公安調査庁の調査対象
統一地方選の前半戦で、現有議席の4分の1を失うという大敗北を喫した日本共産党。今もなお日本国憲法とは全く相いれない「社会主義・共産主義」への体制転換を党綱領に掲げる〝革命政党〟だ。
もちろん日本は民主主義国家なので、思想や主義主張は自由である。問題はその主義主張を実現させるための手段なのだ。
公安調査庁は公式サイトに「共産党が破防法に基づく調査対象団体であるとする当庁見解」を掲載。日本共産党が今なお「暴力革命の可能性」を捨て切っていないと判断し「破壊活動防止法に基づく調査対象」としていることを公表している。
そして日本共産党と言えば、他党の〝実績横取り〟がもはや常態化している。実際にはやってもいないことを「共産党が実現!」と宣伝する。一般企業なら一発アウト事案だろう。
やり方はきわめて巧妙で、額面通りに宣伝を見聞きしていると騙されてしまう。では、彼らがどんなふうにやるのか、直近で問題視された3つの例を見てみよう。
デマ宣伝の常習的手口
まずは東京都における「18歳までの医療費無償化条例」をめぐる悪質な宣伝。
4月10日、日本共産党の小池晃書記局長は新宿駅東南口で街頭演説に立ち、次のように聴衆に訴えた。
小池氏は、党区議団が2020年に「18歳までの医療費無料化条例」を提案するも自民党、公明党などの反対で否決されたことを指摘。しかし、その後の党区議団の頑張りで、今年4月から18歳までの医療費無料化を実現することができたと述べました。(『しんぶん赤旗』4月11日)
共産党が提案した「無料化条例」が自公などの反対で潰されたが、〝共産党の頑張り〟で今年(2023年)4月から実現したというのだ。日本共産党は都内各地で同様の演説やチラシ配布をしており、党の戦略としてこの宣伝をやっている。
では、それは本当なのか。
これまで東京都では所得制限を設けた上で、区市町村と半額ずつ助成するかたちで未就学児の医療費は無料に、小学生と中学生は通院1回あたり200円を実現してきた。
今年4月1日からは3年間にかぎり、15歳の4月1日から18歳の3月31日までの子ども(高校に在籍の有無にかかわらず)も自己負担分を助成する。
この高校生までの対象拡大は、都議会公明党が長年訴えて他会派や都と折衝を重ねてきたもの。事実、方針が決まった昨年(2022年)1月、各紙は次のように報じている。
都は1994年に3歳未満への医療費補助を開始。01年に就学前まで、07年には中学生まで対象を広げた。高校生までの医療費無料化は都議会公明党などが要望していた。(『東京新聞』2022年1月25日)
都議会公明党が昨年7月の都議選の公約に掲げ、都に要望を続けてきた。(『読売新聞』(都内版)2022年1月25日)
この助成をおこなうには、都としても各市区町村としても予算がいる。その助成費用を盛り込んだ予算案に日本共産党は「反対」しているのだ。
施策の原資である予算に反対しながら、共産党が「実現」したと宣伝する。デマ宣伝としか言いようがない。
あたりまえの話だが、議会で議案を可決成立させるためには過半数の賛同がいる。公明党は他会派と合意形成し、さらに予算を執行する首長や行政側とも合意形成して、ひとつひとつの政策を実現させていく。
一方、共産党はどの自治体でもそれをしない。毎回、ほとんどの会派から拒絶されるような無理筋の案を出してくる。彼らにとっては政策実現よりも、〝頑張ったのに他会派から妨害された〟というストーリーを作ることのほうが重要なのだ。
助成予算に反対した共産党
2例目は、品川区で公明党が実現した「高齢者向け補聴器の購入費助成」をめぐるデマ宣伝。日本共産党の品川地区委員会は「共産党区議団が住民と力を合わせて実現」というビラを配布している。
手口はやはり同じで、共産党区議が出した複数の請願が区を動かしたと書かれている。しかし、実際には共産党の出した請願はほとんどの会派から相手にされず不採択になり続けた。区を動かした事実などまったくない。
そして助成費の予算を盛り込んだ区の予算案の採決(3月28日の区議会本会議)で、共産党は「反対」したのである。
昨年6月の定例会で公明区議が補聴器助成を求めたのに対し、当時の濱野健区長が初めて実施の方針を表明。後任の森沢恭子区長も、2月の党の会合で、補聴器助成への公明党の取り組みについて「地域の隅々までさまざまな声に耳を傾け、政策として粘り強く提案してくださったからこそ、実を結んだもの」と明言した。(『公明新聞』4月15日「記者メモ」)
何の成果もない空振りの請願や質問を〝実績〟だと装い、予算に反対しながら、他党が尽力して実現した政策を自分たちが勝ち取ったかのように有権者に宣伝する。しかも、他党の実績をかすめ取るだけでも非道なのに、その他党が共産党の請願を妨害したと訴える。
日本共産党という政党がどれほど卑劣な政党か。革命という目的成就のためならデマで有権者を欺くことさえ許容されると考えているのだろう。
「後から来てハイエナのように」
3例目は東京都杉並区で4月1日から施行された「性の多様性が尊重される地域社会を実現するための取組の推進に関する条例」をめぐる騒動。
東京都では国に先駆けて性的マイノリティの権利に関する施策が整備されてきた。賛否が分かれがちなこの問題を政局化させず合意形成できるよう調整してきたのが、国でも都でも公明党なのだ。
公明党の取り組みについては、超党派の団体であるLGBT法連合会の神谷悠一事務局長も、
地方で公明党がキーになって動いたことで、パートナーシップ制度や指針ができたという声は本当に多く耳にします。(『第三文明』2020年2月号)
性的マイノリティーの問題を改善するにあたり、公明党はこれまでも重要な役割を果たしてきました。(『第三文明』2021年12月号)
と明言している。
2月3日に当時の首相補佐官から差別発言が出ると、1週間後には公明党の山口那津男代表自ら新宿区内の「プライドハウス東京レガシー」を訪問。当事者たちからの切実な要望を聞いた。
当事者たちから「首相にも声を聴いてほしい」と要請された山口代表は、直後に岸田首相に電話を入れている。17日、岸田首相はプライドハウスの関係者ら当事者の代表を官邸に招き懇談した。
杉並区でも、当事者団体が粘り強く要望や陳情を重ねてきた。これを支えてきたのが公明党区議団だった。
2020年には都への陳情に同行。2021年12月には公明党の山本ひろ子・杉並区議が中心となって同区議会の自民党有志や区の男女共同参画課長をプライドハウスに案内。視察を実現させた。
さらに区長への陳情にも同行するなどし、文字どおり他会派との合意形成、首長や行政との合意形成を進めてきたのだった。
こうして杉並区では自民党議員の一部も賛成して条例が採択された。
すると4月15日、日本共産党の区議会候補者がツイッターで、
国が #同性婚 を実現するべき!地方自治体から動き始めてる。#杉並区 も時間がかかったけどやっとここまできた
などと投稿。しかも、どの候補者が賛成反対したかを図表化した「賛成・賛同・反対リスト」なるものに被せてのツイートだった。
これには陳情に尽力してきた当事者たちが激怒。「我々が、どれだけ必死に積み重ねてきたのか後から来てハイエナのように実績横取りする輩にはわからないだろ!!」と怒りの投稿をした。
また「敵・味方」を色分けして対立や憎悪を煽る共産党の手法に、公明党の山本ひろ子区議も、
人権の問題は最大会派の自民党を含めより多くの理解を得るために時間をかけて進めてきました。
これまでどんな思いで進めてきたか何も知らないのに、敵を作るようなこうした発信は謹しんでいただきたいと思います。
そっとして欲しい方々への配慮を忘れないでください。(山本ひろ子区議の4月15日のツイート)
と厳しくたしなめた。
多様性が尊重される社会を築くためには、異なる意見や価値観を互いにどう尊重し折り合うかが重要になる。公明党はその点に汗をかくのだが、共産党は異なる主張を徹底的に敵視して糾弾するだけだ。しかも、地道で実効性のある努力は何もしないし、できない。
何もしないで、あとからノコノコと出てきて、さも自分たちが何かを実現したかのように宣伝する。
有権者や党員支持者に対して良心の呵責がないのかと不思議に思うが、微塵もないのが日本共産党という政党なのだ。
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