「維新」の主張、それ本当ですか?――有権者をあざむいてはいけない

ライター
松田 明

 いよいよ27日に迫った衆議院選挙。衆院選は「政権選択選挙」だが、選挙後の政権の枠組みを示しているのは自民・公明だけで、対する野党は単独過半数を占められる見通しの政党が1つもないなか、ではどのような政権枠組みを考えているのか明らかにしていない。
 なかでも相次ぐ不祥事で支持率が急降下している日本維新の会は巻き返しに必死だが、選挙戦を通じて見えてきたその主張には、有権者を欺いているとしか思えない「ゴマカシ」が目立つ。

(写真は「日本維新の会」公式ページ)
 

【その1】維新は企業・団体献金を受け取っていない?⇒ウソ
「今、企業・団体献金を受け取っていないのは数ある政党の中でも維新の会だけ」(馬場伸幸代表/10月16日東京都内の街頭演説)。「維新は結党以来、企業団体献金を受け取っていない」(日本維新の会公式Xが10月22日にポストした新実彰平・参院京都支部長の演説)

 
●たとえば維新の梅村さとし候補(大阪5区)の政治資金収支報告書を見れば、令和3年に日本医師連盟、整形外科医政協議会から400万円。令和4年には200万円を受け取っている。

●大阪維新の会が政治資金パーティーで多額の資金を集め、そこから「寄附金」名目で日本維新の会の各支部に資金を横流ししてきた。2018年は1億円、2019年は2500万円、2020年は2803万円など。(政治資金オンブズマンの公開情報
 

【その2】「政策活動費の廃止」「領収書の公開」⇒5ヶ月前に真逆の主張

 
●政治資金規正法改正が最大の焦点だった今年の通常国会で、最後まで「政策活動費の存続」を主張し続けた野党は日本維新の会だけ。

●政策活動費の領収書の公開さえ「機微に触れる」として拒否し、その公開を10年後にするよう主張して法案に書き込んだのは日本維新の会。公訴期限は5年なので、10年後に不正が発覚しても罪に問えない。政策活動費を温存しブラックボックス化させたのは日本維新の会。(公明党が第三者機関による毎年のチェックを附則に書き込んだことで、この維新の愚策は空文化した)

●維新がしぶしぶ公開した2023年11月と12月の政策活動費、半分以上が幹部による飲食代だった。橋下徹氏も「飲み食い政治のなれの果て」と日本維新の会の現状を批判。(6月22日/関西テレビの「ドっとコネクト」で)
 

【その3】大阪で実現した「改革」を日本全体に、という主張⇒データと異なる公約

 
●税収は伸びていない。2000年から2021年まで大阪府の地方税収の1人当たり額の偏差値は一貫して平均以下で、水準は48~49付近でほぼ横ばい。大阪府の地方税収は20年以上まったく伸びていない。(吉弘憲介『検証大阪維新の会――「財政ポピュリズム」の正体』ちくま新書 第5章)

●GDPも下落。大阪府の1人当たり府民所得は2009年以降、全国平均以下となり、その後は横ばい。2020年には兵庫県の水準を下回り近畿圏で第3位に転落している。(同)

●雇用者報酬も下落。大阪府の1人当たり雇用者報酬偏差値は2000年代初頭は65以上あり全国的にも豊かだった。しかし2011年以降は下落傾向にあり、2020年は過去最低水準の52・1まで低下した。(同)

●大阪は介護保険料が日本一高い。介護保険料基準額の高額ランキングで、全国でもっとも高い自治体の1位は大阪市、2位は大阪府守口市、3位は大阪府門真市。(「NHK NEWSWEB」2024年5月18日

●2024年3月末時点の大阪市統計資料によると、大阪市の要介護認定率は全国平均を大きく上回る27・9%。逆に「健康寿命」は男女ともに全国平均を下回る。(『公明新聞』10月18日「編集メモ」)
 

【その4】公約「医療保険の高齢者負担を3割に」「消費税のみならず所得税・法人税を減税」⇒党内からも反対の声

 
●維新の候補者からも「正直、無理がある」。
「3割負担、これが本当に正しいかどうかは、これは僕も正直無理があるなとは思ってます」(10月11日、摂津青年会議所主催の「大阪7区公開討論会」で維新・奥下たけみつ候補の発言

●日本維新の会国会議員団参議院幹事長が否定。
「僕も消費税減税なんて無意味だと思ってます。公約を全部見ているわけではないので、気づいたら滑り込んでいた。やめさせます」(猪瀬直樹議員の10月22日20:19のXへのポスト/のちになぜか削除
 
 
「日本維新の会」関連記事:
「維新は国政を担う力がない」――鈴木宗男氏インタビュー(全編)
「維新は国政を担う力がない」――鈴木宗男氏インタビュー(ダイジェスト版)

維新「高齢者3割負担」の波紋――「改革」とは真逆の実態
自壊しゆく「日本維新の会」――〝相手陣営に偽装潜入〟の衝撃
離党ドミノが止まらない維新――党の行く末に絶望する議員たち
なぜ維新の「不祥事」は続くのか――中学生への性的暴行で逮捕者
維新、「現職落選」の衝撃――離れ始めた有権者の気持ち
政規法、迷走を続けた「維新」――党内からも不満が噴出
維新の〝不祥事〟は今年も続く――根本的な資質に疑問符
万博でアタマを抱える維新――国への責任転嫁に批判強まる
維新の不祥事は平常運転――横領、性的暴行、除名、離党
維新「二重報酬」のスジ悪さ―まだまだ続く不祥事
やっぱり不祥事が止まらない維新――パワハラ・セクハラ・カネ
維新、止まらない不祥事――信頼を失っていく野党②
「維新」の強さ。その光と影(上)――誰が維新を支持しているのか
「維新」の強さ。その光と影(下)――〝強さ〟がはらむリスクと脆さ

「立憲民主党」関連記事:
党内対立が激化する立憲――焦点は日本共産党との関係
再発防止へ合意形成を図れ――野党の見識が問われている
「立憲共産党」の悪夢ふたたび――立憲民主党の前途多難
立憲民主党を蝕む「陰謀論」――もはや党内は無法地帯
手段が目的化した立憲民主党――信頼を失っていく野党①
立民、沈む〝泥船〟の行方――「立憲共産党」路線が復活か
民主主義を壊すのは誰か――コア支持層めあての愚行と蛮行
旧統一協会問題が露呈したもの――宗教への無知を見せた野党
憲法無視の立憲民主党――国会で「信仰の告白」を迫る
枝野氏「減税は間違いだった」――迷走する野党第一党
2連敗した立民と共産――参院選でも厳しい審判
まやかしの〝消費減税〟――無責任きわまる野党の公約
ワクチン接種の足を引っ張る野党――立憲と共産の迷走

民主党政権とは何だったのか――今また蘇る〝亡霊〟

「日本共産党」関連記事:
共産党、党内に新たな火種――止まらぬ〝粛清〟と退潮傾向
蓮舫氏はなぜ惨敗したのか――ことごとく失敗に終わった戦略
「神宮外苑」を争点化する愚かさ――共産党の扇動に便乗する候補者
蓮舫氏と共産党の危うい距離感――「革新都政」再来を狙う人々
それでも「汚染水」と叫ぶ共産党――「汚染魚」と投稿した候補者
「風評加害者」は誰なのか――〝汚染水〟と騒ぎ続ける人々
共産党VSコミュニティノート――信頼を失っていく野党④
孤立を深める日本共産党――信頼を失っていく野党③
日本共産党と「情報災害」――糾弾された同党の〝風評加害〟
「革命政党」共産党の憂うつ――止まらぬ退潮と内部からの批判
共産党「実績横取り」3連発――もはやお家芸のデマ宣伝
暴走止まらぬ共産党執行部――2人目の古参党員も「除名」
日本共産党を悩ます〝醜聞〟――相次ぐ性犯罪と執行部批判
書評『日本共産党の100年』――「なにより、いのち。」の裏側
日本共産党 暗黒の百年史――話題の書籍を読む
日本共産党と「情報災害」――糾弾された同党の〝風評加害〟
日本共産党と「暴力革命」――政府が警戒を解かない理由
宗教を蔑視する日本共産党――GHQ草案が退けた暴論
宗教攻撃を始めた日本共産党――憲法を踏みにじる暴挙
西東京市長選挙と共産党―糾弾してきた人物を担ぐ
「共産党偽装FAX」その後―浮き彫りになった体質
北朝鮮帰国事業に熱心だった日本共産党の罪


まつだ・あきら●ライター。都内の編集プロダクションに勤務。2015年から、「WEB第三文明」で政治関係のコラムを不定期に執筆。著書に、『日本の政治、次への課題』(第三文明社)がある。