共産党「除名」処分の余波
党首の公選制や現実的な安全保障政策への転換を主張した党員を「除名」した日本共産党。その閉鎖的体質を朝日新聞や毎日新聞にまで社説で批判されると、「朝日に指図されるいわれはない」(志位委員長の会見)、「政党の結社の自由という立場に立てば、この社説はあまりに不見識」(田村智子政策委員長の会見)と猛反発してみせた。
志位委員長は2月26日に放送されたテレビ番組で、あらためて党首公選制の導入を否定した。
共産党の志位和夫委員長は26日放送のBSテレ東番組で、党首公選制の導入を改めて否定した。「直接選挙で選ぶと、党首に権限が集中する。必ずしも民主的だと思っていない」と述べた。(「共同通信」2月26日)
何度選挙で負けても執行部の退陣にはならず、同じ人間が22年以上も党首の座にあり続けている日本共産党。
その日本共産党は自衛隊を違憲だと主張しながら、ロシアによるウクライナ侵攻が始まると、日本が他国から侵略された場合は「自衛隊を活用する」(志位委員長)と述べた。
こうした無責任な安保政策に疑義を呈した党員を除名したことに、日本共産党と一緒に野党共闘を進めてきた「市民連合」運営委員の山口二郎・法政大学教授は、
閣外とはいえ政権に参加するというなら、自衛隊違憲論と自衛隊活用論の矛盾をどう考えるのか、まじめに答えてほしい。(2月9日の山口教授のツイート)
と今さらながら同党に疑問を投げかけた。
「盗撮」と「飲酒運転」で逮捕
その日本共産党には、今年に入ってから醜聞が続いている。
まず1月12日、党千葉県委員会・書記長の大西航容疑者が建造物侵入と千葉県迷惑防止条例違反(盗撮)の疑いで逮捕された。
逮捕容疑は昨年10月23日午後8時5分ごろ、同駅の女子トイレに侵入し、10代の女子高生が使用している個室の上からスマートフォンで動画を撮影したとしている。(『産経新聞』1月12日)
容疑者は犯行を認め、スマートフォンからは他にも複数の動画が見つかっているという。同容疑者は2017年の衆議院選挙で千葉12区の候補者となっている。しかも、これまでSNSで「何年も何十年も続いてきた性暴力に、本気で向き合う政治を」などと性犯罪や性暴力の撲滅をたびたび訴えていた。
日本共産党千葉県委員会は翌日、同容疑者を除名した。
一方、宮崎県都城市では2月2日深夜、日本共産党都城市議会議員の山内和憲容疑者が酒を飲んで車を運転。右折してきた乗用車に衝突して道交法違反で逮捕された。
山内容疑者は2022年1月の市議選で、共産党新人として初当選し1期目。共産党都城市議団の森りえ代表は「本当に申し訳ない。本人に議員辞職を求めていきたい」と話した。(『南日本新聞』2月4日)
同容疑者は2月6日に「一身上の都合」として議長に辞職を申し出ている。
東京の練馬区議会では、NHKから国民を守る党の松田亘議員と都民ファーストの会の橋口奈保議員が、それぞれ家庭がある身で〝W不倫〟をしていたと報じられた。2人は同区議会で「練馬区議会未来会議・都民ファーストの会・国民民主党」という会派を組んでいる。
2月23日の「FRIDAY DIGITAL」は、2人が議会中に抜け出して密会を繰り返していたという松田氏の妻の告発を報じている。
松田氏は責任を取って次の選挙には立候補しない意向という。
NHK党では、昨年7月の参院選で当選したガーシー議員が、当選後もアラブ首長国連邦に滞在して議会を欠席したまま歳費だけを受け取っている。
参議院の懲罰委員会は2月21日、4つの懲罰処分のうち3番目に重い「議場での陳謝」を全会一致で決めた。
22日に参議院本会議で採決がおこなわれ、NHK党を除く与野党の賛成多数で処分が決定した。なお、れいわ新選組は採決を欠席した。
「維新との連携は砂上の楼閣」
立憲民主党では、泉健太代表の〝言動の軽さ〟が目立つ。
2月8日、衆議院憲法審査会の幹事懇談会を立憲民主党と日本共産党は欠席。これについて日本維新の会の馬場伸幸代表が、「サボり癖が出てきているのではないか」「立民との協調関係は非常に暗雲が垂れ込めてくる」と批判した。
すると泉代表は10日の記者会見で日本維新の会について、
「どうしてもすぐ自民党の誘いに乗ってしまう感じがする。政権与党から譲歩を引き出す場で重みや慎重さが大事で、すぐ与党の誘いに乗ってしまうのでは野党としては戦えない」(『毎日新聞』2月10日)
と応酬。続けて、馬場代表の名前を引き合いにして、「良馬場ではただ単に与党が走りやすいだけだから、やっぱり馬場さんは『重馬場』であってもらいたいと思う」などと発言した。
泉代表は17日になって「悪口ではない」と釈明したが、
この言動に維新の藤田文武幹事長は「相当むかついている。人の名前をいじる感性はどうなのか」と激怒した。(「共同通信」2月17日)
2月には出身地の北海道に入ったが、地元の反応は冷ややか。
泉代表が朝8時に実家の屋根の上で雪おろしをする様子を、マスコミに報道してもらおうと発案し、各社に呼びかけましたが、1人も記者は来ませんでした。(「集英社オンライン」2月24日)
同窓会のあと午前2時半まで十数人の友人と飲み明かしたことも、
野党第一党の代表の地方出張ともなれば、運転手や党職員、SP、地元警察といった多くの関係者が動き、プライベートの会合中も外で待機しています。自分の立場を考えていない、のんきな行動(同)
と批判されている。
枝野前執行部は共産党との連携を強めた結果、〝立憲共産党〟と揶揄されて一昨年の総選挙で敗北し退陣に追い込まれた。
泉執行部になってからの昨年の参院選では、その総選挙と比べても比例区の得票数で472万票あまり激減。絶対得票率でマイナス4.43と、すべての政党中で飛び抜けて票を減らしている。
そこで今度は日本維新の会と共同歩調を見せているのだが、選挙互助会のような党内には維新との合流さえ口にする議員もいれば、共産党にシンパシーを感じる左派系議員もいる。民主党時代の政策を自賛する古参議員に対して若手議員のシラケた空気もある。
2月19日の党大会でも、その〝軋み〟ばかりが目立った。マスコミ各社は立憲と維新の〝共闘〟のゆくえにも懐疑的だ。
党勢停滞が続く立憲民主党が打開策を見いだせないでいる。敗れた昨年の参院選から7カ月。挽回を期す執行部は日本維新の会との共闘を推進するものの、リベラル系が反発を強める。民主党政権の子ども政策の正当性を訴えて存在感発揮を狙う幹部には、若手が冷めた視線を向ける。党内にきしみが生じる中、政治決戦となる4月の統一地方選や四つの衆院補欠選挙の結果次第では、遠心力が働きかねない。(『静岡新聞』2月19日)
憲法改正などで立場の異なる維新との連携は砂上の楼閣だ。(『読売新聞』2月20日)
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