アジアに広がる創価の哲学(下)――池田会長が結んだ信義の絆

ライター
青山樹人

国王との3度の会見

 東南アジアのなかで、大きく発展しているのがタイSGIだ。
 同国最高学府であるチュラロンコン大学とタマサート大学は、ともに創価大学と学術交流協定を締結。1988年にはチュラロンコン大学でSGIなどが主催して「核兵器――現代世界の脅威」展が開催された。
 民主音楽協会も、「タイ国立民族舞踊団」「タイ王立舞踊団」「タイ人形劇団」などを日本に招聘。文化交流を強く推進してきた。
 6度にわたってタイを訪問した池田会長は、1988年、92年、94年の3度の訪問時には、当時のプーミポン・アドゥンヤデート国王(現在のワチラロンコーン国王の父君)と会見している。
 会長の提案で、国民から敬愛され文化と芸術に造詣の深かった前国王の作品を紹介する「特別写真展」「特別演奏会」、また絵画の「特別展」などが開催されてきた。こうした貢献に対し、91年には王冠勲章勲一等が会長に授与されている。
 94年にタマサート大学と創価大学、SGIが共催して名門タマサート大学で開催された「世界の少年少女絵画展」では、前国王の姉君であるガラヤニ王女を池田会長がご案内した。
 現国王の妹君であるシリントーン王女は、2015年に創価大学で記念講演。
 2019年9月には、タイを訪問した原田会長ら訪問団がサパトゥム宮殿に王女を表敬した。
 上座部仏教が圧倒的多数を占めるタイでも、SGIは19万人余に達するまでに発展。
 新たにタイ研修センターが落成する学会創立90周年の2020年に向け、壮年部7万5000人、青年部7万5000人の陣列達成を目標に前進している。

リサールの国からの信頼

 カソリックの国フィリピンでも、SGIは社会から絶大な信頼を得ている。
 池田会長はコラソン・アキノ大統領やフィデル・ラモス大統領らと友誼の語らいを重ねてきた。1991年に名誉博士号を受けた国立フィリピン大学では講演もおこなっている。
 この国立フィリピン大学で総長を務めたホセ・V・アブエバ博士は、退官後に自らカラヤアン大学を創立。同国の憲法改正諮問委員会委員長などを歴任してきた。
 池田会長と深い友情をむすんできたアブエバ博士は、会長と対談集『マリンロードの曙』を刊行している。
 このフィリピンにあって、独立の英雄として国民的な敬愛を集めるのがホセ・リサールである。リサール協会がフィリピン建国100周年を記念して創設したリサール国際平和賞の第1号は、池田会長に授与されている。
 リサール協会からはこれまで、リサールの名を冠した「大十字勲章」「国際青年平和賞」が会長に贈られ、2018年には「正義・平和・人道のためのリサール協会国際賞」(「創価学会公式サイトSOKAnet」ニュース・トピックス2018年10月22日)が授与されている。

第1号の最高客員教授称号

 池田会長がアジアでもっとも足を運んだ香港。訪問は20回を数える。
 1970年代から歴代の総督と友誼を交わし、武侠小説で圧倒的な人気を博した作家で、香港の『明報』紙、シンガポールの『新明日報』紙の創立者でもあった金庸氏とも深い親交を結び、対談集も刊行してきた。
 香港大学と並ぶ世界的名門・香港中文大学は、創価大学が最初に学術交流を締結した海外の大学である。
 1992年に池田会長が香港中文大学で「中国的人間主義の伝統」と題して講演した際、同大の第1号となる最高客員教授称号が授与されている。
 また96年には香港大学から名誉文学博士号が、2000年には香港中文大学から名誉社会学博士号が授与されている。
 1992年に創立された香港創価幼稚園は、今や香港でも屈指の名門として人気が高い。
 20世紀の戒厳令下で冬の時代を耐え抜いた台湾SGIも、現在は大きく発展。台北の故宮博物院の真正面には、本部機能をもつ8階建ての至善文化会館がそびえる。
 2019年には行政府内政院から昨年に続いて宗教公益賞を受賞。前身である優良宗教団体賞から通算して17回連続の受賞となった。
 台湾の名門・中国文化大学では、2003年に台湾で初となる「池田大作研究センター」が設立され、各国の研究者が集う「池田大作平和思想研究国際フォーラム」も2019年で13回目を数える。

広がる「池田思想研究」

 中国本土ではSGIは布教をおこなっていないが、学術界での〝池田思想研究〟が世界でもっとも盛んなのが中国だ。
 北京大学を筆頭に、すでに40を超す大学や学術機関で公式の研究機関が設置されており、やはり国内外の研究者が一堂に会してのシンポジウム等が毎年開催されている。
 韓国SGIは、海外の創価学会のなかで現在もっとも多くの会員数を擁し、全土に約300の会館がある。2007年には幸福幼稚園も開園。約300の市や郡などの行政体から池田会長への顕彰が贈られるなど、社会からの信頼も厚い。
 日韓関係が政治的に冷え込む渦中の2019年7月にも、名門・慶熙(キョンヒ)大学では第3回となる「趙永植・池田大作平和思想学術シンポジウム」が開催され、元首相の李寿成(イ・スソン)氏が記念講演している。
 かつて日本の軍国主義が拭い難い惨禍をもたらしたアジア。
 そのアジア諸国で、創価の哲学は宗教や文化の差異を越えて各国・地域に広まり、SGIのメンバーはその国の〝良き市民〟として社会に貢献し、厚い信頼を獲得してきた。
 世界の中心軸がアジアにシフトする時代を迎え、池田会長が1人1人を励まし手作りで育ててきた各国・地域の創価の連帯は、「平和・文化・教育」の砦として、いよいよ光彩を放ちはじめている。

「アジアに広がる創価の哲学」:
アジアに広がる創価の哲学(上)――発展著しいインド創価学会
アジアに広がる創価の哲学(中)――異なる価値観への尊敬と共生
アジアに広がる創価の哲学(下)――池田会長が結んだ信義の絆

「青山樹人」関連記事:
第43回「SGIの日」記念提言を読む――民衆の連帯への深い信頼
共感広がる池田・エスキベル共同声明
学会と宗門、25年の「勝敗」――〝破門〟が創価学会を世界宗教化させた
書評『新たな地球文明の詩(うた)を タゴールと世界市民を語る』
カストロが軍服を脱いだ日――米国との国交回復までの20年


あおやま・しげと●東京都在住。雑誌や新聞紙への寄稿を中心に、ライターとして活動中。著書に『最新版 宗教はだれのものか 世界広布新時代への飛翔』、『宗教は誰のものか』(ともに鳳書院)など。