都議会公明党のコロナ対応——ネットワーク政党の強み

ライター
松田 明

国家に匹敵する財政規模

 1月29日、 東京都の令和3年(2021年)度予算案が示された。一般会計歳出の当初予算は7兆4250億円。2月18日には、令和2年度補正予算案1255億円と令和3年度補正予算案1401億円も示され、新年度の一般会計は7兆5651億円になった。
 これに特別会計や公営企業会計を加えた総額は15兆2995億円で、この財政規模はノルウェーやインドネシアの国家予算に匹敵する。その舵取りは容易ではない。
 昨年7月の都知事選挙に圧勝して2期目をスタートさせた小池百合子知事。コロナ禍が2年目に突入したなかで、感染拡大の抑制、首都の経済と都民の暮らしの下支え、開催が予定されているオリンピック・パラリンピックと、都政の運営にはいくつもの重大な課題がつきまとう。
 東京都のような地方自治体は、議会(議員)と首長のそれぞれが選挙で有権者から選ばれる「二元代表制」である。
 都議会の主要な勢力構成(2月17日現在)は、以下の通り。

都民ファーストの会  46
都議会自由民主党   26
都議会公明党     23
共産党議員団     18
都議会立憲民主党    5

 小池都知事が特別顧問を務める都民ファーストの会が第1党だが、政治経験に乏しいうえ、あくまで地域政党であり、2月にも離党者が出るなど必ずしも順風ではない。
 また、周知のように小池知事は都議会自民党や政府との対決姿勢を求心力としてきた。

反映された40回の緊急提言

 その意味で、小池知事にとって一定の緊張関係を持ちながらも、常に頼りになってきたのは都議会公明党なのだ。
 公明党は国政でも政権与党である一方、東京都下の区市町村はもちろん全国に3000人近い議員のネットワークを持っている。
 暮らしの現場のさまざまな声を聴くにしても、政府と連携するにしても、施策を実施するにしても、知事は実質的に都議会公明党と連携しながら都政運営を続けてきたといえる。
 かつて東京都の副知事も務めた明治大学名誉教授の青山佾(やすし)氏は、公明党議員が日常的に地域に密着して市民生活や中小事業者の実情に詳しいと指摘し、

都議会公明党は、例えば、昨年4月の緊急事態宣言発令に伴い、都知事に対する緊急提言として、休業要請の対象業種に十分な協力金を支給することや、給食停止の影響を受けている納入業者、生産者への支援策を講じることを求めるなど、具体的な提言を先駆的かつ多面的に行ってきました。(「公明新聞ニュース」2月21日付

と率直な評価を寄せている。
 実際、都議会公明党が新型コロナウイルス感染症対策としてこの1年余に出した緊急提言は40回、332項目にのぼる。
 これらの提言を踏まえて、令和2年度補正予算案、令和3年度当初予算案、同補正予算案には、いくつもの具体的な施策が盛り込まれた。

医療を守る具体策

 まず医療体制等では、都議会公明党は昨年5月の段階から「専用病院の開設」を主張。都は東海大付属東京病院(渋谷区)と旧都立府中療育センター(府中市)を専用病院として運用してきたほか、都立広尾病院(渋谷区)、公社豊島病院(板橋区)、公社荏原病院(大田区)もほぼコロナ患者に特化させ、新たに600人程度の受け入れ数を増やした。
 軽症や無症状患者については、都内で6000室余りのホテルを都が借り上げている。
 ただし、なかにはこうした軽症や無症状患者の容体が急速に重篤化するケースもある。昨年4月3日、最前線の医師から血中の酸素濃度で重症化の兆候をつかむパルスオキシメーターの導入を求める声が公明党に寄せられた。
 医師でもある秋野公造参議院議員らが公明党の稲津久厚労副大臣(当時)や専門医と連携して即座に政府に要請。声が届いた4日後の4月7日には、厚労省がパルスオキシメーター活用の方針を発表した。
 現在では全国の自治体にこの活用が広がっている。都議会公明党の要望を受け、東京都では自宅療養者にも貸し出しがはじまっている。
 医療の最前線に立つ医療従事者への都の特殊勤務手当は、当初3000円(日額)を20年4月~6月のみ支給するものだった。
 これも都議会公明党の主張で、感染拡大がはじまった1月下旬時点までさかのぼり、本年3月末まで延長支給されることが決まった。このたびの補正予算案では5000円(日額)に増額したうえで支給期間を本年6月まで延長することが盛り込まれている。
 クラスターが発生しやすく重症化のリスクが高い高齢者・障がい者施設のために、利用者や職員へのPCR検査も、6月末までに実施される検査への補助が盛り込まれた。

東京都から国を動かす

 暮らしと地域経済を支える取り組みとしては、最大30%のプレミアム率の商品券を区市町村が発行する際、都が支援する事業が決定。都議会公明党が小池都知事に強く要請してきたものだ。
 当初はデジタルのみの発行が予定されていたが、高齢者などデジタルでは使えない都民もいる。2月24日の定例本会議で公明党は紙とデジタルの両方を支援するよう要望。小池都知事はこれを了承した。
 また、不安の多いコロナ禍での出産支援として、本年1月から2023年3月末までに子供が生まれた家庭に、子供1人あたり10万円分の育児用品やサービスを提供する事業も盛り込まれた。
 これも本来は本年4月1日以降の出生となっていたが、都議会公明党の主張で1月1日に前倒しとなり、200以上の品目から選択できるきめ細かいものに充実する。
 時短営業をおこなう飲食店への協力金については、都議会と国会の公明党議員が連携して、自治体への臨時交付金の増額を政府に要求してきた。それが政府の第3次補正予算に反映されたことで、1月8日の緊急事態宣言再発令以降に全面協力した飲食店には1店舗6万円(日額)の協力金を都が支給する。
 1955年の統一地方選挙ではじめて公明系議員が議席を得た東京都議会は、公明党にとって〝原点〟の場所である。
 公明党が国政で野党だった時代に、都議会公明党が東京都に働きかけて国に先駆けて施策を実現させ、それがあとから国を動かした事例も多い。
 主なものには「児童手当」「駅や都営住宅、バスのバリアフリー化」「がん対策(拠点病院等の拡充)」「ハイパーレスキュー隊の創設」「中小企業への融資制度」「新公会計制度(財政の見える化)」などがある。
 暮らしの最前線の声を拾う市区町村会議員と都道府県会議員、国会議員までがネットワークとして機能する唯一の政党が公明党だ。都議会公明党には、今後もさらに東京から国を動かしていってもらいたい。

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