下げ止まった内閣支持率
野党第一党である立憲民主党が、危機的状況にある。
安倍首相が緊急事態宣言の全国への拡大と、一律10万円給付を発表したことを受け、4月18~19日、朝日新聞と毎日新聞がそれぞれ世論調査を実施した。
内閣への支持と不支持は、朝日新聞が
支持する 41%(41)
支持しない 41%(38)
(「朝日新聞世論調査」) ※カッコ内は前月
毎日新聞が、
支持する 41%(43)
支持しない 42%(38)
(「毎日新聞世論調査」) ※カッコ内は前月
で、支持率が下げ止まり、支持と不支持が拮抗するかたちとなった。所得制限を設けず一律の現金給付にしたことが、やはり国民の理解を得たようだ。
ただし、安倍首相のリーダーシップについては、与党でも公明党の支持層からは厳しい評価が示された。
首相の指導力については、与党支持者の中で評価が割れた。自民支持層は「発揮していない」35%、「発揮している」56%に対し、公明支持層は「発揮していない」60%、「発揮している」29%となった。無党派層は「発揮していない」65%、「発揮している」23%だった。(『朝日新聞』4月20日)
与党との連携をおろそかにし、官邸主導で危機対応を進めてきた安倍首相は、姿勢を改めざるを得ないだろう。
支持率下げた立民と共産
さて、衝撃的だったのは野党への評価である。
各政党の支持率では、朝日新聞が、
自民党 33%(36)
立憲民主党 5%(6)
国民民主党 1%(1)
公明党 5%(3)
共産党 2%(3)
日本維新の会 3%(1)
社民党 1%(0)
希望の党 0%(0)
NHKから国民を守る党 0%(0)
れいわ新選組 1%(1)
その他の政党 0%(0)
支持する政党はない 43%(40)
答えない・分からない 6%(9)
(「朝日新聞世論調査」) ※カッコ内は前月
毎日新聞が、
自民党 29%(33)
立憲民主党 5%(9)
国民民主党 1%(1)
公明党 5%(4)
共産党 2%(4)
日本維新の会 6%(4)
社民党 1%(0)
れいわ新選組 1%(1)
NHKから国民を守る党 1%(1)
その他の政治団体 1%(1)
支持する政党はない 43%(40)
(「毎日新聞世論調査」) ※カッコ内は前月
となった。
いずれの調査でも自民党が支持率を下げているにもかかわらず、立憲民主党と共産党の支持率が下落。
与党では公明党が、野党では日本維新の会だけが支持率を伸ばした。
昨年の夏以降、支持率が下落傾向にあった日本維新の会だが、同党に所属する大阪府知事や大阪市長のテレビ露出が増えはじめた今年の3月以降、支持率が上昇に転じている。
一方、政権批判を過熱させていた他の野党には支持が移らないどころか、批判の急先鋒だった立憲民主党と共産党が、共に有権者の支持を失っているのだ。
未曽有の危機にあって、国民は政府と自民党に厳しい目を向けながらも、政権批判を繰り返すだけの野党にはまったく期待をしていないことが分かる。
共産党へのラブコール
2020年1月、第28回党大会を開いた共産党の志位委員長は、
来たるべき総選挙にむけ、市民と野党の共闘をさらに大きく発展させ、日本共産党の躍進を必ずかちとり、戦後最悪の反動政権・安倍政権を一刻も早く倒し、野党連合政権への道を開こうではありませんか。(『しんぶん赤旗』1月19日)
と、いつものごとく勇ましい号令をかけた。
また、来賓として参加した立憲民主党の安住国対委員長も、選挙協力によって自分たちと共産党の距離はグンと縮まったと述べ、
今後お互いの距離をさらに縮めていき、国会運営や国政選挙で一体感のある協力をしていきましょう。そうすれば、自然とその先に政権が見えてきます。(『しんぶん赤旗』1月15日)
と、立憲民主党と共産党による「政権」樹立まで口にして、熱いラブコールを贈った。
結党した瞬間だけは国民の期待を集めた立憲民主党だったが、結局かつての民主党政権の主要メンバーが再び勢ぞろい。
しかし、めざすべき政権の枠組みも政策も示せないまま、野党内での主導権争いとエキセントリックな政権批判のみに終始してきた。
新型コロナウイルスの感染が広がっても、野党第一党らしい政策もまとめあげられず、3月18日には旧民進党の政調会長まで務めていた山尾志桜里衆議院議員が離党した。
危機感を抱いた若手議員らは翌19日に、野党の超党派70人ほどで独自の「経済対策案」をまとめ、立憲民主党の枝野代表や国民民主党の玉木代表に提出したのだった。
「政策の議論が進んでいない」
だがその後、立憲は独自策をまとめるに至らず与野党の中で埋没。先の対策案を無視された形の立憲議員らは今月1日、改めて消費税減税や国民1人当たり10万円の現金給付を含む提言を枝野氏らに提出、再考を求めた。(「時事ドットコムニュース」4月6日)
同じ時期、与党では公明党が次々に具体的な施策を衆参それぞれの委員会等で政府に要望していた(参考:前掲記事「新型コロナウイルス特集⑤――本領を発揮する公明党」)。
3月31日には「一律10万円の現金給付」などを盛り込んだ、事業継続や雇用維持のための施策、生活支援、景気浮揚策などを柱とする公明党としての提言を政府に提出した。
4月1日になって立憲民主党の若手議員ら43人が連名で、枝野代表ら執行部に、
国民1人当たり10万円の現金給付を含む提言を枝野氏らに提出、再考を求めた(前出)
のは、この時点でなお立憲民主党の執行部が「一律10万円」の現金給付などを含んだ具体的な政策を定めきれていなかったからだ。
提言書には、国民1人当たり10万円以上の給付や債務の支払い猶予も盛り込んだ。賛同者の一人、高井崇志衆院議員は提出後、記者団に「各党がいろいろな政策を発表しているが、立民として柱となる政策の議論が進んでいない。野党第一党がスタンスを決めないといけない」と語った。(『産経新聞』4月1日)
「オレは国会議員だぞ!」
この執行部への突き上げの中心的存在として、記者団に公然と「立民として柱となる政策の議論が進んでいない」と不満を述べた高井崇志議員。
安倍首相が7都府県に最初の緊急事態宣言を出した2日後の4月9日、宣言を出しても国民の在宅勤務が進んでいないことを批判。自身のツイッターでこう訴えた。
ロックダウンの必要性を訴えています。
緊急事態宣言出しても相変わらずの満員電車の我が国では、そうせざるを得ないのかもしれません。とにかく満員電車をなくす政策(テレワークの徹底)を最優先すべきで、「夜の外出自粛」では済まないと思います。(高井議員のツイート/4月9日午前9:26)
この同じ日の夜、当の高井議員は外出を自粛するどころか歌舞伎町の性風俗店を訪れ、2時間にわたって遊興していたのである。
高井議員はその週刊誌報道を認めて謝罪。立憲民主党は同議員を除名した。
また、同じく立憲民主党の石川大我参議院議員が、3月20日の深夜(21日午前2時ごろ)に新宿2丁目の路上で、複数の警察官と約1時間も騒動を起こしていたことも報道されている。
警察から何度も名前を尋ねられた石川さんは最初は拒んでいたものの、最後は『オレは国会議員だぞ! ビビっただろう』との“決めゼリフ”まで…。酒に酔っていたんでしょうが、何をしたかったんですかね(「BIGLOBEニュース」4月14日)
少なからぬ有権者から政権交代への期待さえ託され、野党第一党の議席を与えられた立憲民主党。
だが、〝第2共産党〟とささやかれるように「反安倍」路線を先鋭化させるのみ。党内から造反が起きるほど政策ビジョンを示せず、ガバナンスも緩み切っている。
もともと、民進党のケンカ別れから急ごしらえした政党だったわけだが、沈み始めた船からは遠からず、また離反者が続出するのではないか。
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