解散した自由党
「平成」から「令和」へ。
改元を挟む史上最長10連休のゴールデンウイークを目前にした4月26日、国民民主党と自由党の合併が発表された。
合併後の党名は、国民民主党。理念も政策も国民民主党のものを継続し、代表は玉城雄一郎氏のまま。合併にあたって小沢一郎氏の率いる自由党は解散した。
支持率が1%あるかないかという両政党の合併のニュース。
しかも、子どもが積み木遊びをするかのように、小沢氏が政党をつくったり合併したりしては壊すというのは、過去何度あっただろう。
もはや国民の多くが飽き飽きして、さして気にも留めなかったのではないか。
7年間で7つの政党
かつて第6代の民主党代表を務めた小沢氏。
しかし、念願の政権に就いた途端に、この党は内部で泥沼の権力闘争をはじめる。
小沢氏は2012年7月には消費税をめぐって執行部に反旗を翻して離党。「国民の生活が第一」という新党を結党して代表におさまった。
4ヵ月後の同年11月には嘉田由紀子氏らと「日本未来の党」を結党。
ところが総選挙で大敗すると嘉田氏らと対立し、12月に「生活の党」を結党。年が明けた2013年1月、小沢氏が代表になる。
もはや有権者の信頼は離れ、7月の参院選では「生活の党」の全員が落選。
2014年の総選挙でも大敗し、所属議員は小沢氏と玉城デニー氏(現・沖縄県知事)の2人のみとなり、政党要件を失う。
すると、政党交付金を受けるために年末ぎりぎりの12月26日に無所属の山本太郎氏を引き入れ、党名を「生活の党と山本太郎となかまたち」に変更。
2016年には党名を「自由党」に変更。
そして、今度は党の共同代表だった山本太郎氏が離党し、小沢氏は自由党を解散して、理念も政策も国民民主党のそれを丸呑みして、合流するというのである。
裏切られた有権者
小沢氏が共同代表だった自由党は、「脱原発」を政策として掲げていた。
一方、電力総連の支援を受ける国民民主党は、安全基準を満たした原発の再稼働を認めている。
原発ゼロの達成時期についても、自由党は「2022年までに廃止」。国民民主党は「2030年代に原発ゼロ」だ。
今回、小沢氏はこれまでの政策をあっさり捨てて、国民民主党の政策を受け入れた。
〝小異を捨てて大同につく〟といえば聞こえはいいが、要するに自分が政治家として生き延びるためなら、有権者に約束した政策などどうでもいいという本音が丸出しだ。
自由党のエネルギー政策を支持して票を投じた人にすれば、裏切られた気持ちだろう。
内部対立の火種は小沢氏
合併をめぐって多くのメディアが報じたのは期待ではなく、野党の主要政治家から聞こえた冷ややかな声であり、当事者である国民民主党内での紛糾劇だった。
安倍政権の打倒を叫び、野党結集の仕掛け人を自ら任じている小沢氏。
だが、ここにきてもなお、その野党間の対立の火種になっているのが、当の小沢氏自身なのである。
今回の合併をめぐって、国民民主党の内部では4月25日から翌日未明まで7時間も議論が紛糾した。
署名に先立つ国民の党内協議は約7時間に及び、旧民主党の「決められない政治」を想起させた。障壁だった参院選岩手選挙区(改選数1)の候補者調整も確定せず、参院選に向けた野党共闘に影響が出そうだ。(『毎日新聞』4月26日)
この7月に行われる参院選の候補者について、小沢氏の地盤である岩手選挙区では野党間の激しい対立が起きているのである。
反目し合う「民主党」勢力
国民民主党の憲法調査会長で岩手県連代表代行の階猛氏(しな・たけし/岩手1区)らは、同党の岩手県連代表で、元衆院議員の黄川田徹元復興副大臣を擁立しようとしている。
一方の小沢氏はそれを承知で、3月中旬に自由党と共産党や社民党だけで、元パラリンピック選手の横沢高徳氏を「野党統一候補」として早々に立候補表明させたのだ。
蚊帳の外に置かれた格好となったのが、黄川田徹元衆院議員が代表、階猛氏(衆院岩手1区)が代表代行に就く国民民主党の県連組織だ。根底には、たもとを分かった小沢氏と黄川田、階両氏の確執が横たわる。(『河北新報』3月18日)
地元紙が指摘するとおり、元々は同じ民主党政権にいた者たちが反目し合っているのである。
「自分のことしか考えていない」
旧・民主党の人々から信頼されず、「壊し屋」の異名をとる小沢一郎氏。
その人が野党結集を仕掛けているのだから、足元から綻びがはじまっているのも無理からぬ話だろう。
小沢氏が自由党を解散して国民民主党と合併させたことについて、社民党の又市征治党首はテレビカメラの前で
いや理解できない。私では理解不能。(TBS NEWS)
と首を横に振り、民主党時代に小沢氏と対立した野田佳彦・前首相は、
自分たちの勢力拡大的なことしか考えてないように見えて。全体が動いているときに、今そんなことやってる場合なのか。(同)
と、小沢氏を痛烈に批判した。
早くも崩壊の予感が
結局、7時間かけても岩手選挙区での「野党統一候補」をどうするのか決められないまま、自由党との合併を多数決で了承した国民民主党。
玉木、小沢両氏が合流に合意して3カ月。旧民主党の分裂を引き起こした小沢氏への警戒感がくすぶり、議論は堂々巡りが続いた。
国民の東北選出議員は「身内でもめていては見放されて当たり前」と支持率低迷の要因を指摘。(『河北新報』4月27日)
合併を発表する記者会見で、引き続き党代表となった玉城雄一郎氏は「自民党に代わる国民の選択肢を作る第一歩」と述べた。
だが、その岩手選挙区での「野党統一候補」の行方次第では、早々に離党者が出るだろう。
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