「改革の方向性が完全に一致」
高い支持率を追い風に「都政改革」を進めようとする小池百合子・東京都知事。
この7月2日の都議会議員選挙に向け、政治塾「希望の塾」を立ち上げるとともに、事実上の〝小池新党〟である地域政党「都民ファーストの会」(代表の野田数<かずさ>氏は小池知事の特別秘書)で、都議会の過半数獲得をめざすとしている。
3月13日、この都民ファーストの会が都議会公明党と政策合意を得て、都議選でも候補者を相互推薦する選挙協力をすることが発表された。
両党は、東京オリンピック・パラリンピック、防災・減災、福祉教育など、10分野35項目にわたって政策合意。都内42選挙区のうち、都議会公明党は荒川区を除く1人区と2人区で都民ファーストの会候補者を推薦、都民ファーストの会は公明の公認候補23人全員を推薦することとなった。
理由について、都民ファーストの会の野田代表は、共同記者会見で次のように語った。
これまで都議会公明党の皆様より多岐にわたる政策提言、立案要望をいただいてまいりました。都民生活に密着した具体的な提案が多く、たとえば東京防災の女性版など、私どもの発想にはなかった有意義なご提案を数多くお示しいただき大変参考になりました。
小池都政の目玉である特別奨学金の大幅な拡充については、都議会公明党の皆様から具体的な政策提言を頂戴した上で、予算案に盛り込みました。
さらに議会改革においても、議員報酬削減や政務活動費の公開等を都議会公明党の皆さまがリードしてきました。
これらも小池都政の進める情報公開や身を切る改革と、方向性が完全に一致しております。
今後、公明党の皆様には「都政の頭脳」としてのお力をお借りしたいと考え、このたび政策および選挙協力について合意をいたしました。
あわてて看板を捨てた民進党系
小池氏が都知事に就任した時点で、明確に知事への協調を掲げる都議は3人しかいなかった。そこで、小池氏は自前の地域政党をつくって7月の都議会議員選挙では60~70人の候補者を擁立し、自身の〝改革〟に協力する勢力を拡大したいと表明した。
都知事と対立する都議会自民党の動揺は大きく、早速、2人が離党して都民ファーストの会に合流。さらに、旧民主党系の都議会民進党(14人)と旧維新の党系の民進党都議団(4人)も、そろって「民進党」という看板をあっさり捨てて、あたかも小池知事サイドであるかのような「東京改革議員団」なる会派を結成した。
もちろん、こうした揺さぶりを各会派にかけることそのものが小池知事の戦術の巧みさであり、知事としては〝寄って来る者は拒まず〟の態度を見せるだろう。
しかし、同時に小池知事は政治の非情さも選挙の怖さも知り尽くしている。ブームに便乗して自分を利用してくる人間や党派、一時的な〝風〟に乗って議員バッジを得ただけの素人集団では、所詮は支持基盤としてあてにならないし、まともな仕事もできないことを誰よりわかっている。
さらに、大仕事である2020年東京オリンピック・パラリンピックを考えると、国との連携は知事にとって必須であり、その意味では国としっかり意思疎通できる〝与党〟を形成することが望ましい。
公明党は都議会でも国政でも与党であり、半世紀以上の歴史と重厚な実績がある。地域にも密着している。なにより他党と違うのは、「チーム3000」というように国、都道府県、市町村、それぞれの計約3000人の公明党議員の間にヒエラルキーがなく、連携がスムーズにおこなわれていることだ。
頼りになるのは都議会公明党だけ
こう考えれば、改革を掲げる小池都知事にとって、都議会の既成のパワーバランスを揺さぶるためには「小池新党」で都議選に討って出るしかないが、本音で改革のパートナーになってもらいたい頼りになる相手は、都議会公明党しかないのだと思う。
なにより、知事就任後、知事も共感し、実際に新たな改革の果実として形にできる具体的な独自調査や政策提言を続けてくれたのは都議会公明党だった。知事側も、真摯にこれに応じ、新年度予算案には私立高校の授業料実質無償化、無電柱化や駅のホームドアの増設、学校トイレの洋式化、女性視点の防災ブック作成など、公明党の提案が数多く形になっている。
先の〈今後、公明党の皆様には「都政の頭脳」としてのお力をお借りしたい〉という野田代表の言葉は、まさにそうした切実な思いの表れでもあるだろう。
公明党が心血を注いできた議員報酬削減など「身を切る改革」を巡り、都議会自民党との信義は崩れたまま、今日に至っています。ただし、これは都議会の問題であり、国政とは関係ありません。(中島よしお都議会公明党団長)
中島氏が言うように、国政での自公連立政権は成熟した信頼関係を相互に築いており、都議会で公明党が都民ファーストの会と連携したとして、何ら影響はない。
むしろ、公明党が勝たなければ盤石な基盤にはならず、国との意思疎通もままならず、都政改革が進まないことを、小池知事自身が十分にわかっている。
その意味で、都知事の〝改革〟の成否は、じつは次の都議選で都議会公明党23人が完勝するかどうかに大きくかかってくるのだ。
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