コラム」カテゴリーアーカイブ

書評『猫だけが見える人生法則』――謎多き現代社会の問題を猫たちが語り尽くす

ライター
小林芳雄

嘘を恥じない日本共産党の危険な体質

 作家で元・外務省主任分析官の佐藤優氏は、その経歴から怖い印象を持つ人もいるかと思うが、無類の愛猫家という一面をもつ。本書は、月刊誌で連載したコラム「猫はなんでも知っている」を内容別に再編集し加筆したもの。シマ、チビ、タマ、ミケという佐藤氏の飼う4匹の猫たちが国内外のさまざまな出来事や問題を分析していく。あるときは飼い主のいない仕事部屋で、あるときは飼い主も交えて、猫たちは人間社会について喧々諤々(けんけんがくがく)の議論をするのであった。

僕は臆病な一匹の猫に過ぎないが、共産党からの攻撃に対しては、飼い主と連帯して命懸けで戦う決意をここで表明する。(本書155ページ)

明らかに旧ソ連や北朝鮮と同じ政教分離観に立っています。飼い主はプロテスタントのキリスト教徒ですが、共産党が権力を獲ると、宗教を信じる人の政治活動が規制される虞(おそ)れを強く感じています。(本書86~87ページ)

 国内政治で猫たちが特に注視するのは日本共産党の動向である。その理由は飼い主が日本共産党に酷い目にあわされことがあるからだ。 続きを読む

本の楽園 第196回 辻小説

作家
村上政彦

 紙面は藁半紙なのか、経年劣化で変色し、少しでも雑にあつかえば、ぼろぼろと崩れてしまいそうな趣だ。昭和18年に出版された社団法人日本文学報国会編『辻小説集』である。
 奥付を見ると、「初版発行 昭和十八年八月十八日」とある。部数は「一万部」。「定価一円四十銭」。227ページの薄い本。緒言を書いた久米正雄によると――

南海に於ける帝国海軍の輝かしい日々決戦の戦火と、凄まじい死闘の形相、一度国民に伝わるや、吾等は満眼の涙を払って、この前線将士の優先奮闘に感謝すると共に、皆を決してその尊き犠牲に対する報賞をなすべく立上がった

 冒頭から勇ましい言葉が並んでいるが、これは第2次大戦の末期に日本文学報国会に属する文学者たちが、原稿用紙一枚に戦意を昂揚させるエッセイや物語を書いて、文章でお国のために役立とうとする書物である。 続きを読む

本の楽園 第195回 言葉にできること

作家
村上政彦

 一冊の詩集に出会った。『道』と題された冒頭の詩を引いてみよう。

そこは緑したたる谷間
道はなかば草におおわれ
花をつけはじめた楢の木立ちをぬけて
学校帰りの子供たちが家路をたどる

 穏やかで、健康な光景が見える。この詩は子供の視点から彼らの生活を書いている。『窓からの眺め』を引く。

いくつもの塔がほら 色とりどりの街の上に映え
いくすじもの細い流れが銀色の糸となってからみあい
山の月が鵞鳥の羽根毛のように
あそこもここも 大地を覆っている

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書評『希望の源泉 池田思想⑦』――「政教分離」への誤解を正す好著

ライター
本房 歩

国家指導者を「悪魔化」する危険

 作家であり日本基督教団に属するプロテスタント信徒である著者が、池田大作・創価学会第3代会長の主著の1つ『法華経の智慧』を読み解くシリーズ。月刊誌『第三文明』に連載中のものを単行本化した第7巻目となる。
 内容的には『法華経の智慧』の「如来神力品」後半部分にあたるのだが、とりわけ本書に収録された連載期間(2022年8月号~2023年7月号、2024年2月号・3月号)にはいくつもの重要な出来事があった。
 まず、新型コロナウイルスによるパンデミックが終息していない時期であり(WHOによる終息宣言は2023年5月5日)、ロシアによるウクライナ侵攻が2022年2月に始まって、まだ半年という時期であった。
 周知のように著者は元・外務省主任分析官であり、在職中はモスクワの日本大使館にも勤務していた。旧ソ連崩壊直前にゴルバチョフ大統領(当時)がクーデター派によって誘拐監禁された際、その生存情報を西側世界で最初にキャッチして東京に伝えたのが著者だった。 続きを読む

自公連立25年の節目――「政治改革」もたらした公明党

ライター
松田 明

政権与党になることのリスク

 1999年10月に小渕第2次改造内閣が発足し、自民党・自由党(当時)・公明党の3党連立政権がスタートして、この10月5日で25年を迎えた。
 この間、3年3カ月間の民主党政権時代を除き、公明党は連立政権の一翼を担い続けてきた。日本の政治史を振り返っても、とりわけ公明党のような小さな所帯の政党が20年以上も安定して政権に就いてきたことは前例がない。
 たとえば1955年から39年間も野党第一党の座にあり、ピーク時は衆参で200人を超す大所帯を抱えていた日本社会党でさえ、1994年に連立政権入りすると、首相まで出しながらわずか1年半で政権は崩壊。日本社会党も解党した。
 その後継政党である社民党は、今では衆参合わせても国会議員が3人しかいない。2000年代に勢いを増し、史上最多の308議席を獲得して誕生した民主党政権も、わずか3年余で失敗に終わり、その後はバラバラに解党した。
 野党の立場で政権批判しているうちは楽でも、いざ政権運営に加われば、バラ色の理想論ばかりでは許されなくなる。国際情勢、同盟関係や他党との合意形成のなかで、必ずしも支持者が歓迎しない選択にも迫られるし、国民に負担をお願いする場面も出てくる。 続きを読む