「合意は知らない。党の決定でもない」
6月7日、民進党、共産党、社民党、生活の党の野党4党が、SEALDsなどが母体となる市民連合との間で、「安保法案廃止」など7月の参院選に向けた政策協定に署名をした。
共産党の志位委員長が「歴史的」と自賛する野党共闘。昨年9月に「国民連合政府」構想をぶちあげた共産党は、参院選1人区で予定候補を次々に取り下げ、32のすべての1人区に「野党統一候補」を擁立することを主導してきた。
ところが、政策協定署名からわずか2日後の6月9日、BSフジの番組に出演した民進党の前原誠司・元外相は、
合意したことを知らないし、党の決定ではない。
と驚くべき発言をした。
国民に向けて野党4党とSEALDs幹部がにこやかに手を取り合って見せた「政策協定」が、実際には野党第1党である民進党内で正式な議論も合意もされていないことを、民主党代表も務めた前原氏があっさり白状したのだ。
翌10日、あわてた岡田代表は党本部で記者団に対し、
合意は(民進党の)選挙公約の線の中に入っている。党の中で幅広く意見を聞いたわけではないが、誰が見てもそうとしか言えない。
と反論したが、党内での協議や合意を得ていないことを認めた。
そもそも前身の民主党が、「選挙互助会」と揶揄されるほど、理念のバラバラな寄せ集め所帯だった。政権獲得までは足並みをそろえていたのに、政権を手にした途端に党内対立を激化させて分裂したのは、そのためである。
今回、岡田代表が党内で議論も合意もしないまま共産党やSEALDsなどと「政策協定」を結び、直後にこれを民進党内の有力議員が暴露したことは、今の民進党の危うさを象徴しているだろう。
岡田代表が小沢一郎氏や共産党とにこやかに手を取り合う姿に、内心、冗談じゃないという思いの民進党議員は少なくない。
無所属候補の行先は「決まってない」
今回の参院選で、民進党は公認候補だけで15選挙区が共産党員たちの全面的な支援を受ける。その共産党は「国民連合政府」樹立という夢物語を有権者に語り、一方の民進党は「共産党との連立はあり得ない」(岡田代表)とこれを否定する。めちゃくちゃな話だ。
では、共産党候補が立つ香川選挙区を除く、残り16の選挙区に立っている「無所属」の野党統一候補はどうなのか。
この野党統一候補たちが当選した場合、民進党と会派を組むのか、共産党と会派を組むのか、それとも無所属会派になるのか。投票する有権者にとって、もっとも知りたいところだ。
だが、政策協定が発表された6月7日、PRIMENEWSに出演した民進党の古川元久・税制調査会長は、反町キャスターからこのことを問われて、こう答えた。
これはイロイロだと思いますが、そこのところはまだ決まってない。
これにはさすがに反町キャスターも驚いて、
どこの党と行動するかもわかんないけれども、そこは野党統一候補だから票を入れろと? こういう選挙戦になるんですか?
と問い返した。
民進党の岡田代表も6月21日の党首討論(NHK)で、このことを突っ込まれると、
(無所属の候補者は)それぞれの選挙区で政策を訴えている。政策を判断して有権者に判断してもらう。当選して無所属がよければ無所属、政党に所属したければする。自然なこと。
と言い放った。
党内の合意もないまま目くらましの「政策協定」を大々的に発表した民進党。共産党を含めた国民連合政権を主張する共産党と、この共産党との連立を全面否定する民進党。
しかも、野党が立てる無所属候補の所属会派は、当選後に何党になるのか不明。それぞれの候補が勝手に決めるのだという。
このことは、しっかり認識しておきたい。
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