公明党、反転攻勢へ出発――「外側」の意見を大切に

ライター
松田 明

「政治とカネ」への公明支持層の怒り

 公明党は11月7日午後、全国県代表協議会を開催した。
 明2025年の夏には東京都議会議員選挙と参議院選挙が控えている。先の衆議院選挙で32議席から24議席へと大きく後退した公明党にとって、捲土重来を期す「反転攻勢」への出発の会合となった。

 衆院選で自民・公明は過半数割れまで議席を減らし、少数与党となった。ただ、選挙直後の11月2日~3日にFNNが実施した世論調査では、石破政権の継続について「続投してよい」が55.3%で「交代するべき」の36.5%を上回った。
 有権者の多くは、とりあえず自公を過半数割れとしたうえで、なお石破政権の継続を容認したかたちだ。
 この調査では、政権に対する公明支持層の厳しい目も浮き彫りになった。

内閣支持率を自公の支持政党別に見ると、石破政権を「支持する」という答えについて「自民支持層」79.8%、「公明支持層」59.5%となった。(「FNNプライムオンライン」11月8日

 選挙直後の数字であることに留意が必要だが、「政治とカネ」をめぐる政権の対応について、公明支持層の強い反発があったことがうかがえる。
 石破首相は11月29日の第216回臨時国会の所信表明演説で、

 先の選挙結果は、主権者である国民の皆様からの、政治資金問題や改革姿勢に対する叱責であったと受け止めております。「政治は国民のもの」との原点に立ち返り、謙虚に、真摯に、誠実に国民と向き合いながら、政治改革に取り組んでまいります。(「首相官邸サイト」石破内閣総理大臣所信表明演説

と述べた。

公明党らしい主張が続く

 厳しい選挙結果もあり、斉藤鉄夫代表の体制になって、公明党は今まで以上に、党としてのスタンスを明確にした意見表明と発信を心掛けているように見える。
 臨時国会に先立つ11月27日の自公の幹事長・国対委員長会談では、公明党が主張してきた「調査研究広報滞在費」(旧文通費)の使いみちの公開などについて、臨時国会で必要な法改正をめざす方針を確認した。

また会談では、公明党が主張している刑事責任を問われた国会議員の歳費の支給停止や返納などを可能とする法改正に向けた議論を進めることになりました。(「NHK NEWSWEB」11月27日

 さらに同じ日、公明党の斉藤鉄夫代表は首相官邸に石破首相を訪ね、来年3月にニューヨークの国連本部で開かれる「核兵器禁止条約の第3回締約国会議」に、日本がオブザーバー参加するよう求めた。
 これも、従来から公明党が一貫して日本政府に求めていたものだ。

石破首相は、核廃絶に向けた議論について「唯一の被爆国である日本が最も強い説得力を持つ」との考えを表明。その上で、日本と同様に米国の〝核の傘〟の下にあるドイツがオブザーバー参加していることから「ドイツでどのような議論があって参加に至ったのか、今どのような議論を行っているのかを検証する必要がある」と述べた。(『公明新聞』11月28日

 斉藤代表はあわせて、ノーベル平和賞受賞式のためにオスロ入りする日本原水爆被害者団体協議会のために、現地での活動を政府としてもサポートするよう要請し、首相も「外務省に指示する」と応じた。

 12月3日には自公の幹事長会談で、公明党の西田実仁幹事長から「公明党は選択的夫婦別姓制度に賛成の意向を示している。自民党においても議論を進めてほしい」と要請した。

導入に賛成する公明は斉藤鉄夫代表が14日のBS番組で「自民も賛成して整備するように、連立のパートナー、友党として働きかけていきたい」と踏み込むなど発信を強めていた。(『産経新聞』12月3日

 12月9日には、政治資金の流れを監視する「第三者機関」を設置する法案を、自民党ではなく野党の国民民主党と共同提出する異例の方針を発表した。
 第三者機関について自民党が出していた案は、使途公開に特に配慮が必要な支出の監査などに役割を限定したもの。これに対し公明党は、監査の対象を国会議員関係政治団体とする案を示していた。

 衆議院での法案提出には21人が必要だが、現状の公明党は閣僚や政務三役などを除くと21人に足りず、単独提出ができない。国民民主党案と考え方が近いことから、共同提出を公明党側から持ちかけた。10日に共同提出する。

「現状報告」を毎週発信する

 7日の全国県代表協議会では、衆院選の反省を踏まえ、今後の党勢拡大に向けて「広報宣伝と政策を一体として見直す」方針が発表された。

 メディアはどうしても視聴率やインプレッション稼ぎに引っ張られる傾向があり、政治報道も〝政局報道〟に注目が集まる流れが避けられない。
 公明党が独自性を発揮してさまざまな具申をしたり、与党内で思い切った態度表明をしたりしても、それが多くの人々に伝わるかといえばなかなか簡単ではない。また、現実政治は多様な利害や価値観が入り乱れる駆け引きの世界であり、一筋縄ではいかない。

 そこで、余計なお世話と承知で、一つの提案である。
 さまざまなテーマについて、公明党がどのような議論をし、あるいは自民党や政府、野党などとの協議をしたのか。現状、どのような課題があり、公明党はどのように考え、それに対して政府や他党からどのような意見が示されているのか。
 それぞれの課題について、今どのような議論が進んでいて、何がどこまで前進し、あるいは膠着し、どのように結論を導くべきと考えているのか。

 そうした進捗状況を整理した解説を、少なくとも毎週1回、公明党の公式のYouTubeなどで5分くらいの尺で配信したらどうだろうか。
 議員が独自にやることもよいが、党として国民に情報共有する姿勢が大切だ。

 地道ではあっても、そうした発信・情報共有を重ねていくことで、公明党が何を重視し、どのような役割を果たそうとしているのか、少しずつ理解が広がっていくのではないかと思う。
 その際に大事なことは、党員でも支持者でもない人、もっと言えば他党の支持者や政治にあまり関心のない層に向けて、誠実に発信していくことだろう。
 新たに選挙権を持つ18歳で、公明党に何の関心もなかった人を想定して、そこにきちんと届く言葉で、公明党が今何をしているのかを毎週発信していく。

 関連して、公明党の情報発信の全般については、「外」からの批評を取り込む仕組みを作るとよいと思う。一般紙の「紙面批評委員会」「紙面審議会」などのイメージだ。
 公明党は全国にネットワークを持った組織政党であり、支持基盤や地方議員からの声は、ある意味で伝わりやすい面もあろう。しかし、〝内輪〟の視点だけではどうしても「身びいき」になるし、エコーチェンバーのなかだけで満足しがちになる。

 その意味でも、半分くらいは党員でも支持者でもない人、とりわけ若者も含めた幅広い世代に参加してもらって、定期的に公明党の情報発信全般への辛口の批評をしてもらうべきだと思う。
 有識者の意見も重要だが、とくに専門知を持たない一般有権者の感覚に耳を澄ませてもらいたい。なぜなら公明党はそもそも専門家やその分野に詳しい人たちからは評価が高いからだ。

 新しいことに取り組むと不安もあるし、どうしても耳あたりの良い反響に目が行きがちになるものだ。
 ただ、「これまで公明党に関心のなかった人々に伝わること」が目的なのだから、身内からの称賛ばかりを見ていても意味がない。〝身内でない人〟からのシビアな声を謙虚に受け止め、微調整を繰り返していくことが重要だと思う。
 担当部署をはじめ、関係者の方々には辛労の多い挑戦が続くと思うが、「大衆とともに」の立党精神で新たなコミュニケーションを構築していくことを期待している。

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まつだ・あきら●ライター。都内の編集プロダクションに勤務。2015年から、「WEB第三文明」で政治関係のコラムを不定期に執筆。著書に、『日本の政治、次への課題』(第三文明社)がある。