「日本からなくなったらいい政党」
7月23日、インターネット番組に出演した日本維新の会の馬場伸幸代表は、日本共産党について、「言ってることが世の中ではあり得ない、空想の世界を作ることを真剣にマジメに考えている」「日本からなくなったらいい政党」などと発言した。
日本共産党が党綱領で「社会主義・共産主義の社会」をめざしていることを指していると思われるが、共産党側は猛反発し、発言の撤回を要求した。
だが馬場代表は26日、「謝罪や撤回するという気は全くない」と述べた。
馬場氏はその上で、共産について「公安調査庁から破防法(破壊活動防止法)による調査団体に指定されている。破防法による調査対象団体ということは、危険な政党であるというふうに、政府としてみているということだ」と述べた。(「朝日新聞デジタル」7月26日)
事実、公安調査庁のサイトには、「共産党が破防法に基づく調査対象団体であるとする当庁見解」が掲載されている。
民主党政権時代も含めて、公安調査庁は日本共産党が〝暴力革命の可能性を否定することなく現在に至っている〟と判断し、過激派やオウム真理教などと共に調査対象とし続けてきた。
北側・公明党副代表の発言
日本維新の会の共同代表である吉村洋文・大阪府知事は、共産党側が反発していることについて、
「共産党からは、さよなら維新と何度も言われてきた。何をいまさら言っているのか」(『産経新聞』7月26日)
と返した。
一方、この馬場代表の発言について公明党の北側一雄副代表は27日の会見で、「共産党は政策や考え方が私たちとは全然違うが、違うからと言ってなくなってよいとは思っていない」「多様な意見があるのが政治の世界であり、いかに合意形成していくかが政治の大事な役割ではないか」と指摘した。
乙武洋匡氏は、この北側副代表の発言を報じたNHK記事を引用し、
#公明党 と #共産党 が犬猿の仲だと知られているからこそ、この発言はとても意義のあるものだと感じています。
「私はあなたの意見には反対だが、それを主張する権利は命がけで守る」
民主主義に生きる者として、いま一度、この言葉を噛み締めたいと思います。
(7月28日のXへの投稿)
と自身のSNSに綴った。
「野党共闘」を「統一戦線」と認める
さて、その日本共産党は7月25日、『日本共産党の百年』の発刊を発表した。とりあえず出されたのは、タブロイド判のザラ紙に印刷された全60ページ(本文は57ページ)の厚手の夕刊紙のような作りである。
1994年に発刊された『日本共産党の七十年』は全3巻の単行本だったが、2003年に出た『日本共産党の八十年』は326ページの1冊の本になり、90年は発刊されずに終わった。
今回の『日本共産党の百年』は「『八十年』史とほぼ同じ分量になるように」(『しんぶん赤旗』7月26日/志位委員長の会見)製本したものを10月に刊行するそうだ。
日本共産党は党綱領のなかで、日本国憲法とは全く相いれない「社会主義・共産主義の社会」の実現をめざしている。
その〝革命〟への道筋について綱領では、第1段階としてさまざまな勢力と共闘して「統一戦線」の政府をつくるとしている。
現在の反動支配を打破してゆくのに役立つかぎり、さしあたって一致できる目標の範囲で統一戦線を形成し、統一戦線の政府をつくるために力をつくす。(日本共産党綱領)
そして、第2段階として、その「統一戦線の政府が国の機構の全体を名実ともに掌握し、行政の諸機構が新しい国民的な諸政策の担い手となること」(綱領)を実現したのち、今度は、
社会主義・共産主義の社会への前進をはかる(綱領)
のである。
興味深かったのは『日本共産党の百年』のなかで、2015年から日本共産党が主導した「野党共闘」について、
二〇一五年は、戦争法(安保法制)反対の国民的闘争が発展し、日本共産党が市民と野党の共闘という新しい統一戦線の道に踏み出した、日本の政治史においても歴史的な年となりました。(『日本共産党の百年』)
と記していることだ。
2015年以来、今も同党がこだわっている「野党共闘」が、この「社会主義・共産主義の社会」への革命第1段階の「統一戦線」に他ならないことを、あっさり認めているのである。
「めざすべき国家像が違う」
そして、最後の「むすび――党創立百周年を迎えて」には、衰退の一途をたどる党の実情についても触れざるを得なくなった。
全国各地で奮闘が続けられてきたものの、党はなお長期にわたる党勢の後退から前進に転ずることに成功していません。ここに党の最大の弱点があり、党の現状は、いま抜本的な前進に転じなければ情勢が求める任務を果たせなくなる危機に直面しています。(同)
本年4月の統一地方選挙では、日本共産党は現有議席の1割を超える135議席を失った。
2015年に平和安全法制が成立したことを機に、同党はこれを「戦争法」と名付け、当時の民主党などと「野党共闘」を開始した。
この共産党との共闘は民主党勢力を分裂させて、今に続く野党の弱体化を招く。さらに、立憲民主党と蜜月関係になり「政権合意」まで誇らしげに吹聴したことで、2021年の衆議院選挙では立憲民主党と日本共産党だけが大敗。立憲は創業メンバーである枝野執行部の総退陣に至る。
今も懲りずに日本共産党は「野党共闘」を主張し、立憲民主党内にも小沢一郎氏や小川淳也氏など、これに呼応する勢力が公然と執行部に反旗を翻している。
だが、日本維新の会も国民民主党も、日本共産党との連携には応じる余地がない。立憲や国民の支持母体である連合も、「めざすべき国家像が違う」として日本共産党との共闘には反対している。
日本共産党との関係をめぐって、今や立憲民主党が分裂の危機に瀕している。
党勢の退潮に関して、今年に入り日本共産党のベテラン党員たちが相次いで執行部を批判した。
すると、日本共産党はこれらの党員を除名し、「この攻撃の本質は、日本共産党そのものに対する攻撃ではないでしょうか」「支配勢力から意図的に持ち込まれた議論だ」(第8回中央委員会総会「志位委員長の幹部会報告」)とヒステリックに反応した。
8月2日の全国都道府県委員長会議でも、
支配勢力による党の『心臓部』にたいする激しい攻撃(『しんぶん赤旗』8月3日/志位和夫委員長の中間発言)
と非難を強めたのである。(「信頼を失っていく野党④」に続く)
「信頼を失っていく野党」:
手段が目的化した立憲民主党――信頼を失っていく野党①
維新、止まらない不祥事――信頼を失っていく野党②
孤立を深める日本共産党――信頼を失っていく野党③
共産党VSコミュニティノート――信頼を失っていく野党④
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