参院選2022直前チェック②――物価高対策を検証する

ライター
松田 明

実態に沿った主張はどちらなのか

 今回の参院選で有権者がもっとも関心を持っているのが「経済対策」すなわち「物価高対策」だ。
 NHKが6月24日から3日間調査したアンケートでは、「参院選で最も重視する政策課題」として43%が「経済対策」を挙げた。
 言うまでもなく、これは2月にはじまったロシアによるウクライナへの軍事侵攻によってもたらされたもの。世界規模で、原油価格や穀物価格が高騰したのだ。1月の時点で、国民の最大の関心事は「新型コロナ」だった。
 選挙の争点の一つとして、たとえばNHKの解説委員室は次のように指摘する。

今の物価高をどうみるか。つまり一連の対策によって日本は、欧米より物価の上昇を抑え込めているという与党と、政権の無策がインフレを引き起こしているという野党のどちらの主張が実態に沿ったものなのか。(NHK「参院選の争点は何か」6月14日/曽我英弘解説委員

発揮された「小さな声を、聴く力」

 自公連立政権が世界的に見ても例外的な長期安定を実現している理由として、一橋大学大学院教授の中北浩爾氏はこう述べている。

自民党は国家全体という「上から」の目線に立ち、公明党は個人の尊重という「下から」の目線を大切にする。違うからこそ、それぞれが別々の役割を果たし、独自性をアピールできる。(『自公政権とは何か――「連立」にみる強さの正体』ちくま新書)

 公明党は数の上では自民党の2割にも満たないが、約3000人の地方議員を全国にくまなく擁し、国会議員も含めてすべての議員がフラットで緊密なネットワークを形成している。
 これは、野党はもちろん自民党も持っていない機能で、公明党は文字どおり地域の「小さな声」を聞き取り、しかもそれを政策に反映させることができる。
 じつは今回のウクライナ危機による物価高騰でも、この機能が活かされた。
 ロシアが軍事侵攻を開始したのは2月24日。3週間後の3月17日に公明党は緊急対策本部を設置し、議員ネットワークをフル活用して全国規模の総点検運動を実施している(「公明ニュース」1月9日)。
 最初の2週間あまりで47の各種団体からヒアリングをおこない、バス事業者やハウス農家、スーパーなどの現場視察、「地域懇談会」などで、約2000件の意見を聴取。事業者や家計の実感や要望を詳細に掌握した。この件数は最終的に4300件超に達している。
 どこで、どのような問題が生じているかを的確に把握したうえ、たとえば生活困窮者を支援するNPO法人などからは食料の無償配布を受ける人の数がどう変化しているかというリアルな実態を聞き取った。
 それをもとに、政府に対して2度の緊急提言を申し入れている(「緊急提言」3月28日「緊急提言 第2弾」4月14日)。
 この提言は、4月26日に政府が決定した「総合緊急対策」に反映されている。

きめ細かい緊急対策を実施

 公明党の提言が反映された政府の対策は、主なものだけでも以下のとおり(総合緊急対策のポイント/「公明ニュース」5月8日)。

①原油高騰対策として、石油元売り会社に支給している補助金を拡充。補助対象はガソリン、灯油、軽油、重油に加え、航空機燃料を追加。

②農林水産業など原油価格高騰の影響が大きい業種への支援を推進。燃油価格が上昇した場合に補塡金を交付するとともに、負担軽減に向けて省エネルギー機器の導入なども後押し。

③輸入小麦から国産米・米粉、国産小麦への切り替え促進。配合飼料の価格高騰対策を強化。

④中小企業の資金繰り支援を強化。資金繰り支援として、「セーフティネット貸付」の金利引き下げ幅を拡大。経営が悪化した企業向けに政府系金融機関が提供する実質無利子・無担保融資と危機対応融資の期限を延長。

⑤児童扶養手当を受給するひとり親世帯と、住民税非課税の子育て世帯(それぞれ直近で収入が減少した世帯も含む)に対し、子ども1人5万円を給付。

⑥「ひとり親家庭等の子どもの食事等支援事業」を、学用品や生活必需品も提供できるよう拡充。緊急小口資金の特例貸し付けなどは申請期限を8月末まで延長。

⑦自治体独自の事業後押し。地域の実情に応じて、きめ細かい支援ができるよう、自治体が独自に活用できる地方創生臨時交付金を拡充し、1兆円の枠を新設。学校給食費や公共料金の負担軽減、農林水産業者や運輸・交通分野などの中小企業の支援といった取り組みを後押し。

⑧新型コロナ対策予備費の使途を原油高・物価高対策にも拡大。

共産党など野党の主張は悪質なデマ

 さらに当初は2022年度予備費だけで乗り切ろうとしていた自民党に対し、ウクライナ情勢の長期化や梅雨時の豪雨災害など不測の事態に備えて十分な補正予算を組むよう、公明党が再三にわたって説得。
 5月31日の参議院本会議で補正予算を可決成立させた。
 たとえば直近のガソリン価格(1リットル換算)は、イギリスで311.2円。フランスで298.2円。ドイツで270.7円。フィンランドで362.2円。韓国で212.3円(「Motor-Fan」/6月24日
 これに対して日本は173・9円に抑えられている。日本は1リットルあたり40円の補助金が出されているからだ。
 もしガソリン価格が諸外国並みに高騰していれば、物流だけでなく、生鮮食品を含むあらゆる商品の価格に影響が出るし、高齢者などの通院にも大きな影響が出ていた。
 あるいは、たとえば大阪市が水道料金(8月~10月検針分)の基本料金を全額免除する独自の方針を発表できたのも、自治体の裁量に任せた地方創生臨時交付金に1兆円の枠を新設したからだ。
 日本の物価高対策は、世界的に見てもきわめてきめ細かく実施され、現実に日本の物価高騰を諸外国より抑え込むことに成功している。
 これに対し、参院選での攻め手を欠く野党各党は「無為無策」などと批判し、耳触りのいい「消費減税」などを主張している。
 しかし、消費税は社会保障費の重要な財源だ(全国間税会総連合会「国の財政と消費税の役割」)。
 日本共産党などは、それらしいグラフを根拠にして「消費税は社会保障の財源ではなく大企業と富裕層への税制優遇の穴埋めをさせられてきた」などと主張する。
 関東学院大学経済学部の島澤諭教授は、こうした主張は「陰謀論」に近いものだと有権者に注意喚起している。

「消費税増税は法人税減税の穴埋めだ」という主張は、法人税減収は国際競争力の確保、消費税増収は社会保障維持のためという異なる文脈から生じた結果をあたかも因果関係があるかの如く仕立て上げた「陰謀論」と言えば言い過ぎになるかもしれませんが、誤解であることは確かです。(「Yahoo!ニュース」6月29日

 彼らがこんな基本的なことを理解できずに「誤解」しているとは思えない。党利党略から、デマと承知で有権者をミスリードさせる情報を流しているのだろう。
 しかも立憲民主党や日本共産党が主張する消費税率引き下げは来年4月からという無責任かつ非現実的なもので、党内からも公然と批判の声が上がっている(参考:「まやかしの〝消費減税〟――無責任きわまる野党の公約」)。

参院選2022直前チェック(全6回):
第1回 データで検証する各党の公約
第2回 物価高対策を検証する
第3回 コロナ対策、与野党の明暗
第4回 若者の声を聴いているのは誰か
第5回 多様性を認める社会を実現するために
第6回 現実的な公明党の安全保障政策

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