G7広島サミットが開幕――「核兵器の先制不使用」誓約を

ライター
松田 明

被爆地・広島での歴史的なサミット

 いよいよG7広島サミットが開幕する。
 既に15カ月におよぶウクライナ侵攻では、プーチン大統領が核兵器使用の可能性をほのめかし、ベラルーシへの核配備計画が進んでいる。ロシアのメドベージェフ前大統領は4月25日の会議で、核戦争の可能性が大きくなっておりロシアが最初に核兵器を使用する可能性があると発言した。
 北朝鮮は核ミサイルの配備段階に入ったとされる。ロシアは新戦略兵器削減条約(新START)の履行停止を宣言しており、中国は2035年までに米ロに匹敵する核戦力を保有するという。
 こうした状況下で被爆地・広島でG7サミットが開かれる意義は幾重にも深い。
 サミット初日の19日には、米国、イギリス、フランスという核保有国を含む各国首脳を、岸田首相が平和記念公園で出迎え、そのあとそろって平和記念資料館を見学することになっている。
 G7各国首脳や政府関係者、世界中から集まっている報道関係者らが「被爆の実相」に触れ、核兵器が人類の上にもたらす惨禍への認識が深まる好機となるだろう。
 また初日は核軍縮・核不拡散が主要議題となる。
 岸田首相が昨年のNPT(核不拡散条約)再検討会議で提唱した「ヒロシマ・アクション・プラン」の内容――①核兵器不使用の継続、②透明性の向上、③核兵器数の減少傾向維持、④核兵器不拡散と原子力の平和的利用、⑤各国指導者らの被爆地訪問の促進――が、あらためて話し合われるという。
 原爆投下から78年を前にはじめて、G7首脳がそろって原爆慰霊碑の前に立つ広島サミット。核軍縮・核不拡散について、どこまで成果文書に盛り込めるか、議長を務める岸田首相に託された期待と責任は大きい。

公明党が岸田首相へ5項目の提言

 サミット開幕を前にした5月16日、連立与党である公明党の山口那津男代表は官邸に岸田首相を訪ね、「核なき世界」へ首相がリーダーシップを発揮するよう求める5項目の提言を手渡した。
 第1に、2022年1月3日に発表された「核保有国5カ国のリーダーによる、核戦争を防ぎ、軍拡競争を避けることについての共同声明」と、同じく11月のG20首脳宣言に明記された「核兵器の使用や威嚇は許されない」を、広島サミットでも確認すること。
 第2に、ロシアによる新戦略兵器削減条約(新START)の履行と後継条約協議の再開、中国による透明性を持った軍部管理体制構築に向け、率直な対話を呼び掛けること。
 第3に、各国の政治リーダーが平和記念資料館の見学や被爆者との対話を通じ、被爆の実相に触れられるよう最大限の努力をする。参加者の長崎訪問も可能となるよう配慮し、核実験がおこなわれたカザフスタンなど世界の被爆地との連携を強化し、核使用に伴う非人道性や環境破壊の影響の検証、知見の発信をすること。
 第4に、核の使用や威嚇、拡散を防止するには、NPT(核兵器不拡散条約)の体制維持と強化が不可欠であり、非核保有国に核兵器の使用や威嚇をしない「消極的安全保障」に法的拘束力を持たせる重要性があること。
 第5に、今年11月に開かれる核兵器禁止条約の第2回締約国会合に、日本がオブザーバーで参加し、核保有国と非保有国の「橋渡し」の役割を果たすこと。
 提言を受け取った岸田首相は、「いずれも重要なポイントだ。努力していきたい」と応じた。
 じつは1年前の5月18日も、山口代表は日米首脳会談を目前にした岸田首相を訪ね、核保有国に核兵器を使用させないよう日本政府の具体的行動を求める緊急提言を手渡している。
 G7サミットを広島か長崎で開催して「被爆の実相」に触れてもらうことも、この際に提言した。
 2021年1月に批准した核兵器禁止条約には、核保有5カ国はじめ核保有を表明しているインド、パキスタン、北朝鮮、また核の傘の下で安全保障を構築している日本や韓国、NATO諸国は参加していない。
 公明党は、核兵器禁止条約は「日本の非核三原則の規範を高めたもの」と位置づけ、NPTで合意と信頼を構築して日本が批准する環境を構築するよう政府に促している。

「核兵器の先制不使用」確立を

 山口代表が首相を訪ねた16日、国連のグテレス事務総長はG7広島サミットへの出席を発表。記者会見の席で、グテレス総長は「核兵器の先制不使用」に言及した。

ロシアのウクライナ侵攻などを念頭に「核保有国は先制不使用のみならず、いかなる状況でも核兵器を使用しないことを確認する時期に来ている」と指摘した。「この点において、日本は特別な道徳的権威があると信じている」とも述べ、議長国である日本の役割に期待感を示した。(『毎日新聞』5月17日

 公明党の創立者である池田大作SGI(創価学会インタナショナル)会長は、さる4月27日に「G7広島サミットへの提言」を発表している。
 SGIは192カ国・地域に広がる信仰を基盤とした世界市民の連帯であり、ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の創立当初からの国際パートナーでもある。
 池田会長は提言のなかで、

 ウクライナ危機の早期終結と並んで、広島サミットでの合意を強く望むのが、「核兵器の先制不使用」の誓約に関する協議をG7が主導して進めることです。(「G7広島サミットへの提言 危機を打開する〝希望への処方箋〟を」

と表明。昨年のロシアを含む核保有5カ国首脳が発表した「核戦争に勝者はなく、決して戦ってはならない」と、G20首脳宣言に記された「核兵器の使用又はその威嚇は許されない」を、その協議への足場とするよう提唱した。
 核廃絶への強い信念を持つグテレス事務総長がG7広島サミットへの出席を表明し、あらためて「核兵器の先制不使用」に言及したことは、池田会長の提言への明確な支持でもある。
 岸田首相は昨年3月、着任して間もないラーム・エマニュエル駐日米国大使を広島平和記念公園に案内し、平和記念資料館を一緒に見学している。
 歴史的な意義を持つ今般のG7広島サミットで、その開催地にふさわしい核軍縮と核不拡散への一段と踏み込んだ成果文書が出され、なかんずく「核兵器の先制不使用」への力強い言及が盛り込まれることを切に願う。

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