国を動かした国会質問
2021年3月8日。参議院予算委員会で「ヤングケアラー」の問題が取り上げられた。
「ヤングケアラー」とは、家族にケアを必要とする人がいる場合に、本来は大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどをおこなっている18歳未満の子どものことだ。
たとえば障害や病気を持った家族の代わりに料理や洗濯などの家事をする。家族に代わって幼い兄弟姉妹の世話や見守りをする。目が離せない家族の見守りをする。日本語を母語としない家族のために通訳をしている。家族の看病、入浴やトイレ、食事の世話をする。
さらには家計を支えるために労働をする。ギャンブルやアルコール依存症を抱えた家族の対応をする。自死念慮や感情のコントロールができないなどの精神疾患を抱えた家族の対応を日常的にしているケースもある。
こうした実態はほとんど把握されず、あるいは「親思いの立派な子ども」という称賛に置き換えられて、かえって子どもに負担を強要してきた。
じつは、国会でヤングケアラーの問題が取り上げられたのは、この日がはじめてだった。
質問に立ったのは公明党参議院議員の伊藤たかえ氏。伊藤議員は、ヤングケアラーの問題を長年研究してきた大阪歯科大学医療保健学部社会福祉士コースの濱島淑恵(はましま・よしえ)准教授から、その深刻な実態を聞きとっていた。
(濱島)先生が行われた大阪府の公立高校5000人への調査では、ケアをしている生徒が約20人に1人、かなりの負担を負うケアをしている生徒は100人に1人とのことです。ケアの頻度は、約33%、3分の1が毎日、週に4、5日している人が約11%。1日のケア時間についても、学校がない日は8時間以上という生徒が11%、学校がある日でも8時間以上という生徒が約5%いました。小学校のときからケアをしている生徒が40%で、長期化する問題ということも読み取れます。家族以外に相談したことがある生徒は半分もいない。進学や就職をせずに長期間の介護を担うことで孤独や孤立が強まり、社会との関わりが薄くなり、社会復帰が難しいケースも少なくないとのことです。
ケアはもちろん決して悪いことではありません。ただ、家族のケアのために毎日を過ごすことに必死で、学校生活を普通に送れず、友達を失い、将来のことも考えられなくなるような過度のケアは、家族思いという言葉で済まされないと思います。(2021年3月8日参議院予算委員会議事録)※漢数字は算用数字で表示した
2022年度予算に盛り込まれる
伊藤たかえ議員はこうした深刻な数字を挙げ、それが構造的に当事者も自覚しづらく、社会にも見えにくくなっている要因を次のように指摘した。
ヤングケアラーのこの問題は、実態把握が困難だと。一つは、家庭内で外から見えないこと。二つ目は、子供のときからの生活環境なので、本人が過度な責任だということに気付かないこと。三つ目は、福祉関係者が、親に関わる福祉関係者がいても、むしろしっかりした子がいると、この子にどれだけやってもらえるだろうかと考えてしまうと。本当に、社会全体でこのヤングケアラーの概念自体の認知度を上げ、正しい理解を広める必要があると思います。
そして、もう一つ、自治体への支援です。現在、地元の神戸市を始め、この取組を進めていこうとしているところがあります。自治体での取組について財政的支援を含めた国による支援が必要と考えますが、厚労省いかがでしょうか。(同)
これに対し、山本博司・厚労副大臣(当時)は、「ヤングケアラーの支援につなげる方策について検討を進めるため、今月中にも私と丹羽文部科学副大臣を共同議長とするプロジェクトチームを立ち上げたい」と答弁。
また菅義偉首相(当時)も、「省庁横断のチームにおいて当事者に寄り添った支援につながるようしっかりと取り組んでいきたい」と答弁した。
その後、政府は2022年度から3年間をヤングケアラー問題の「集中取組期間」に設定し、啓蒙と自治体の取り組みなどを支援する新規事業を創設する関連経費を22年度予算案に盛り込んだ。公明党も全国3000人の議員のネットワークをフル動員して地方自治体での取り組みを推進している。
「子どもが子どもでいられる街に。~みんなでヤングケアラーを支える社会を目指して~」(厚生労働省)
兵庫県は日本の課題の縮図
伊藤たかえ議員は17年間の弁護士生活を経て、前回2016年に初当選した。庶民の街・兵庫県尼崎市の生まれ。関西大学を卒業後、司法試験浪人をしていた1995年に宝塚市内の自宅で阪神淡路大震災に遭う。
自宅も半壊。甚大な被害を前に勉強が手につかない彼女に「こんなときだからこそ合格してほしい」と励ましを贈ったのは地域の被災した人々だった。
この年の司法試験に合格して弁護士の道へ。薬物やDVで苦しむ人、破産寸前の経営者、少年犯罪の当事者など、幾多の人々に寄り添い続けてきた。
弁護士としての彼女を支えたのは「人の底力を信じ、未来の再建に闘う」という信念だ。
その経験と人柄を買われて公明党の候補者となり、24年ぶりに兵庫選挙区の議席を獲得。以来、党の「不妊治療等支援推進プロジェクトチーム」副座長としても尽力。本年4月から不妊治療が保険適用対象となる道を開いた。
また、前述の2021年3月8日の予算委員会では、僻地などの新型コロナワクチンの集団接種会場に看護師を派遣できない制度上の問題点を指摘。国に改善を求めた。
河野太郎・厚労大臣(当時)は、「国の方も、財政をしっかり負担するなど、あるいは自治体への連絡体制を確保するなどしてしっかりとサポートしてまいりたい」と答弁し、これによって全国の接種体制が大幅に改善された。
弁護士時代は法律を駆使して困難にある人々を助けてきたが、国会議員となってからは法律や制度そのものの創設、あるいは不備への対応に走り続けてきた。
コロナ禍で苦しむ中小零細事業者を守るため、持続化給付金や雇用調整助成金の特例措置も推進してきた。
阪神淡路大震災で被災した当事者でもある女性議員として、避難所の授乳スペース確保など自治体の災害対応力向上へ国のガイドライン策定にも尽力した。
日本海に面した県北から、淡路島南端の先には太平洋が広がる。大都会・神戸から山村や小さな離島まで。兵庫県は「日本の縮図」といわれる県。いわば、日本中のすべての課題が見える県でもある。連立与党の公明党からは伊藤たかえ議員と、外交官出身の高橋みつお議員(2019年初当選)が参議院に議席を持っている。
市区町村議員、都道府県会議員、国会議員がフラットに緊密に連携し合う公明党ならではの「チーム3000」を構成するうえで、この兵庫の参議院の議席は重い。本年2期目に挑む伊藤たかえ議員の活躍に期待する声は大きい。
スペシャリストが揃う参議院公明党:
①参議院幹事長・谷合正明議員
②伊藤たかえ議員(兵庫選挙区)
③里見りゅうじ議員(愛知選挙区)
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