危機における政党の真価――シビアな判断下した国民

ライター
松田 明

急落した立憲の支持率

 共同通信社が3月14日~16日に全国電話世論調査を実施した。
 安倍内閣の支持率は49・7%と、2月の調査から8・7ポイント上昇。不支持率は8ポイント減って38・1%となった。
 新型コロナウイルスへの政府の対応については、「評価する」が48・3%。
 小中高等学校への休校要請については、「適切」「どちらかといえば適切」が合わせて71・8%となった。
 一方、時事通信社が3月6日~9日に個別面接方式で実施した調査では、各政党支持率が以下のようになった。カッコ内は前月との比較。

 自民党   24・0%(-0・3)
 立憲民主党  3・5%(-2・1)
 公明党    3・5%(+0・7)
 共産党    1・6%(±0)
 日本維新の会 1・3%(±0)
 れいわ新選組 0・7%(-0・2)
 社民党    0・5%(+0・3)
 国民民主党  0・4%(-0・1)
 N国党    0・1%(-0・1)
 支持なし  62・4%(+1・8)
(「時事通信」世論調査3月13日)


 新型コロナウイルスの感染拡大が南極大陸を除くすべての大陸に広がり、事実上の国境封鎖をおこなう国が相次ぐなど、予断を許さない状況に進んでいる。
 こうした状況のなかで、どの政党が有益な仕事をしているのか、国民は意外と冷静によく見ているのではないか。
 前述の時事通信社の調査では、「桜を見る会」について安倍首相が説明責任を果たしていると思うかとの問いに、78・2%が「果たしていない」と厳しい評価を下しながらも、今後もこの問題を国会で取り上げる必要があるかについては、「必要はない」が59・8%とほぼ6割を占め、「必要がある」は22・6%にとどまった。

チャーター機が到着する中で

 日本国内で新型コロナウイルスの感染者が確認されたのが1月16日。
 1月29日の朝9時には、武漢から在留邦人を救出する政府の最初のチャーター機が、羽田空港に到着した。
 同時刻に始まった参院予算委員会では、この新型コロナウイルスの対策に充てるべく、予算審議がされて当然だった。
 だが、質問に立った立憲民主党の石垣のり子議員は、

 この政権の堕落の象徴ともいえる「桜を見る会」について主に質疑をさせていただきます。(「参議院予算委員会」1月29日)

と、「桜」に終始。
 自民党の世耕弘成・参議院幹事長は、

今、参議院内の幹事長室で予算委員会を見ています。野党の質問が始まって40分経過しましたが、
先刻武漢からの飛行機が到着し、目の前に総理や厚労大臣等、新型コロナウイルス感染症に対応している責任者が列席している。
このシチュエーションで感染症について質問をしない感覚に驚いています。(1月29日のツイート)

とツイートしている。
 立憲民主党の枝野幸男代表は約1ヵ月後の2月26日になって、

野党としても協力は惜しまない。政府としてもフェーズを変えて対応していただきたい。(「衆議院予算委員会」2月26日)

と表明。政府の対応について、「後手に回った」と非難した。
 枝野氏に次いで質問に立った国民民主党の玉木雄一郎代表も、

 国家として危機を収束しようという統一的な強い意志がみえてこない。(同)

と安倍首相の「指導力」を批判した。

予算委員会を欠席

 この翌日の2月27日、日本共産党の志位和夫委員長は自身のツイッターでこう記した。

各国の新型コロナ対策予算
米国・2800億円
シンガポール・5000億円
香港・4300億円
日本・153億円(予備費等)、来年度予算はゼロ!
国民には「お願い」するが、国が予算をつけないでは医療体制の強化は絵に描いた餅になる。
野党として来年度予算案組み替え案を提起してたたかいます。(2月27日のツイート)

 じつは、こうした緊急事態の場合、まず予備費から初動に必要な予算を出し、新年度予算が成立したあとで補正予算を組んで、本格的な対応をすることになる。
 もちろん、志位氏がそれを知らないわけはないのだ。
 知っているからこそ、批判をかわせるようにわざわざ153億円のあとに(予備費等)と書いている。だが、公党の党首がこんなツイートをすれば、仕組みを知らない多くの人は、日本政府がとんでもない無策に終始していると感じるだろう。
 実際、この数字を同じように煽情的に放送した民放の報道番組もあった。
 新年度予算の早期成立が求められるなか、この9日前の2月18日の衆議院予算委員会を日本共産党や立憲民主党などは欠席している。
 予算委員会に出ない理由は、

「桜を見る会」の前日夜に開かれた懇親会をめぐる安倍総理大臣の答弁に疑義があり、書面で回答が得られないかぎり審議には応じられない。(「NHKニュース」2月18日)

というものだった。

着実に仕事をする公明党

 3月10日に発表された政府の「緊急対応策第2弾」には、公明党の提案(「公明ニュース」3月17日)が数多く採用されている。
 中小企業・小規模事業者を支援するため、1・6兆円規模の手厚い資金繰り支援策が講じられることが決定。経営悪化時に雇用を維持する事業者を支援する「雇用調整助成金」の特例措置の対象も、影響を受ける全事業主に拡大された。
 また「PCR検査」の保険適用と自己負担分の全額公費助成なども実現することとなった。
 3月13日、新型コロナウイルスの急速な感染拡大に備えた「新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案」は衆院本会議で可決・成立。
 さすがに立憲民主党や国民民主党、日本維新の会も賛成したが、日本共産党は反対。立憲民主党内では、内輪もめで離党騒ぎが起きた。
 連立与党の公明党・山口那津男代表は、この改正案が「緊急事態宣言」の発出を可能にすることに関して、国会内で次のように語った。

 感染拡大に備えた法的枠組みが速やかに整備されたことは良かった。議論の過程で、緊急事態宣言の発出に当たっては、政府が私権の制約に十分な配慮をした上で慎重に行うことや、国民への丁寧な説明が大事だと確認された。政府はこうしたことを十分に受け止めてもらいたい。(「公明ニュース」3月14日)

(今、同宣言を発出する事態かどうかについて)宣言は専門家の意見を踏まえて行う。(国会で専門家が指摘したように)現在は発出する状況ではないとの意見を尊重したい。(同)

 政党の能力と真価は、危機の時により一層鮮明になる。この2ヵ月ほどの事態の推移と各党の対応を見ていると、冒頭の世論調査の数字は当然の結果といえるだろう。

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