前原氏らが維新と接近
旧民進党から〝ケンカ別れ〟した立憲民主党と国民民主党。
昨年(2019年)、再結集をめざしたものの主導権争いで迷走。政党合併の話はついにまとまらず「共同会派」という名目で落ち着いた。
立憲民主と国民民主、衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」(社保)、社会民主の4党派による衆院の新会派「立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム」(略称は「立国社」)である。
ところが今年の3月以降、コロナ関連で大阪府知事のメディア露出が増えると、日本維新の会の支持率が増加。「立国社」の各党は相変わらずの低迷が続いた。
そもそも2009年に当時の民主党が政権を取ったあと、彼らはいったい何度、別れたりくっついたりを繰り返してきただろう。
常に付きまとってきたのは、仲間内で互いを蹴り合い、合意形成ができない未熟さと、「風頼み」の選挙しかできないがゆえに、風の吹きそうなところに駆け込む体質である。
そして、またもやそうした不穏な気配が漂いはじめた。
6月4日、旧民進党代表で今は国民民主党に所属する前原誠司氏が、日本維新の会の片山虎之助・共同代表らと「勉強会」を立ち上げることが報道された。
両党所属議員を中心に、無所属で野党共同会派の松原仁元国家公安委員長も参加。前原氏には立憲民主党主導の野党結集をけん制するとともに、維新との連携を模索する狙いがありそうだ。
勉強会は「新しい国のかたちを考える協議会」(仮称)。代表世話人に前原、松原両氏と維新の馬場伸幸幹事長、顧問に片山氏が名を連ねる。世話人には国民の岸本周平選対委員長や増子輝彦参院議員が就く予定で、いずれも立憲との合流に慎重とされる。(「時事ドットコム」6月4日)
要因は共産党との接近
これに対し早速、国民民主党や立憲民主党のなかからは非難の声があがっている。
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前原氏は共産党との関係を深める立民との合流に否定的で、維新幹部は「立民の体質になじめない保守政治家の受け皿を作りたい」と話す。国民からは岸本周平選対委員長や馬淵澄夫元国土交通相、増子輝彦参院議員が、無所属では松原仁元拉致問題担当相らが参加する見込みだ。
こうした動きに国民幹部は警戒を強める。国民の平野博文幹事長は勉強会設立の趣旨を説明に来た前原氏に対し、岸本氏が役員で入った場合は選対委員長を外すと警告した。
(中略)
事実上の立民外しとも受け取れる動きに、立民中堅は「勉強会に行きたければ行けばいい。白黒がはっきりする」と強がった。(「産経ニュース」6月5日)
そもそも、旧民進党が瓦解した原因も、支持率低迷に焦った執行部が共産党との接近を図ったことだった。
保守系の議員にすれば、仮にも〝政権交代〟を訴える党が、「野党連合政権」などと口にする共産党と選挙協力をすることは耐えられない。
今回も、保守系議員の多い国民民主党内には、共産党との連携を深め、すっかりイデオロギー政党化した感さえある立憲民主党と共同歩調をとることへの、嫌悪感と危機感が見え隠れする。
わずか2日前の6月2日には、旧民主党で幹事長代行などを歴任した馬淵澄夫・衆議院議員(比例近畿ブロック選出/無所属)が、立憲民主党ではなく国民民主党への入党を表明。
先述の産経新聞記事は、この馬淵氏も「勉強会」に加わる見込みと記している。馬淵氏は維新との連携を織り込み済みで、国民民主党入りしたのだろう。
都知事選でも不協和音
野党のギクシャクした関係は、東京都知事選挙をめぐっても表面化しはじめている。
立憲民主党は、党独自の候補擁立を断念し、すでに立候補を表明している宇都宮健児氏の支援に回ると報道された。
立憲都連は4日に常任幹事会を開き、独自候補の擁立見送りと無所属で立つ宇都宮氏の支援を決める予定。都連幹事長の手塚仁雄衆院議員は2日、枝野幸男代表らと会談し、こうした方針を確認した。(「朝日新聞デジタル」6月4日)
一方、その前日に役員会を開いた国民民主党は、党として宇都宮氏を支援しないことを決定。
宇都宮氏は6月5日のツイートで、立憲民主党、日本共産党、社民党、新社会党、緑の党からの支援が決定したことを公表したが、れいわ新選組は沈黙を守っている。
れいわ新選組については、『社会新報』の編集長が次のようなツイートをしている。
「山本太郎」は、れいわ新選組本部職員への不当解雇をやめなさい! あんたら選挙で言ったことと、内側でやっていることがあまりにも違うじゃないか。弱い者いじめはやめなさい!(田中稔氏のツイート/6月5日)
野党第一党でありながら、支持率で日本維新の会に逆転された立憲民主党には、目を覆うような不祥事も絶えない。
緊急事態宣言発令直後に歌舞伎町の性風俗店で2時間あまり遊興した高井崇志衆議院議員が、党からの除名によって離党したばかり。
今度は、3期目を務めていた井上将勝・埼玉県議が、週刊誌に「不倫」を報道されて辞職した。
報道陣に囲まれた井上氏は、「妻を裏切った人間が、議員である資格はない。皆さんの信頼を裏切り、期待に沿えず申し訳ない」と身を固くして陳謝した。
井上氏については選挙区内に居住実態がないのではという指摘もあり、所属する会派「埼玉民主フォーラム」が調査していたが、井上氏はその疑惑は否定し「辞職と関係ない」とした。(「TOKYO WEB」5月29日)
この記事にもあるように、当初、井上氏に浮上したのは、選挙区であるさいたま市見沼区に居住実態がなく、東京都世田谷区内のタワーマンションに住んでいるのではないかという疑惑だった。
さらに、その所有するタワーマンションを資産報告書に記載していないことを、市民団体から指摘された。
井上氏は「ローン契約の当事者は自分だが、妻が頭金を出して契約したので、物件の所有は妻だと錯誤していた」と説明した。(「産経ニュース」5月7日)
この人物は、初当選直後にも旧民主党見沼区支部事務所として、使用実態がないにもかかわらず家賃を政務活動費に計上していたことが発覚している。
支持率の低迷、所属議員の不祥事、そして今また「共同会派」内部からの不穏な動きと、立憲民主党には求心力どころか不安材料が重なっていく。
さて、またもや野党の四分五裂が近づいているのだろうか。
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