「統一会派」めぐる怨憎――旧民主党の懲りない人々

ライター
松田 明

参院選敗北への焦燥

 2017年の衆院選で1108万票を獲得していた立憲民主党は、先の参院選では791万票と大きく票を減らした。
 同党の福山哲郎幹事長は8月5日、参院選敗北の責任をとって参院会派代表を辞する意向を周囲に伝えたとされる。

 福山氏に対しては、指揮を執った先の参院選で複数区を中心に取りこぼしが目立ったことなどを踏まえ、党内から不満の声が出ている。(「時事ドットコムニュース」8月5日)

 立憲民主党にとって深刻なのは、あれほど「年金不安」「消費税率引き上げ反対」を煽っても有権者が全世代で与党に過半数の票を与えたのみならず、これまで立憲民主党を支持していた層の票を、急ごしらえのポピュリズム政党に奪われたことだ。
 比例区の当選の上位5人までは労組丸抱えの候補。野党第一党でありながら、与党支持層はもちろん、野党支持層からも無党派層からも、結党当初のようには期待されなくなっている。
 戦略に行き詰まり危機感を募らせている枝野幸男代表は5日、国民民主党と「社会保障を立て直す国民会議」(代表は野田佳彦・前首相)に、衆議院での「統一会派」結成を呼びかけた。

上から目線の「声明」

 参院選で惨敗し党の存亡の淵に立っている国民民主党の玉木代表は、渡りに船とばかりにこれを歓迎している。

 国民民主党の玉木代表は記者会見で「正式に党として決定する手続きを踏みたい。今月10日に両院議員総会を開き、意見を聞くプロセスを踏んで回答したい」と述べ、参議院も含めて会派をともにしたいと回答する方向で意見集約を図る考えを示しました。(「NHKニュースWEB」8月7日)

 だが、国民民主党のなかには不穏な空気が漂っている。
 そもそも両党は「希望の党」への飛び乗り騒動に端を発して分裂した者どうし。怨念があるのはもちろん、憲法や原発をめぐって政策にも相違がある。
 しかも先の参院選では、いくつもの選挙区で国民民主党の候補者が立憲民主党の候補者と競合し落選した。
 8月2日に開かれた両院議員懇談会では、立憲民主党への批判も上がり、「自民党との連立」を望む声さえ出た。
 一方、立憲民主党の枝野代表は5日の会談のあと、党のサイト上に声明を出した。
 そこには、

 立憲民主党の政策、すなわち、立憲主義の回復など憲法に関する考え方、いわゆる原発ゼロ法案等のエネルギー関連政策、および、選択的夫婦別氏制度や同性当事者間による婚姻を可能とする一連の民法一部改正法案等の多様性関連政策などにご理解ご協力いただき、院内会派「立憲民主党・無所属フォーラム」に加わって、衆議院でともに戦っていただきたく、ここにお呼びかけさていただきます。(「立憲民主党公式サイト」ニュース8月5日)

と記されていた。
 すなわち、あくまで「立憲民主党の政策」に「ご理解ご協力」する者だけが、「衆議院」の院内会派「立憲民主党・無所属フォーラム」に来ればよいというのだ。

「失望を隠せない」

 これに早速、国民民主党内は反発している。
 泉健太議員は同日のツイッターで、

『統一会派』結成の提案ではなかったということか???
今夜、玉木代表と協議します。
(8月5日のツイート)

と投稿。それを拾う引用リツイートで、原口一博・国対委員長も、

①誰に宛てたものか不明
②立憲の政策に理解を
③その上で立憲無所属フォーラムに合流を
④合流は衆議院のみで

これまで言ってきた事とほぼ同じ?
個人の資格で合流せよと?
だとすれば統一会派ではない。
これを本気で言っているとしたら失望を隠せない。
(8月5日のツイート)

と投稿。
 立憲民主党の〝上から目線〟の声明に、会談した数時間後に「失望」という言葉が飛び出した。

狙いは「国民民主党潰し」

 原口氏ら国民民主党の一部が望んでいるのは、衆参両院での「統一会派」。
 5日、原口氏は記者会見で〝旧民主党勢力の再結集〟を訴えた。

 国民民主党の原口国会対策委員長は記者会見で、安倍政権に対じしていくためには旧民主党勢力の結集が必要だとして、秋の臨時国会に向けて立憲民主党と統一会派を結成するための環境を整えたい、という考えを示しました。
 この中で、原口国会対策委員長は「安倍内閣の長期政権をもたらした要因の一つは紛れもなく旧民主党勢力の分裂にある。国民に信頼されるもう一つの軸を打ち立てることが必要だ」と指摘しました。(NHKニュースWEB/8月5日)

 原口氏が認めたように、安倍政権が長期政権を維持できている大きな要因のひとつには、「国民にとって選択肢となり得る野党がない」ということがある。
 一度は政権を担い、その後も政権交代を掲げていたはずの民主党が、共産党との「野党共闘」に乗り出したことで迷走。
 党名も変え、代表選挙を経て新たな党代表が就任して4週間で、小池百合子・都知事の「希望の党」に飛び移ろうとして分裂したのである。
 史上最多の議席を得て政権を担った政党が、わずか数年で〝バブル人気の政党〟に駆け込もうとした醜態に、国民はあきれ果てた。
 衆議院の解散がささやかれた中で、どの議員も沈む泥船から逃げ出すことしか考えていなかったといっていい。
 その人々が、今さら「旧民主党勢力の結集」を叫び、片や「一兵卒となって俺の股をくぐったものだけ入れてやる」と強気を見せている。
 枝野氏が傲岸不遜とも思える挑発的な声明を出した狙いは、先の参院選と同様、まず国民民主党を潰すことにあるのだろう。
 野党の混迷はさらに深まる気配を見せている。

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