他の政党にはない能力
公明党が「災害対策」に見せる能力について、地方自治体の首長らからも率直な評価や称賛を受けてきたことを以前に紹介した(前掲記事「『災害対策』に強い公明党――自治体首長らの率直な評価」)。
近年でも2016年に2度の震度7を経験した熊本県の蒲島郁夫知事は、
熊本地震のときに、もしも自民党の単独政権だったとしたら、私は〝自分のことは自分でやれ〟という新自由主義的な対応に傾く恐れがあったと思っています。公明党は伝統的に福祉や平和、弱者への配慮など、社民主義的な要素を持っておられます。熊本地震で熊本県は、負担の最小化と被災地への最大限の配慮、そして創造的復興という哲学を求めました。それらを政府に認めてもらえたのは、ほかでもなく公明党が政権内にいたからでしょう。(『第三文明』2019年8月号)
と語っている。
蒲島知事が指摘するように、まず公明党には「福祉や平和、弱者への配慮」という哲学がある。
加えて、公明党は3000人近い地方議員を擁し、地域の隅々にまで根を張って人々の声を吸い上げている。
派閥ごとの分断や親分子分のような関係で縛られる自民党と違い、国会議員と地方議員が水平にネットワークを形成しているのだ。
さらに、ともすれば支持層を意識した〝対決姿勢〟に走る野党とも違い、他党や行政との合意形成能力が高い。
こうした点で、公明党は他のどの政党にもない能力を示してきた。国会では少数会派に見える公明党が、20年も連立政権を担えている理由である。
専門家会議を設置させる
新型コロナウイルス感染拡大という、今回の地球規模の〝大災害〟にあっても、公明党は早い段階から対策を打ち続けてきた。
まず2月14日には、専門家会議の設置を政府に要望。
公明党は14日、新型コロナウイルス感染症対策本部の会合を衆院議員会館で開いた。本部長を務める斉藤鉄夫幹事長は、安倍晋三首相か加藤勝信厚生労働相の下に専門家会議を設置し、現状分析や対策を取りまとめるよう政府に要望。また、首相らが記者会見を通じて注意点やマスクの供給状況など、国民への情報の提供に努めるよう求めた。(「時事ドットコム」2月14日)
2月26日には、真っ先にダメージを被った旅行・ホテル業者から実情を聞き取った。
公明党は26日、新型コロナウイルス感染症対策本部の会合を国会内で開き、日本旅行業協会や日本ホテル協会などから損害の現状を聞き取った。雇用調整助成金の支給対象を中国からの訪日客の減少だけでなく、国内客のキャンセルで損失を受けた業者にも広げるよう要望を受けた。来週にも政府に渡す経済対策の提言に反映する方針だ。(『日本経済新聞』2月26日)
2月27日の党中央幹事会では、山口那津男代表が、確定申告などで税務署が混雑する時期であることを考慮し、確定申告の期限延長を政府と協議していることを発表。
公明・山口代表が「確定申告の期限延期」を政府に要請 新型肺炎拡大防止のため(「SankeiBiz」2月27日)
弱い立場への施策に動く
中小企業など各種団体からのヒアリングは、2月26日から3月3日までの1週間だけで計4回を実施。
3月3日は、一斉休校の要請で給食関連の事業者に困難が生じることについて、政府への提言に対応を盛り込むべく関連団体から聞き取りをした。
公明党は3日、新型コロナウイルス感染症対策本部の会合を国会内で開いた。政府が全国の小中高校に休校を要請した影響で、学校給食で使う食材が余っている問題などについて関連団体から意見を聞いた。
全国農業協同組合中央会(JA全中)は牛乳の市場価格を安定させる措置を政府に求めた。日本給食サービス協会は全国の給食センターで働く人の収入を補填する助成金制度を創設するよう要望した。公明党は4日にも政府に渡す経済対策の提言に盛り込む方針だ。(『日本経済新聞』3月3日)
4日、首相官邸へ申し入れた提言には、農産物の損失補填のほか、雇用保険に入っていないフリーランスも含める休業補償を盛り込んだ。
また、中小企業などの資金繰りが悪化することから、政府系金融機関に対して無利子・無担保融資や返済猶予・金利減免に取り組むよう要請した。
休業補償「フリーランスにも」 公明、政府に経済対策提言(『毎日新聞』3月4日)
20年度予算の締めくくり質疑を迎えた3月27日の参議院予算委員会では、公認会計士でもある竹谷とし子議員が政府に質問。
密閉・密集・密接の「3密」を避けるため、インターネットを使った税務相談を提案。また、企業がフードバンクを通じて子ども食堂や生活困窮者に食品を寄贈していることを紹介。
この寄贈に伴う納税の必要が生じないよう「全額損金算入を認めるべきだ」と訴えた。国税庁は「災害時と同様に全額損金算入できる」と応じた。(「公明ニュース」3月28日)
子育て世帯に1万円増額
4月に入り、現金給付が限られた世帯に30万円との政府方針が固まると、子育て世帯では中間所得層にも負担が高まっているとして、6月の児童手当に1人当たり1万円上乗せするよう要望。
公明、児童手当1人1万円増額を要請(『産経新聞』4月3日)
これも政府の「緊急経済対策」に盛り込まれた。
さらに4月3日、医療崩壊を防ぐため厚労省の稲津久・副大臣(公明党)に対して、
○初診も含めた遠隔診療の保険適用
○「医師による遠隔健康相談事業」継続
○感染疑いの人の健康相談から受診勧奨まで行う「発熱外来」設置
○簡易抗原・抗体検査への保険適用
○「細菌性」「免疫反応」併発も考慮した重症肺炎の治療方針策定
○国産の治療薬やワクチンの開発加速化
○軽症者・無症状者を受け入れる専用施設確保
(「公明ニュース」4月4日)
等の提言を申し入れ。
厚労省は初診も含めた遠隔診療の保険適用を即座に認めると回答。その他についても前向きな検討が始まった。
重症化を見逃さない
6日には、借り上げたホテルなどで療養する軽症者や無症状感染者の重症化の兆候を見逃さないため、血中酸素飽和濃度を測る「パルスオキシメーター」の導入を政府に要望。
これは、医師免許を持つ秋野公造参院議員の提案を、山口代表が政府に訴えたものだ。
政府は、新型コロナウイルス感染症の軽症者や無症状患者が療養する専用施設で、重症化の兆しを早期に発見するため血中酸素飽和濃度を測る「パルスオキシメーター」を活用する方針を固めた。患者が重症化する前に医療機関に搬送することで、救命率の向上を図りたい考えだ。複数の関係者が8日、明らかにした。
パルスオキシメーターは、検知器を指先や耳たぶなどにつけ、酸素が血中に溶け込んでいる濃度を皮膚の上から測る装置。公明党が政府に積極的な活用を求めていた。(『産経新聞』4月8日)
ワイドショーなどは、とかく不安や対立など派手な出来事に報道のフォーカスを当てがちだ。
連立与党の公明党が矢継ぎ早に、こうした具体的な課題の解消に本領を発揮していることを注視していきたい。
新型コロナウイルス特集:
新型コロナウイルス特集①――「日本型対策」の成果は?
新型コロナウイルス特集②――〝陰謀論〟を語る人々
新型コロナウイルス特集③――公明党の対応が光る
新型コロナウイルス特集④――「緊急事態宣言」が発令
新型コロナウイルス特集⑤――本領を発揮する公明党
新型コロナウイルス特集⑥――一律10万円の現金給付へ
関連記事:
危機における政党の真価――シビアな判断下した国民
新型コロナウイルスに賢明な対応を――感染研が抗議したデマの出所
『年金不安の正体』を読む――扇動した政治家たちの罪