日本維新の会 藤田幹事長
税理士で党の会計監査人
ほとんど数日おき、酷いときは同じ日に何件も重なって不祥事が発覚する日本維新の会。正直、あまりにも多過ぎてコラムを書く筆が追い付かないので困っている。
9月18日、毎日新聞が衝撃のスクープを報じた。日本維新の会の池下卓衆院議員(大阪10区)が、選挙区である地元・高槻市議だった2人を市議任期中に公設秘書として採用していたのだ。
2人は市議としての報酬と公設秘書としての給与を二重に受け取っていた。どちらも原資は税金である。
池下卓氏はもともと税理士。2011年の大阪府議会議員選挙に大阪維新の会から出馬して当選。府議を3期務め、2021年10月の衆議院選挙で立憲民主党の辻本清美氏らを破って初当選した。日本維新の会の会計監査人を務めている。
だが池下議員をめぐっては2022年1月、地元事務所を自身の父親から無償提供されながら、少なくとも2018年から20年までの3年間も政治資金収支報告書に記載しておらず、政治資金規正法違反(不記載)の疑いがあると朝日新聞や週刊文春に報じられていた。当時の朝日新聞は、こう伝えている。
維新の松井一郎代表は6日、記者団に「甘えが出た。厳重に注意する」と話した。(「朝日新聞デジタル」2022年1月6日)
ちなみに日本維新の会では23年に入っても政治資金収支報告書への不記載で何人もの議員が処分を受けている。
年間2000万円の二重報酬
今回、池下議員の公設秘書として二重報酬を受け取っていたことが発覚したのは、高槻市議だった甲斐隆志氏と市来隼氏。甲斐氏は今年4月の市議選に出馬せず今も池下氏の公設秘書を務める。市来氏は4カ月で秘書を退任し、現在は大阪府議を務めている。
毎日新聞によれば、甲斐氏の場合2022年の1年間だけで受け取った総額は約2000万円にのぼるという。
当選直後、池下氏はNHKの討論番組で、議員の文書通信交通滞在費(現・調査研究広報滞在費)が「任期1日でも100万円出る。世間の常識では考えられない」と発言して、その後の同費のあり方議論の発端になった。
その本人が党の会計監査人を務める税理士でもありながら、何年間も政治資金収支報告書への不記載を続けるとか、自身の公設秘書に年間2000万円もの二重報酬を受け取らせて届け出を忘れているとか、なかなか〝世間の常識では考えられない〟話である。
国費で給与がまかなわれる公設秘書の兼職は、04年の国会議員秘書給与法改正で原則禁止された。議員が許可すれば認められる例外規定があるが、池下氏側は同法で義務付けられた「兼職届」を衆院議長に提出していなかった。(『毎日新聞』9月18日)
党の見識そのものが問われる
池下議員は「兼職届の提出を失念していた」と、あくまで事務的ミスを強調した。だが、公設秘書の兼職は法律で原則禁止されており、例外を認める場合も届け出が義務付けられている。
シートベルト着用もバイクのヘルメットも納税も「失念していた」では許されない。たとえ罰則がなかったとしても、法律を作る立場の国会議員が、法律で義務付けられたことを「失念していた」で済む話ではない。
この一件をめぐっては、日本維新の会そのものの見識も大きく問われている。
報道が出た当初、日本維新の会の藤田文武幹事長は、
記者団に対し「兼職届を提出できていなかったことはよくないことで口頭で注意した。今回のケースは地方議員と公設秘書という原資が税金である職責の兼業で『少し違和感がある』という人がいることは受け止めなければならない。今後、党として内規などの決まりを作ることを検討したい」と述べました。(「NHK NEWSWEB」9月18日)
と特段に問題視していないという対応に終始した。
そういえば藤田幹事長自身が、わずか1週間前の9月11日に、調査研究広報滞在費からの寄付について政治資金収支報告書への不記載が報道されたばかりなのだ。
毎日新聞からの質問に党本部も「兼職は仕事の実態やパフォーマンスで個別に判断されるべきで、何ら否定されるものではない」などと文書で回答していた。
しかし、公明党の山口那津男代表など与野党から、
ルールに反することは明らかで、ルールに基づいたあるべき姿をしっかりと維新の議員には自覚していただきたい(『毎日新聞』9月19日)
など厳しい批判が続出し、SNS等でも有権者から非難が増えると一転。翌日には共同代表である吉村洋文大阪府知事と、大阪維新の会の幹事長である横山英幸大阪市長が並んで会見に応じ、
党が公表していた見解を翻し、「公設秘書が地方議員を兼ねるのはやめるべきだ」と言及した。(『毎日新聞』9月19日)
何ら否定されるものでないのなら兼職をやめる必要はない。マズいことをやったと受け止めているから慌てて火消しに回ったのだろう。
「24時間365日議員」
公費の無駄削減を訴え「身を切る改革」を標榜している維新が、二重報酬を受け取っていた実態。
議員と公設秘書の兼職は、他にも倫理上の大きな問題をはらんでいる。高槻市民から見れば、自分たちの納めた税金から報酬を受け取っている市議が、市議の立場と身分をフルに生かしながら維新の公設秘書として地元で活動していたわけだ。
池下議員は「税金の二重取り」との批判を招かないかと問われて、
それは捉え方だと思う。2人は市議の仕事も当然してはりました。市議の業務量って大阪府議や国会議員とはだいぶ差があるけれども、まさに休日を返上して秘書業も併せて一生懸命やっていただいた。(『毎日新聞』9月18日)
と呑気に答えている。
しかし、どちらも重要な仕事である市議と公設秘書の兼職については「国家公務員として公設秘書の仕事に専念すべきだ。兼職なら市議の仕事も片手間になるのではないか。兼職できるという認識自体が信じられない」(岩井奉信・日本大学名誉教授)と厳しい批判の声が上がっている。
そもそも市議会議員は国会議員の公設秘書と兼職して成り立つようなものなのか。
政治学者の辻陽氏の著書『日本の地方議会』(中公新書)には、第2章「議員の仕事」のなかに第3節「24時間365日議員」というページが続く。辻氏が2018年におこなった公明党市議会議員へのインタビューに基づく記述である。
議員の名前は伏せられているが、2006年に人口8万人の市の市議として初当選し、2019年の時点で4期目。2期目には市議会副議長、3期目には議長を経験した。
この市議は、毎朝8時までには市役所に向かい、議会開会中だけでなく閉会中でも各種委員会の閉会中審査、視察、全員協議会などの公務が続く。なにがしかの公務の入っている日が土日を合わせ全体の半数近くを占めている。
また土日は必ずと言ってよいほど商工会議所や教育関係の行事などの「準公務」がある。市民相談も多いときは日に3件以上ある。市民や企業からの相談は、行政の担当部署と個別に協議し、必要に応じて公明党の県会や国会議員とも共有する。このほかに、政党活動もある。調べごとや書類づくりもあり、就寝はだいたい深夜1時から2時ごろだ。
辻氏は同書で、「行動すればするほどプライベートの時間がなくなる」と記している。維新は片手間で市議が務まるのかもしれないが、まじめに働く公明党の市議にとっては「24時間365日」あっても足りないのだ。
池下議員が言う「休日も返上して一生懸命やっていただいた」から兼職も二重報酬も問題ないという感覚は、有権者をなめ切ったものではないのか。
ハリボテ感と空虚さが日増しに募る日本維新の会の「身を切る改革」。地方議員から執行部まで、基本的に公人としての資質に欠ける議員がまるで〝日替わりメニュー〟のように不祥事を出す政党。問われているのは有権者の〝製造責任〟でもある。
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