社会」カテゴリーアーカイブ

多様性を承認する「トポス」と宗教が果たす役割

北海道大学大学院法学研究科准教授
中島岳志

多様性が担保される社会のかたちとはどのようなものか。

民主主義における「多数者の専制」

 フランスの思想家トクヴィルは『アメリカのデモクラシー』という本で、デモクラシー(民主主義)にとっていちばん重要なのは国家と個人の間のアソシエーション(中間的組織)だと強調しました。労働組合や社会団体、宗教団体といったアソシエーションへの参加を通じて、自分とは違う他者の考え方を尊重し、合意形成していくパブリック・マインド(公について考える気持ち)が醸成されていくのです。 続きを読む

【2014新春座談会】日本・韓国・中国のこれからを語る

脳科学者・茂木健一郎
現代美術家・宮島達男
明治大学法学部助教・金惠京
日本学術振興会特別研究員・三浦瑠麗

 日中韓の東アジアの関係では批判的な声ばかりが目立つが、アジアの時代を迎える中で東アジアの安定はより一層重要性を高めていく。批判ではなく提案と行動で、2014年の東アジアのビジョンを描き出す。 続きを読む

EMなどのニセ科学とどう向き合うか

サイエンスライター
片瀬久美子

効果がはっきりしないEM

 東電福島第1原発の事故以来、放射線対策として、「EM(菌)」を利用する動きがあります。
 EMとは、Effective Microorganisms(有用微生物群)の略称です。はじめは土壌改良を目的とした微生物資材として作られ、1980年代の初めに琉球大学農学部の比嘉照夫教授(当時)によって、農業用資材として本格的に開発されたものです。 続きを読む

シリーズ 震災からの歩み<2> 東北を日本の先進地に――被災地の声を聞き、見えてきた未来へのヒント

東北学院大学准教授
金菱 清

 東日本大震災直後から、緻密なフィールドワークを続け、被災地の声を聞いてきた金菱清さん。そこから見えてきたものとは何か。

560頁、50万字に及ぶ被災者71人の言葉

 今から18年前の1995年、私は阪神・淡路大震災を経験しましたが、そのときの報道にとても疑問を持っていました。阪神高速道路やビルの倒壊、火災被害が甚大だった神戸市長田区の様子を鳥瞰するような視点ばかりだったことにものすごく違和感を感じていたのです。 続きを読む

シリーズ 震災からの歩み<1> 人間と震災遺構――津波と共に生きる

東北大学大学院工学研究科教授
五十嵐太郎

 東日本大震災から2年あまり。がれき撤去は進み、被災した建物の多くは姿を消しつつある。そのなかで、「震災遺構」として被災建物を保存すべきだとの議論がある。人間にとって被災建物はどんな意味をもつのか。 続きを読む