野党それぞれの「お家事情」――「連合政権構想」も立ち消え

ライター
松田 明

大阪市民1人19000円の負担

 岸田政権の内閣支持率が一向に上がらない。3週間足らずで3人の政務三役の辞任ドミノなど、もはや自民党内からも厳しい声が上がっている。半年前はサミットで意気揚々だったのに、本当に政治の世界は「一寸先は闇」である。
 一方で、野党のほうも安閑とはしていられない状況にある。
 春の統一地方選で躍進し、夏ごろまでは支持率でも立憲民主党を抜いていた日本維新の会。しかしこの半年、国政の執行部から地方議員に至るまで、ほとんど日替わり週替わりの頻度で不祥事が噴出してきた。
 さらにここにきて大阪万博の建設費増額が〝維新離れ〟を加速させている。10月の奈良県橿原市長選に続き、11月に入って京都府八幡市長選でも公認候補が敗北。神奈川県海老名市長選でも推薦候補が敗れた。

 勢いにブレーキがかかった最大の要因とみられているのが、維新が誘致を主導した万博開催だ。会場建設費が当初の想定の2倍近くに膨らみ、建設工事の遅れも深刻化している。巨額の負担は、「身を切る改革」を看板としてきた維新には、イメージダウンにつながっている。(「読売新聞オンライン」11月14日

 万博の建設費が1850億円から最大2350億円へ500億円の上振れをするとの見通しが示されたが、維新が知事と市長を務める大阪府と大阪市は11月1日に追加負担の受け入れを決めた。

14日午後、大阪市議会の万博推進特別委員会が行われ、大阪・関西万博の会場建設費について、大阪市民一人当たり約1万9000円の負担となることが分かりました。(「関西テレビNEWS」11月14日

 11月23日(勤労感謝の日)に予定されている阪神タイガースとオリックスバファローズの優勝パレードに、大阪府と大阪市が職員にボランティア参加を要請したことにも労組から非難の声が上がっている。

 ボランティア依頼文書には、「2025年大阪・関西万博500日前!」とも銘打たれている。万博のPRとプロ野球チームの優勝の関係性は不明で、かねて「スポーツの政治利用」という批判も挙がってきた。(『東京新聞』11月9日

 徹底した無駄削減をスローガンにしながら、維新が誘致を実績に挙げてきた万博では国に下駄を預けて逃げているように国民には映る。プロ野球チームの優勝を万博PRに結びつけ、「勤労感謝の日」に職員を無償で駆り出そうという感覚も、一連の不祥事体質やハラスメント体質と重なって見える。

党内から公然と辞任要求の声

 支持率で維新を再逆転したはずの立憲民主党では、次期衆議院選挙をにらんで党内の対立が表面化している。
 11月4日、泉健太代表は都内での講演で、「次は政権交代と言いたいが、党を再生するには手順が必要だ」とし、5年かけて政権交代をめざすと語った。
 これに対して猛反発したのが、かねてより日本共産党との共闘を主張し、露骨な反執行部の動きを見せている小沢一郎氏。
 7日には国会内で記者団に対し、

「野党第一党が政権を目指さないと言ったら国民はどう思うか。支持するやつなんかいない」と訴え、「(代表を)辞めたほうがいいのではないか。分からない感覚だ」とこき下ろした。(『産経新聞』11月7日

 補選が終わった翌日(10月23日)に泉代表が野党各党にあいさつ回りをした際、日本共産党は狡猾にも「党首会談で次期衆院選での共闘に合意した」とアナウンスした。
 11月9日、泉代表を党本部に訪ねた連合の芳野友子会長は、

 構成組織から多くの不安の声が寄せられた。懸念を解消するという意味も含め、代表から内外に向けた明確な発信をお願いする(「時事ドットコム」11月9日

と、共産党との連携の動きにクギを刺した。泉代表も単なるあいさつ回り以上のものでなかったことを述べた。
 立憲民主党の最大の支持母体である連合は、日本共産党と連携する候補者は支援しないという方針を打ち出している。
 しかし、小沢一郎氏は連合のこの方針についても耳を貸さない姿勢で、14日に国会内で、

「気にしない。(連合の考え方に沿って)自民党に勝つなら言う通りにするが、勝てないなら知恵を出さないといけないというだけの話だ」(「時事ドットコム」11月14日

と発言した。
 前回(2021年)の衆議院選で、立憲民主党が創業者である枝野執行部の退陣にまで追い込まれる敗北を喫したのは、日本共産党との蜜月に有権者が「NO」を突き付けたからだ。小沢氏本人さえ議員生活で初めて選挙区では落選。比例重複で復活したのではなかったのか。
 党内ですら合意形成ができず、仲間割れと選挙目当ての野合を繰り返すのは、もはや民主党時代から染みついたこの人たちの根深い体質である。
 泉代表は与党との対決以上に、身内からの攻撃に頭を痛める日々が続きそうだ。

孤立を深める日本共産党

 その野党分裂の火種になり続けてきた日本共産党。国政選挙でも地方選挙でも敗北に次ぐ敗北で、「しんぶん赤旗」は廃刊の危機が叫ばれるほど部数減が続く。支持者も党員も高齢者ばかりになり、ベテラン党員からは執行部批判が相次ぐ。
 11月13、14日の両日、同党は第10回中央委員会総会を開催。これまで志位委員長が読んでいた「党大会決議案」を今回は田村智子副委員長が2時間にわたって読み上げた。
 パワハラで謝罪に追い込まれた小池晃書記局長より田村氏の序列が上がったという見方や、2000年11月から23年間も党首の座にとどまり続け批判を浴びている志位氏の後釜に田村氏が収まるのではという観測も党内でささやかれている。
 今回の「決議案」では、これまで2017年、2020年の党大会で明記された「連合政権構想」への言及を見送った。

 22年参院選で共闘が崩れたことや、野党第1党の立憲民主党に共産との連携に慎重な意見が根強いことを踏まえた判断とみられる。(「時事ドットコム」11月13日

「野党連合政権」構想の記述見送りに関しては「前回とは違う。共闘がさまざまな困難に直面しているのも事実だ」と述べるにとどめた。政権協力は追求すべき課題とした。(『千葉日報』11月14日

 立憲民主党の態度は不透明。日本維新の会や国民民主党は日本共産党との共闘を強く否定している。2020年代の世界でいまだに日本国憲法とは異質な「社会主義・共産主義の社会」を綱領に掲げ、不安と怒りを増幅させ市民社会を分断することで党勢拡大を図る日本共産党。
 党勢衰退の責任を問うて党首の公選を訴える党員は「分派活動」と認定して〝除名〟。あまりの独善性を朝日新聞や毎日新聞から諫められても、両紙にさえ「大軍拡勢力」のレッテルを貼ってヒステリックに反発するだけ。
 今や野党のなかでも孤立を深める日本共産党なのである。

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