「なぜ、泉代表が来ないのか」
野党のなかには、どれほど選挙で負けようと党首が22年以上も君臨し続ける政党もある一方で、ことあるごとに党内で対立し批判の応酬を繰り返す政党もある。
旧民主党勢力の場合、もはやその内輪の足の引っ張り合いが見慣れた光景になりつつあって大きなニュースにもならない。
統一地方選挙と補選が終わるや否や、立憲民主党内ではやはり執行部の責任を問う声が噴出した。
昨年の参院選で立憲民主党が敗北した当時から泉健太代表の辞任を求めていた蓮舫議員は4月26日のツイートで、
現職だった吉田ただともさんは退路を断っての補選挑戦。
昨夏の比例票伸び悩みで参議院議席を失った有田芳生さんの山口4区での挑戦。
共に結果に繋がりませんでした。政治と金の不祥事による千葉補選も。
その総括さえも悠長な党執行部の姿勢に納得ができないと申し上げ続けています。回答待ちです(蓮舫氏のツイート/4月26日)
と怒りの投稿。
さらに4月28日の議員総会で、岡田克也幹事長から両院議員懇談会が連休明けの5月10日に開催されると告げられたことを受け、
なぜ、泉代表が来ないのか不満ですが、両院懇の時には地方組織の検証のみならず執行部の特に代表自ら補選惨敗の検証をと求めました。(蓮舫氏のツイート/4月28日)
と、泉代表への不満をぶちまけた。
千葉では共同会派が解散
野党が一本化しながら僅差で敗北した大分に対し、千葉5区では自民党議員の不祥事による補選にもかかわらず、野党が乱立した結果、自民党候補が当選した。
枝野幸男・前代表は4月29日の動画配信で、
私は乱立になったので、どこに気を遣う必要もなく、わが党らしい選挙ができたので接戦に持ち込めたのだと思っています。
と述べた。
ずいぶんキレイな話にまとめたものだが、現場はそんな空気ではない。
立憲民主党千葉県議団は4月25日、2020年に国民民主党など旧民主党系で結成していた共同会派「立憲民主・千葉民主の会」を解散すると発表した。
今回の補選では国民民主党が昨年末に独自候補の擁立を発表。
立民幹部は「国民は『先に擁立を決めた』の一点張りで、一本化の話し合いに応じようとしなかった」と非難する。(「読売新聞オンライン」4月27日)
立憲民主党執行部は野党一本化の話し合いができずに、本来なら獲れた選挙区で敗北を喫したのが実態だ。
もちろん立憲民主党と国民民主党との対立は千葉だけの話ではない。統一地方選前半戦の投票日を目前にした4月6日、衆議院憲法審査会では、国民民主党の玉木雄一郎代表が立憲民主党の小西洋之・参議院議員の主張に疑義を呈したうえで、次のように揶揄する場面があった。
今後、緊急集会についての、有識者の意見を伺う際にはですね〝自称〟憲法学者の小西洋之参議院議員にもお越しをいただいて、是非あわせてご意見を賜りたいと思います。(「立憲民主党 国会情報チャンネル」4月6日))
小西議員といえば衆議院憲法審査会が週1回開かれていることを「サルがやること」と発言したことで猛批判を浴び、前日(5日)の参議院憲法審査会でも「各院の審議の独立性を侵しかねない重大な発言で看過できない」等の声が出たばかりだった。
「この党は活動家に乗っ取られている」
立憲民主党の迷走は選挙後も続いている。
入管難民法改正案を議論してきた衆議院法務委員会では、与野党間で意見の相違を少しでも埋める交渉がおこなわれていた。
立憲民主党は与党案に反対の立場だったが、多数決でいけば与党案がそのまま通る。そこで難民認定を判断する「第三者機関」の設置検討を付則に記すなどの修正案を提示。与党側もあえてそこを譲歩する姿勢を見せていた。
4月25日の段階でNHKも次のように報じている。
外国人の収容の在り方を見直す入管法の改正案について、与野党4党の実務者による修正協議で、与党側が、野党側の求めを踏まえ、難民認定の透明性の確保のため、「第三者機関の設置の検討」を付則に明記するなどとした修正案を示したことが分かりました。(「NHK NEWSWEB」4月25日)
立憲民主党の米山隆一議員はブログで、
私は今100人しか救えない法案を修正する事で110人を救えるのであれば、今千人、1万人を救えないとしても110人を救う道を選択するべきだと思います。それは、将来に渡って、千人、1万人を救うたゆまぬ努力をすることと、いささかも矛盾するものではありません。(「米山隆一議員のブログ」4月29日)
と修正案についての思いを述べている。
修正案については野党側の参考人となっていた一橋大学の橋本直子准教授も、
こんなすごい前進は、私が過去25年日本の難民保護制度を見つめてきた中で、見たことがありません!これが本当に入るなら、私は賛成票を投じます。(橋本准教授のツイート/4月26日)
と絶賛していたのだ。
ところが土壇場になって立憲民主党内では修正に反対する意見が続出し、執行部は修正案を出すことそのものを撤回。あくまで対決姿勢でいくと決めた。その結果、28日の衆院法務委員会では、与党と日本維新の会、国民民主党が提案した修正案を可決。立憲民主党が一旦は示していた修正案は白紙撤回されたのだった。
「普段、顔も出さない議員ばかりが来て、的外れな反対論をまくしたてた。政治家なら一歩でも前に進めることを選ぶべきじゃないか」。会合に出席した議員は憤る。反対論者の多くは旧社会党系だったとして「この党は活動家に乗っ取られている」と嘆いた。(『産経新聞』4月28日)
多様な意見がある中で合意形成し、少しでもそれぞれの主張が反映されるようにするのが本来の成熟した議会制民主主義だろう。ゼロか百かで対立すれば、常に数の多い者の意見だけが通る。
しかし、先鋭化した政党や会派は〝次善の策〟を選ぶことより、原理主義的な選択に走る。今回、立憲民主党は野党第一党でありながら、その選択をしてしまった。
法務委員会の野党筆頭理事として修正協議を進めてきた立憲民主党の寺田学議員は26日夜、
“The best is often the enemy of the good.”
最善はしばしば善の敵である。(寺田議員のツイート/4月26日)
とツイートし、党内からの反対論で努力が水泡に帰した無念と憤懣を露わにした。
立憲民主党の瓦解に向かっての遠心力は、今後さらに強まっていくだろう。
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