予測が外れた選挙結果
都議会議員選挙が終わった。まず特筆すべきことは、マスコミの事前予測が大きく外れたという点だろう。
投票日1週間前の6月27日の時点で、たとえば選挙区ごとの情勢分析をおこなっていた毎日新聞は、
自民は獲得議席が50を超える可能性も出ている。前回選で複数候補を擁立して共倒れした選挙区でも、今回は支持を広げつつある。現有23議席の公明は全員当選を目指すものの、一部選挙区では苦戦している模様だ。(「毎日新聞電子版」6月27日)
と報じている。分析は、毎日新聞とTBSテレビ、社会調査研究センターが共同で実施したものだった。
他のメディアや情勢分析専門家らも、「自民優勢」「公明苦戦」「都ファ激減」という見立てが概ねだったと思う。
NHKはじめ各メディアは、4日の20時に開票がはじまった時点でもなお、公明党に関しては3~7議席は失う可能性があるという厳しい見方をしていた。
結果としては、以下のようになった。
自民 33(25)
都民 31※(45) ※当選翌日に1人除名で30
公明 23(23)
共産 19(18)
立憲 15(8)
ネット 1(1)
維新 1(1)
れいわ 0(0)
国民 0(0)
嵐の党 0(0)
無・他 4(5)
(カッコ内は改選前議席)
じつは共産党は増えていない
まず、自民党はかろうじて第1党に返り咲いたが、各選挙区で共倒れなどが目立ち伸び悩んだ。
都民ファーストの会は最悪1ケタ台に激減という予測さえあったものの、各メディアの報道を覆して第2党に踏みとどまった。これは、顧問を務める小池都知事の入院への同情票と、その都知事が最終日に都ファの応援に動いたことが大きい。
しかし、当選した議員の1人が投票日直前の7月2日に無免許運転で事故を起こしていたことを、投票日翌日になって公表し除名処分。離党者が相次いできた党の資質にさらなる懸念が深まった。
公明党は、山口那津男代表自身が「まさに奇跡的とも思える結果だ。次のステップボードになる」(日本経済新聞)と述べるほど、どのメディアも予想しなかった完勝を飾った。
驚くことは、この全候補者の完勝が1993年から連続8回という点だ。そのあいだ、国政で3度も政権交代が起きたことを考えると、やはり勝つべくして勝ってきたといえるだろう。
共産党は1議席増に見えるが、実際はそうではない。前回2017年の選挙で共産党は19議席を得ていた。ところが、同年11月に共産党都議の長男が強制わいせつ容疑で逮捕され、当該議員が辞職していたのだ。
したがって、共産党は「現有18議席からの上積みも視野に入っている」(毎日新聞)などの事前予測ほど伸びず、実質的に前回の議席を維持したにとどまった。31人の候補者のうち12人が落選している。
立憲民主党は、数字上は倍増に見えるが終盤に失速した。無投票当選した1人を除く27候補者のうち4割が、最後の1週間で圏外へと落ちた。
自民党に逆風が吹いたなか、国政では野党第1党でありながら、同党のウィークポイントである〝地方議員の存在感の弱さ〟が露呈したといえる。
共産党への依存深まる立憲
しかも、この立憲の15議席は共産党の支援なくしては実現しないものだった。
今回の都議選で、立憲民主党と日本共産党は一部の選挙区で競合しないよう調整し、事実上の選挙協力を実施。選挙期間中の動員も含め、出口調査でも共産党支持層の票が立憲の候補を支えた実態が明らかになっている。
立憲民主党の安住淳国対委員長は5日、国会内で記者団に、同党が15議席を獲得した東京都議選では共産党との候補者一本化が奏功したとの認識を示した。一方、国民民主党の候補4人が全員落選したことを踏まえ「リアルパワーは何なのかを冷静に見なければ」と指摘し、共産との協力を強く否定してきた国民や連合東京に苦言を呈した。(『産経新聞』電子版 7月5日)
口では「共産党との連立政権」を否定しながら、立憲民主党の国対委員長が日本共産党を連合より頼りがいのある〝リアルパワー〟と称賛する。
日本共産党の協力があってこそ15議席となったことを、立憲の執行部が誇らしげに語っているのだ。
説得力となった「実績」
コロナ禍と悪天候で各党とも運動量が減り、投票率も大きく下がったなか、どのメディアも「議席減」と見ていた公明党がなぜ完勝できたのか。しかも、10選挙区では公明党がトップ当選している。
支持者の献身的な支援と同時に、やはり決定打となったのは圧倒的な「実績」だろう。
各党の選挙公約の分析をおこなっていたNPO法人日本公共利益研究所代表の西村健氏は、
実績を見れば、公明党の役割は果たせていたし、今後も果たせるだろう。大衆とともに都政を進められるのは都議会公明党くらい。都議会公明党の公約推進に期待したい。(「Japan In depth」都議選公約分析その3「公明党」『大衆とともに』の精神(6月30日))
と率直な見解を記していた。
都議会のすべての会派のなかで、国会・都議会・区市町村議会にネットワークをもち、与党として政策実現力、他党との合意形成能力をもっているのは公明党だけだ。
長引くコロナ禍のなかで、どの党が人々の声に寄り添って政策を実現してきたのか、有権者は肌感覚で理解している。他方で、実績もないまま批判だけを繰り返して社会を分断し、予算に反対しながら虚構の〝実績〟を並べ立てた政党もあった。
今回、どの政党も単独過半数はとれず、自公での過半数にも達していない。小池都知事は5日、公明党本部に山口那津男代表を訪ね、引き続き安定した都政運営に向けて与党・公明党の協力を要請した。
これに対し山口代表は「これまでと同様、合意形成を図るため、連携できるところは連携する姿勢だ」と応じました。
また、両氏は、東京都で新型コロナウイルスの感染状況が再び悪化していることを踏まえ、収束に向けて連携して取り組んでいくことを確認しました。(「NHK NEWS WEB」7月5日)
秋には衆議院選挙がおこなわれる。日本共産党との連携をいよいよ深めざるを得なくなった立憲民主党。表向きは「非共産政権」に見せかけながら、委員長ポストで共産党と国会内で〝連立〟するという戦術が公然とささやかれている。
コロナの終息と社会経済の立て直しには長い道のりが必要だ。ポピュリズムに流されることなく、合意形成できる政治の実現へ賢明な有権者でありたい。
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