損害賠償と謝罪広告を求める
6月20日、創価学会本部は、株式会社扶桑社と『週刊SPA!』編集人らを相手取り、損害賠償と謝罪広告の掲載を求めて民事訴訟を提起した(「創価学会公式サイト」6月21日)。
また公明党も同日、党の名誉を著しく毀損する事実無根の記述があったとして、同社と倉山満氏、同誌の編集人、発行人に対し、損害賠償の支払いと同誌への謝罪広告の掲載を求める訴訟を東京地裁に起こした。
問題となったのは『週刊SPA!』6月13日号(6日発売)に掲載された「倉山満の知性のリング 言論ストロングスタイル」。
このなかで、〝学会が会員に指示をして組織的に住民票を不正に移動させ、投票をさせている。学会には「3カ月ルール」なるものがあり、住民票を移動した後、選挙権が生じるまでの3カ月間は連続して選挙をされては困る。そのため時の総理大臣が解散権を行使したければ、前の選挙から3カ月空けなければならない〟との報道がなされていた。
創価学会と公明党は、発売翌日の6月7日に「事実無根」として扶桑社に厳重抗議。謝罪と訂正を求めた。しかし、14日になって同社から「名誉が毀損されることにならない」等の木で鼻をくくったような回答があった。
そこで20日、損害賠償請求と謝罪広告を求める民事訴訟に踏み切った。それほど今回の当該記事は〝スジの悪い〟話なのだ。
選管が「事実無根」と答弁
「選挙で公明党候補を勝たせるため創価学会が住民票を移動させている」という悪質な〝デマ〟は、繰り返し語られてきた。
最初にこのデマが国会で語られたのは、まだ公明党が結成される半年前の1964年4月。公明党の前身である公明政治連盟が衆議院に進出するという報道が流れた直後のことだった。躍進していた公政連が衆議院に進出することに危機感を覚えたのだろう。
衆議院の公職選挙法特別委員会で、自民党の宇野宗佑、社会党の畑和、島上善五郎らが、「創価学会が集団的に移動をして、それもこの法律にある住所の要件を満たしていない、形だけの移動をして、アパートの1部屋に、極端なのは100人も200人も移動した」「そういうことがきわめて組織的、計画的におこなわれている事実がある」などと繰り返し発言した。
これに対し、公政連議員と公明新聞記者が問いただすと、3人とも「ウワサを口にしたまで。事実は知らない」と発言を撤回した。
東京都選挙管理委員会事務局長も事実調査を踏まえ、「事実無根」と公式答弁している。
1968年には、赤沢正道・自治大臣(当時)が同様の「住民票の集団移動」を口にした。だが、この際も公明党から厳重抗議をすると、赤沢大臣は「根拠は何もない。恐縮している。今後、根拠のない発言は慎む」と謝罪する始末となった。
首相が否定。朝日新聞が謝罪記事
1983年12月には、衆議院選挙のさなかに自民党議員だった島村宜伸が同種のデマ演説をした。公明党から名誉毀損で告訴された島村は〝発言はウワサに基づいたもの〟〝無責任な言動だった〟と謝罪した。
翌84年4月10日、参議院予算委員会で公明党はこのデマについて自民党総裁である中曽根康弘首相に問いただした。中曽根首相は、
公明党がいやしくもそのような不正行為、集団移動をやる、選挙目当てのそのようなことをやるとは思っておりません。(「参議院予算委員会」(昭和59年4月10日))
と明確に答弁している。
1993年7月20日、朝日新聞徳島版が〝県内の創価学会の住民票が、東京都議選のために大量に異動されている〟と報じた。
創価学会は直ちに厳重抗議。同紙はあらためて事実関係を調査した結果、翌21日付で、
うわさのような事実はありませんでした。十分な裏付け取材をせず、掲載したことで、関係者並びに読者にご迷惑をおかけしました。お詫びします。
と謝罪・訂正記事を掲載した。
デマで起訴された民主党議員
2005年7月8日には、民主党(当時)衆議院議員だった永田寿康が国会で、東京都議選に関して「公明党の支持団体の方々の住⺠票が東京都に移されている疑念がある」等とデマ発言をする。
これには河野洋平・衆議院議長から永田議員に「注意」がなされ、与党から懲罰動議が出された。当然ながら永田が所属する民主党も公明党に謝罪した。
この永田のデマに関しては、東京都選挙管理委員会が総務省を通じて国会に「都議選の選挙人名簿に対して異議申し立てが1件もなかった」と確認報告している。
ところが永田は謝罪を拒否。翌月、自身の事務所開きで支持者らを前に、「いとこが学会員という人の話によると、(創価学会の会員が)東京都議会選挙の際に3回、都外から住民票を移して公明党議員のために選挙活動をした」等と発言する。
さらに「創価学会は宗教団体として認められておらず、都の認可をもらうために学会系の都議を増やして圧力をかけなければならない」などと荒唐無稽なデマを語った。学会は1952年に宗教法人の認証を受けており、しかも2005年の時点で所管は都ではなく文部科学省である。
悪質な虚偽の流布をおこなったとして永田は名誉毀損罪で刑事告訴された。2008年7月18日に千葉区検察庁は永田を略式起訴し、23日に千葉簡易裁判所は30万円の罰金刑を課した。
名誉毀損は〝犯罪〟である
住民票には税金や社会保険、子どもの保育園や学校など、さまざまなものが紐づいている。移動させれば住民票に履歴も残る。それを特定の選挙に合わせて移動させるなど、常識で考えてもあまりにもバカげた話だ。
公職選挙法第236条には、「選挙人名簿に登録させる目的で嘘の転入届を提出した場合」に罰則が定められている。居住実態がないのに選挙のために虚偽の転入届を出せば処罰の対象となる。
この60年間、本稿で紹介した以外にも、議員、新聞、雑誌、タレントなど、「住民票移動」のデマ発言・掲載をした者は多い。そして、その証拠を示すこともできず、ことごとく謝罪や撤回をするハメになり、永田などは犯罪として起訴までされた。
今回『SPA!』の記事は、そんな〝犯罪〟とされたデマを今さら読者と社会にばらまいたものだ。しかも、抗議を受けて撤回するどころか開き直るという悪質さ。
過去60年間にこれだけデマと認定されてきた話なのだ。知らなかったでは済まされない。明確な証拠を示せなければ、司法の厳しい処断は免れないだろう。
なお今やSNS等にこうした名誉毀損に相当するデマを書くことも拡散させることも、その責任を大きく問われる時代になっていると知っておくべきである。
「住民票移動」云々について(soka youth media:創価学会青年部)
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