世界最高レベルの安全が実現
今回の参院選で有権者が重視する政策。各メディアの調査でもおしなべてトップは「物価・景気対策」、次に「社会保障」と続き、3番目にくるのが「外交・安全保障」だ。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、国連安保理の常任理事国が国連憲章に反して他国の領土を侵略するという前代未聞の暴挙。
さらに、北朝鮮はミサイル実験を繰り返し、その技術と精度を着々と高めている。軍事・安全保障の専門家のあいだでは、いわゆる「台湾有事」の可能性についても楽観できない観測がある。
有権者にとって年初まで最大の関心事だった「新型コロナ対策」より、今や「外交・安全保障」がはるかに重要な関心事になっているのも当然だろう。
第二次世界大戦後、日本は連合国によって武装解除させられた。サンフランシスコ講和条約によって主権を回復した際、日米安全保障条約をむすんでいる。
静岡県立大学グローバル地域センターの小川和久特任教授は、
日本と米国は守り合う関係で、互いに役割分担をしてきた。米国が日本を守る一方で、日本には米軍が使用する米国有数の規模の燃料や弾薬の貯蔵があり、それを自衛隊が守っている。最も対等に近い同盟関係だ。(「公明ニュース」5月22日)
と述べている。
戦後の日本が驚異的な復興と高度経済成長を遂げられたのは、日米安保によって経済に集中することができたからだと言われている。
今やどの国も一国だけで自国の安全を確保できない。仮に日本が米国との同盟を持たずに自前で今と同じレベルの安全保障を確保しようとした場合、必要な防衛費は年間20兆円以上と試算される。
ちなみに中国国務院が発表した2022年の防衛費は前年比7・1%増の1兆4504億5000万元(約26兆3000億円)だ。
一方、日米同盟では、年間5兆円余りの防衛費で世界最高レベルの安全が実現している。(小川教授/同)
「公明党が政権にいたからこそ」
ただ、この日米同盟が「戦後最悪」と米国側から酷評されるほど危うく冷え込んだ時期があった。2009年からの民主党政権時代だ。就任翌年のワシントン訪問の際、普天間問題で迷走する鳩山首相が首脳会談を求めたがオバマ大統領はこれを断っている。
しかも、民主党政権下では中国との関係も「国交正常化以来で最悪」となった。野田政権が尖閣諸島の「国有化」を唐突に宣言したことで中国は猛反発。多くの都市で日系企業やデパートが暴徒に破壊され、中国漁船や中国海警の公船、航空機が、連日押しよせる事態を招いた。
日中関係の正常化の突破口となったのは、政権交代直後の2013年1月に公明党の山口代表が訪中して習近平総書記(当時)と会見し、安倍首相の親書を手渡したことだった。
オバマ政権下で米国は、もはや「世界の警察官」としての役割を降りることを選んだ。米国世論からすれば、日本が他国から攻撃された場合になぜ日本ではなく米国の若者が命を投げ出さなければならないのかという反発が当然ある。
日本の防衛のために周辺海域を航行する米軍の艦艇が他国から攻撃されるような事態になっても、日本がこれを保護も救援もせず見殺しにするというのは、米側からすれば納得できる話ではないからだ。
日本はロシア、中国、北朝鮮という核保有国に隣り合っている。地政学的にも日本の領土・領海はロシアや中国にとって太平洋に自由に出入りする妨げとなってきた。
21世紀に入って東アジアの軍事バランスが崩れてきたなかで日米同盟が揺らぐことは、他国の軍隊に不要な冒険心を与えかねない。いかに日米同盟の信頼と抑止力を回復させるかは、日米やその友好国にとって喫緊の課題だった。
「戦争法」と叫んだ野党
2016年に施行された平和安全法制は、「専守防衛」の範囲内で日米同盟の抑止力と対処力を最大限まで高めるものだ。
そうした中、自衛隊が外国で戦争をすることなく、専守防衛を堅持しつつ、日米同盟をフルに機能させる方向へ大きな一歩を踏み出したのが平和安全法制だ。現実的な安全保障政策を進める公明党が連立政権にいたからこそできた。(小川教授/同)
平和安全法制の成立をめぐって、当時の民主党や日本共産党は「戦争法」と呼び、「徴兵制が始まる」「自衛隊が地球の裏側まで行って殺し殺される」などと国民の不安を煽りたてた。知識の乏しい若者たちを前に立たせて連日、国会前でデモをさせた。
平和安全法制が共産党の言うような「戦争法」だったのか、そうではなく自衛隊が外国で戦争することなく日本の安全保障の質を格段に高めたものだったのか、今となっては誰の目にも明らかではないだろうか。
平和安全法制の議論が始まった2014年当初、安倍首相の頭のなかにはフルスペックの集団的自衛権があった。しかし、それはこれまで日本が貫いてきた「専守防衛」の枠を越えることになってしまう。
小川教授が指摘したように、専守防衛を堅持したままで日米同盟をフルで機能させる現実的な安全保障が実現したのは、公明党が自民党や内閣法制局と理詰めで議論を組み上げたからだ。
ウクライナ情勢を前に、自民党の一部や日本維新の会などは「核共有」を叫んでいる。しかし、これは核兵器を持たず・作らず・持ち込ませずという「非核三原則」の「持ち込ませず」を否定するものだ。
この「非核三原則」も公明党が国会決議を勝ちとって日本の国是になったもの。
東アジアの軍事バランスを不用意に崩さないためには、岸田首相が日米首脳会談で掲げた防衛費の増額そのものはやむを得ない。6月の読売新聞の世論調査でも国民の半数以上が増額に賛成している。
防衛力を持つことが他国からの攻撃を招くという一部野党の極端な主張は、警察が何の装備も持たず丸腰でいれば凶悪犯罪が起きることはないと言うに等しい無責任な妄想だ。
陸上自衛隊は現在15万人規模だが、日本の長い海岸線から算出された適正人員は25万人となっている。東日本大震災では最大10万7000人の自衛隊員が被災地に派遣されたことを考えると、さらに大規模な南海トラフ巨大地震などへの備えからも一定の拡充は必要だろう。
また、近年は「サイバー空間」「宇宙」「電磁波領域」が新たな防衛課題になっている。
こうした意味で公明党も防衛予算の増額そのものは必要としている。ただ、最初から数値目標ありきで議論をするのは現実的でなく、「何が必要な防衛力なのか検討した上で、必要な予算を積み上げていく」(山口那津男代表)という立場だ。
少子高齢化が進行し国の税収が減少傾向にあるなかで、社会保障費はますます必要になっている。NATOが国防費の対GDP2%を目標にしたのは2014年からの話で、今回のウクライナ侵攻がきっかけではない。またNATOの国防費には退役軍人への恩給なども含まれる。
日本の防衛費を増額するためには、当然その金額をほかの予算から削るしかないわけで、実際に国民の合意がどこまで得られるかは不透明だ。
あくまでも日本国憲法のもと「専守防衛」の範囲内で、なおかつ日米同盟をフルに深化させ、同時に他国との対話外交ができる日本であること。
平和主義の理念を堅持し、なおかつ現実的な安全保障政策を進めるために、どの政党が伸びるのがよいのか。今回の参院選の重要な争点のひとつである。
参院選2022直前チェック(全6回):
第1回 データで検証する各党の公約
第2回 物価高対策を検証する
第3回 コロナ対策、与野党の明暗
第4回 若者の声を聴いているのは誰か
第5回 多様性を認める社会を実現するために
第6回 現実的な公明党の安全保障政策
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