「食品ロス削減法」が成立―― 関係者と公明党の執念が実る

ライター
松田 明

膨大な食品廃棄の実態

 643万トン――。何の数値かわかるだろうか。
 じつは、日本国内で1年間に廃棄される〝まだ食べられる食品〟の量だ。農水省と環境省は、2016年度のこうした食品ロスの推計量を643万トンと発表している。
 たとえばスーパーなど小売店では、まだ賞味期限を過ぎていなくても、期限が近づいた商品を陳列しておくことは客から忌避される。
 食品流通業界では長年の慣習として、製造日から賞味期限までの3分の1を過ぎた商品は小売店に納入できなかった。
 2015年に、これを「2分の1」に延長したが、問題が根本的に改善したわけではない。また、スーパーやコンビニでは、むしろ弁当などデイリー食品の廃棄が大きな問題となっていた。
 コンビニなどではこれまで消費期限の迫った弁当などデイリー食品を、店舗オーナーが値引きして販売したくても、コンビニ各社の本部が厳しく制限してきた。
 24時間営業が多いコンビニでは、値引き制度を本格化させると、それを目当てにする客が増えるのではないかという懸念が本部側に強かったのだ。オーナー側と本部との力関係の圧倒的な差が、値引きを阻止してきた。
 また、災害等に備えた食糧備蓄をしている自治体や大企業でも、賞味期限が来る前に新しい食糧と定期的に交換しなければならない。

10人に1人が慢性的栄養不足

 これらは単に大量の食品が無駄になるだけでなく、廃棄や、そのための輸送にも新たなコストが生じ、社会の大きな損失となってきた。
 廃棄された商品の損失は、最終的には商品価格に上乗せされて消費者の負担となる。事業廃棄物の焼却には1キロあたり50~60円の税金が使われている。
 さらに世界全体で見ると、2014年の時点で慢性的な栄養不良に陥っている人が7億9500万人。地球上に暮らす人の10人に1人にのぼる。
 国連が2030年までの達成目標として掲げたSDGsでも、「貧困をなくす」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「つくる責任つかう責任」など、食品産業が関与する目標は多い。
 こうした食品ロスに対しては、これまでNPOなどがフードバンクとして、「余っている食べもの」を持っている支援者と「食べ物を必要としている」受益者の仲介をおこなってきた。

一貫して公明党が推進

 5月24日、参議院本会議で「食品ロス削減推進法」が全会一致で可決成立した。
 この法律は、食品ロスの削減に向けて、政府や自治体、企業の責務、消費者の役割を定め、「国民運動」として問題解決に取り組むことを求めたものだ。
 この議員立法を一貫して推進してきたのが公明党だった。
 公明党では、2015年12月に党内に食品ロス削減推進プロジェクトチーム(座長=竹谷とし子参議院議員)が発足。
 翌年から食品ロスセミナーなどを開催し、関係者と学習や協議を重ねてきた。
 2016年7月に消費者庁が発表した「消費者基本計画行程表」の改定では、未利用食品をフードバンク活動に活用することや、飲食店にロス削減への取り組みを促すことが明記されるなど、公明党の主張が随所に反映された。
 全国フードバンク推進協議会なども、立法化に向けて独自の調査などを重ね、公明党に政策提言をおこなってきた(「一般社団法人全国フードバンク推進協議会」HPより)。
 公明党のプロジェクトチームは、2018年4月までに法案を作成。
 6月には参議院議員会館で、関係者が集まって法案に関する緊急院内集会が開催された。
 食品ロス問題に取り組んできたジャーナリストで栄養学博士の井出留美氏は、

 食品ロスの削減の推進に関する法律案については、公明党の食品ロス削減推進PT(プロジェクトチーム)が、座長で参議院議員の竹谷とし子氏を中心に、これまで数年間をかけて取り組んで来られた。(「Yahoo!ニュース」2018年6月14日付

と、法案の内容と共にこの緊急集会の内容をYahoo!ニュースで詳報している。
 2018年12月13日には、超党派の議員連盟が発足。設立総会では竹谷議員が司会を務め、やはり公明党のかわの義博・参議院議員が事務局次長に就任した。

公明党のネットワークに期待

 このほど成立した「食品ロス削減推進法」は、国民運動としてこの問題に取り組むために、まず政府に基本方針を策定することを義務づけている。
 さらに地方公共団体も、国や他の自治体と連携して地域に応じた施策を策定し、実施することを義務づけている。
 基本方針の策定などをおこなう特別機関として、関係閣僚や有識者で構成する「食品ロス削減推進会議」を内閣府に設置する。
 また、広く消費者や事業者が食品ロスへの理解を深めるため、10月を「食品ロス削減月間」と定めることなども盛り込んだ。
 法案の成立を受けて、井出留美氏は特に尽力した人物として竹谷とし子参議院議員と、全国フードバンク推進協議会の事務局長の米山広明氏の名前を挙げて感謝を綴っている。

 法案成立に至るまでには、多くの方の努力があった。
長年にわたり尽力されてこられたお一人が、参議院議員で公認会計士の竹谷とし子さんだ。
 竹谷さんと初めてお会いしたのは、3年前の、2016年2月28日。まだこの時は法案は無かった。
「東京都内7会場で、食品ロスを減らすために多くの人に呼びかける講演をして欲しい」というご依頼を頂き、竹谷さんとともに2月28日を皮切りに、都内7会場で、多い会場では1600名に食品ロスの講演を行った。(「Yahoo!ニュース」2019年5月24日付

 法律の成立はゴールでなくスタート。全国の都道府県や市町村で取り組みを推進していくためにも、3000人の議員ネットワークを持つ公明党に本領発揮してもらいたい。

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