本部幹部会までが描かれる。
 続編ともいえる『新・人間革命』を綴った理由について〈先生亡き後の広宣流布の世界への広がりこそが、恩師の本当の偉大さの証明になると考えたからである。〉(第1巻「はじめに」)と記している。
『人間革命』と『新・人間革命』について、創価学会公式サイトでは〈これらは、池田先生が「法悟空」のペンネームでつづる創価学会の「精神の正史」です。戸田先生と池田先生の姿を通し師弟の生き方が記された、学会員の「信心の教科書」ともいえます。〉としている。

『法華経の智慧 二十一世紀の宗教を語る』(普及版/上中下)

 法華経について、池田会長が鼎談形式で講義解説したもの。『大白蓮華』1995年2月号から連載開始され単行本化された。1990年代に入って創価学会は日蓮正宗から訣別した。サブタイトルが示すように「21世紀に求められる宗教」「人間のための宗教」のあり方を、池田会長が法華経の精神を踏まえながら論じたものになっている。
 わかりやすく綴られた法華経の講義書でありつつ、池田会長の宗教観、人間観、平和観がつぶさに表れている書物であり、池田会長を深く理解する上では外せない。

『幸福への指針 池田大作先生の指導選集[上]』


 全150巻として刊行された『池田大作全集』を踏まえたうえで、世界広宣流布の新時代に呼応した「指導選集」として編纂されたもの。
 池田会長の半世紀以上におよぶ言論には、当然それぞれの時代背景があり、とくに日蓮正宗と訣別する以前はさまざまな制約も多かった。そこで会長の膨大な言論から、今後の世界広宣流布の同時進行の時代に各国のメンバーが指針とすべきものを抜粋した。いわば、後世に残すべき会長の指針として公式に確定したものだといえる。日本語だけでなく主要な言語に翻訳されている。

第1章 真の幸福とは?/第2章 幸福境涯を築く/第3章 生命変革の実践/第4章 心こそ大切/第5章 苦悩を突き抜け歓喜へ/第6章 桜梅桃李/第7章 自他共に幸福に/第8章 病と向き合う/第9章 黄金の総仕上げを/第10章 生も歓喜、死も歓喜/第11章 人間革命とは何か/第12章 宿命を使命に

『人間革命の実践 池田大作先生の指導選集[中]』


第13章 一家和楽の信心/第14章 良き市民たれ/第15章 難を乗り越える信心/第16章 仏法は勝負/第17章 一日一日を大切に/第18章 仏法は対話の宗教/第19章 御書根本の大道/第20章 青年に贈る/第21章 広宣流布に生きる/第22章 地涌の使命と誓願/第23章 一人の人を大切に
 
 
 
 

『広宣流布と世界平和 池田大作先生の指導選集[下]』


第24章 広宣流布のための組織/第25章 異体同心の団結/第26章 皆を幸福に導くリーダー/第27章 師弟こそ創価の魂/第28章 創価三代の師弟/第29章 人間のための宗教/第30章 未来部は広宣流布の命/第31章 平和・文化・教育の大道/結び
 
 
 
 

『21世紀文明と大乗仏教 海外諸大学での講演選集』
『「人間主義」の限りなき地平 海外諸大学での講演選集Ⅱ』


 池田会長は1970年代から90年代にかけて、世界の名門大学・学術機関から招かれ30回を超す講演をおこなってきた。異なる宗教土壌・政治体制の国の最高峰の知性や学生たちを前に、会長は大乗仏教なかんずく日蓮仏法の智慧に立脚し、人類の諸課題について論じている。
 とくに、それぞれの国の文学や思想哲学を巧みに引用しながら、仏法の生命観を相手自身の文化の基盤と相通じ合うものとして伝えていく姿は、「対話の名手」と称えられた池田会長の真骨頂ともいえる。
 しかも、会長は一方的に仏法を教示することなく、むしろそれぞれの国の文化の深層に流れていた英知を汲み出し、その英知をもって新たな世紀の人類の諸課題に立ち向かっていけるよう促していく。
 21世紀に入って世界各国の大学や学術機関で公式に「池田思想研究」が進んでいるが、会長の大学講演は普遍的な知のメッセージのエッセンスとなっている。

『21世紀文明と大乗仏教 海外諸大学での講演選集』(第三文明社刊)
『「人間主義」の限りなき地平 海外諸大学での講演選集Ⅱ』(第三文明社刊)

『完本 若き日の読書』


 第三文明社から1978年に発刊された『若き日の読書』と1993年刊の『続 若き日の読書』を収録し、さらに著者の「読書ノート」(『第三文明』1964年3月~8月に連載されたものと、未発表のもの)、それらの一部のカラーグラビアも収録されている。
 この「読書ノート」は、会長が18歳だった1946年から雑記帳などに記述していたもので、まだ信仰の道に入っていない時期の読書の抜き書きである。終戦直後、きのうまでの価値観が一転した社会のなかで、10代の会長が歩んだ精神遍歴の一端を知る貴重な記録だ。
 収録された正編・続編の『若き日の読書』は、累計で31万部のロングセラーとなっている。

『完本 若き日の読書』(第三文明社刊)
「WEB第三文明」 書評『完本 若き日の読書』――書を読め、書に読まれるな!

『青年抄』


 2014年に徳間書店から刊行された。会長のさまざまな著作から、青年に贈られた珠玉の言葉を抜粋し、加筆修正したもの。「勉学」「友情」「仕事」「恋愛」「いじめ」「平和」など多岐にわたって、箴言や力強いメッセージが収録されている。
 広く一般の青年読者に宛てられた書籍で、宗教的な話は含まれていない。悩み多き青年時代に寄り添い、1人の人生の先達として平易な言葉で率直に自分の思いを語り、励ましを贈る一書。今も多くの人に読み継がれ数十版を重ねているロングセラー。

シリーズ:
「池田大作」を知るための書籍・20タイトル(上) まずは会長自身の著作から
「池田大作」を知るための書籍・20タイトル(下) 対談集・評伝・そのほか

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