「日本維新の会」公式ホームページより
「党勢拡大ばかりを目指している」
7月12日、川崎市議会の会派「日本維新の会」に属する2人の市議が、日本維新の会に離党届を出した。
本年4月の川崎市議選で、日本維新の会は改選前の1議席から7議席へと大きく躍進した。ところが、わずか3カ月で分裂。原因は、補正予算案の採決をめぐり会派として「反対」を決めていたのに、採決で5人が造反したからだという。
離党した2人の市議は、「有権者をがっかりさせて申し訳ないが、議会人としてあり得ない」「党勢拡大ばかりを目指し、新人教育を現場任せにする党のやり方に疑問を感じる」(『読売新聞』7月15日)と語っている。
4月の統一地方選では、近畿だけでなく都市部を中心に全国的に議席を伸ばした日本維新の会。衆議院補選では和歌山の小選挙区で初となる議席も獲得した。
ところが、この〝快進撃〟と同時に各地で噴き出しているのが、同党議員による不祥事である。
5月17日、名古屋簡易裁判所は4月の愛知県議選に日本維新の会公認で出馬して落選した田畑和紀容疑者に、罰金50万円の略式命令を出した。田畑元維新候補は運動員に報酬を払った買収で逮捕されていた。
5月26日、日本維新の会は梅村みずほ参議院議員を法務委員会から外したうえ、党員資格停止6カ月の処分とした。
おととし、名古屋出入国在留管理局の施設でスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが収容中に体調不良を訴えて死亡した問題で、日本維新の会の梅村みずほ参議院議員は、法務委員会で「ハンガーストライキかもしれない」などと繰り返し発言し、遺族や与野党から批判が出ていました。(「NHK NEWSWEB」5月26日)
梅村氏の暴言に対しては遺族から発言撤回の要求が出ていたが、梅村氏は法務委員会でも「憶測でもデマでもない」と主張。自身の発言を正当化して、議場内から非難を浴びていた。
府議団代表はパワハラ・セクハラ・ストーカー
この5月には、維新の牙城である大阪で、「大阪維新の会」府議団代表の笹川理府議が後輩女性議員に対し、8年前にパワハラやストーカー行為を繰り返していたことが週刊文春で報じられた。
8年前に被害女性から相談を受けながら、当時の松井一郎代表は笹川氏への注意で済ませていたのだ。今回も、週刊誌報道が出てなお、大阪維新の吉村洋文代表(大阪府知事)は口頭厳重注意で済ませ、笹川氏に府議団代表のポストを続投させている。
だが翌週になって、笹川氏が当該女性議員に性的行為を要求していたことが報道され、笹川氏はおおむね事実関係を認めた。
5月25日、すでに政界を引退している松井元代表が会見を開き、8年前の対応が甘かったことを認め、把握していたらと問われ「除名やね」と答えた。
すると、吉村知事は29日になって「除名処分が相当。議員辞職を求める」と対応を変更。維新の会は6月3日に同氏を除名処分にした。
同じ6月3日、「大阪維新の会」の橋本和昌府議も党から離党勧告を受け、5日に離党届を出した。
令和3年と4年、自身が代表を務める2つの政治団体の収支報告書を期限内に提出しなかったことが理由。橋本議員は令和元年にも4年連続で後援会の収支報告書を提出していないことが発覚し、一時離党している。
さらに同じ6月3日、福岡県飯塚市でも4月に初当選したばかりの藤間隆太市議が厳重注意処分を受けた。
市議会の委員会で女性議員を名指しし「セーラー服を着てしゃべれば(動画再生回数が)3千、5千回いくんじゃないか」と発言した(『産経新聞』6月20日)
藤間議員は6月の市議会定例会の議場で謝罪に追い込まれている。
6月6日、維新の京都府議2人と京都市議1人が、いずれも期限内に政治資金収支報告書を府選挙管理委員会へ提出していなかったことが発覚。党員資格停止処分となった。
2日後の6月8日には、隣の滋賀県大津市の維新市議が市議会の初日を欠席。「議員としての自覚が足りなかった」と陳謝し、党は戒告処分とした。
「議会に対して虚偽の説明」
7月に入っても不祥事は続く。
維新が知事と市長を務める大阪府と大阪市が2029年の開業を目指しているIR事業では、用地をめぐる不動産鑑定で疑惑が浮上していた。
土地の鑑定を依頼していた4社のうち、3社の出した地価、賃料、さらに利回りは小数点以下まで、それぞれピッタリ一致していたのだ。
ありえない一致に昨年来、疑惑を追及する声が上がっていた。だが情報開示請求を受けた昨年11月、大阪市は業者とやり取りしたメールのデータを削除。保存期間を過ぎたので残っていないなどと説明していた。
ところが7月3日になって大阪市港湾局は会見を開き、削除されたはずのメール198通が外付けハードディスクの中から見つかったと発表した。
7月14日、大阪市はメールの内容を公表。これまでの説明とは異なり、大阪港湾局から「IRを考慮外」とする条件を提示していたことが判明した。
自民党の前田和彦市議は、
議会に対して虚偽の説明をしていた。1200ページにわたる情報が開示された。この資料があったならば、議会でより踏み込んだ質疑が可能であったということを思うと、悔しさと憤りしかない(「TBS NEWS DIG」7月16日)
と維新の市政を強く批判している。
「うちの父って反社みたいな人間なので」
不祥事は止まらない。
今度は7月6日発売の週刊文春が、リノベーション関連企業を経営する森健人・西宮市議について、複数の下請け業者から工事費の未払いを訴える声が相次いでいると報じた。
森氏は4月23日の統一地方選で初当選したばかりの日本維新の会市議だ。
翌週の7月13日発売の週刊文春は、この森氏が宅地建物取引業免許を所有していないにもかかわらず、会社のホームページに別会社の宅建業免許番号を掲載しており、宅建業法違反の疑いがあると報道した。
本人も事実を認め、SNSで「サイトでは何故か、消したはずの大阪の番号が残ってる次第です」と釈明している。
さらに7月20日発売の号では、森氏が被害を告発した業者らを脅したともとれるLINEの内容を報じた。
7月13日発売号の電子版が出た12日、森氏は業者らに対し、自分の父親が「反社(反社会勢力)」であり、自分の周りの人間たちが業者を「連れ去ると言っている」「この人が行くかもしれません」「ややこしいおっちゃんです」などと脅迫めいたLINEを送っていたのだ。
まだまだ続く。7月14日、埼玉県選挙管理委員会は4月に初当選した日本維新の会の中村美香県議の当選を無効にすると決定した。地方選挙の選挙権と被選挙権の要件である「3カ月以上の居住実態」を満たしていなかったことが判明したからだ。
中村氏は1月20日に公認候補として発表され、2月1日に選挙区である草加市に転居している。そのことを街頭演説で本人が語っていたようで、県議に立候補する本人も周囲の維新スタッフも、「3カ月以上の居住実態」という立候補要件さえ知らなかった可能性があるという。
下着姿の写真をネット販売
7月18日、日本維新の会は、埼玉・上尾市議の佐藤恵理子氏を、次期選挙では非公認とすると発表した。
驚くことに、理由は下着姿の写真などをネット販売していたことだ。日本維新の会埼玉県総支部は「入党時の各種申請書に記載がない公務外の業務に従事しており、入党後も当総支部への報告を行うことのないまま継続していることが判明したため」と説明している。
佐藤議員は事実関係を認め、自身のツイッターで、
先に謝罪しておきます。自分の個人の活動にて露出高めの写真を販売したり、グラビアを出したり一昨年くらいにも露出高めな格好で格闘技に出演したり水着やドレスを着て配信等を行なっておりました。
露出については様々なご意見があり今後は慎むべきなのかもしれません。(「佐藤議員のツイート」7月16日)
と弁明した。
7月19日、大阪高等裁判所は日本維新の会の前川清成衆議院議員に対し、公職選挙法違反で有罪とする判決を下した。
奈良1区から立候補し、比例代表で復活当選した前回の衆議院選挙で、公示前に投票を呼びかける文書を不特定多数の有権者に送ったというものだ。
判決が確定すれば、前川氏は5年間、公民権が停止される。
日本維新の会奈良県総支部の代表を務める奈良県の山下知事は「判決を厳粛に受け止めている。県総支部としての対応は本人と協議して決定する」とコメントしています。(「NHK NEWSWEB」7月19日)
判決が確定すれば議員を失職するが、当の本人は、
私だけが何か特別にずるいことをしたわけではないということは、ぜひご理解をお願いしたいと思っています(「MBS NEWS」7月19日)
と述べ、最高裁への上告も検討しているそうだ。
橋下時代から続く「不祥事体質」
7月20日、昨年の参院選に維新公認の比例候補として出馬し次点で落選していた上野蛍・元富山市議が、公選法に違反して選挙事務所以外にも拠点を設置していたことが報道された。
富山維新の呉松福一幹事長は取材に対し、6月にこの事案を把握し、上野氏への聞き取りを行ったと説明。「真摯に調査し、真実と事実を明らかにします」とコメントを出した。(「読売新聞オンライン」7月20日)
ここに挙げた一連の不祥事は、4月の統一地方選が終わったあと、5月から7月のわずか3カ月間に報道されたものの抜粋でしかない。
日本維新の会という政党が、長年どのような資質の人間を公認して議会に送り込んできたかを端的に示してあまりある。
パワハラ、セクハラ、カネ… 橋下時代からつきまとう維新の「不祥事体質」脱却できるか(『産経新聞』6月13日)
いつまでたっても抜けきれない〝おごり〟と〝たるみ〟。真っ先に〝改革〟しなければならないのは、日本維新の会に深くしみ込んだ「不祥事体質」ではないのか。
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