「維新は国政を担う力がない」 ――鈴木宗男氏インタビュー

ライター
松田 明

(写真=共同)

【インタビューの要旨】
①維新の問題の根は経験の浅いトップが強権的に振る舞い、資金の流れも含めてガバナンスが不透明なこと。だから人が育たないし、人が去ってしまう。
②「身を切る改革」と言うが、議員から党に上納金を収めさせているだけで、国政で何一つ実績がない。国政政党としての基本的な能力がない。
③維新の言う「改革」は、単なる「反対のための反対」。トップダウンの全体主義的な体質も含め、じつは共産党とそっくり。
④政治資金規正法改正で自民党を説得したのは公明党。政策活動費の存続にこだわり、領収書の公開さえ10年後に引き延ばした維新は、「改革」に逆行する政党。
⑤自公連立のレールを敷いた1人として、公明党が忍耐強く〝大人の対応〟で連立を守り続けてくれたことに深く感謝している。自民党はそのことを忘れてはならない。

 
 衆議院が解散し、10月15日公示、27日投開票の衆議院選挙へ向け、各党が短期決戦にしのぎを削っている。
 今回の選挙の最大の争点は、やはり「政治とカネ」になるだろう。野党側は、自民党の政治資金収支報告書不記載問題を〝裏金〟と攻め立てている。
 だが、領収書なしで政党が特定議員に資金提供する「政策活動費」等は、これまで公明党と共産党を除くすべての主要政党でまかり通ってきた。立憲民主党は「政治資金パーティーの禁止」を国会で叫びながら、その国会会期中に幹部らが政治資金パーティーを開催しようとしていた。
 日本維新の会にいたっては、最後まで政策活動費の存続を主張し、その領収書の公開さえ10年後に先送りするよう改正案を書き換えてしまった。日本維新の会は2023年の11月と12月の2カ月間だけで約620万円の政策活動費を使っているが、その大半は幹部の飲食代で、しかも1回あたりの参加人数も支払先も黒塗りしている。
 その意味では、野党も含めて「政治とカネ」の問題が厳しく問われる選挙であり、現実に政治改革を前に進められる能力のある政党を見きわめる選挙でもある。
 10月7日、日本維新の会は広島3区支部長の瀬木寛親氏に「不適切な会計処理があった」として、衆院選では非公認にすると決定した。

 なぜ、日本維新の会ではこれほど不祥事が連続するのか。同党の掲げる「身を切る改革」の実態はどうなのか――。1983年の初当選以来、長い政治キャリアを持ち、日本維新の会・国会議員団副代表をつとめながら昨年10月に同党を離党した鈴木宗男・参議院議員に、単刀直入にインタビューした。

※インタビューのダイジェスト版はこちら⇒「鈴木宗男氏インタビュー・ダイジェスト版」

トップの独断性で人が育たない

――日本維新の会は昨春の統一地方選で全国的に大きく躍進しました。しかし、その直後から党の方針や体質に疑問を呈し離党する者、党から処分される者などが続出し、この1年半だけで約40人が離党。不祥事も日替わり週替わりで起きています。こうした異常な事態が続く要因をどう考えられますか?

鈴木宗男・参議院議員 ひとつはですね、馬場代表におもねるというか、ゴマすり。とにかく上からの命令に従う。上の者が正しい判断をすればいいのですけど、間違った判断をしても、みんな従っていく。
 これは鈴木宗男の除名問題がいい例であって、私は何も除名される筋合いじゃないんですね。民主主義は「手続き」ですから、双方の言い分を聞いてしかるべきなんです。維新ではその〝機能〟がなっていません。(※最終的に鈴木氏側から離党し、日本維新の会は鈴木氏を除名処分にできなかった)

 私は国会議員団の副代表として、日本維新の会に4年半いたんです。つまり、代表である馬場氏の次の責任者ですよね。しかし、1回も相談されたことがない。党内の資金の流れも一切開示されない。トップの独断性が強すぎるんです。すべて「馬場-藤田」の意向に従うというかね。民主主義という姿かたちが見えません。

 私は1人でも生きていける議員だからいいのですが(笑)、維新は経験の乏しい4回生以下の議員ばかりですよね。これでは人が育たないし、やる気をなくしてしまう。組織のガバナンスが利いていないから不祥事が多発するんですね。

――党内でのコミュニケーション、風通しはよくないのでしょうか?

鈴木 私が見聞きした範囲で言えば、「馬場-藤田」に群れる連中だけは、特定の場所で飲んだり食事をしたりはしているんです。しかし、それ以外の者は寄り付かないというのが実態だったと思います。風通しが悪いんですね。

 まだ「橋下-松井」体制のときは、いい悪いはともかく、それなりの指導力というかガバナンスはありました。今、馬場代表(大阪17区)にしても以前は堺の市議会議員で、わずか12年、4回生の国会議員生活です。自民党の総裁選を見てもわかるように、意欲はあったとしても、やっぱりトップが4回生程度だと議論にキャリア・経験の差が出てきますよね。
 党として経験が浅いからこそ、本来なら皆で結束しなければならないのに、それができない。

 藤田幹事長(大阪12区)にいたっては名前だけの幹事長で、当選回数2回。そのうち1回は補欠選挙ですから、実質、選挙での当選は1回しかない。
 だからなのか、人事を見ていても、2人は自分たちに都合のいい者しか集めていないというのが実態だと思います。その結果、不祥事で切られる議員だけでなく、党を見限って離党していく者も絶えない。

党内の資金の流れがまったく不透明

――日本維新の会は今度の衆議院選公約で「政治腐敗の浄化」を掲げています。しかし、セクハラやパワハラで告発されたり除名されたりする者だけでなく、政治資金の横領や収支報告書の未提出で除名される者など、維新そのものが「政治とカネ」でも醜聞が絶えません。

鈴木 日本維新の会は「政治とカネ」で深刻な問題を抱えている政党だと思います。お金の透明性、情報開示が足りない。以前、下地幹夫さんが在籍していたときに指摘されたのですが、下地さんは当時、党の大幹部(国会議員団副代表であり選対本部長)でした。
 その下地さんが「党内の金の使い方がまったく明らかにされていない」と言われたんです。しかも、お金が大阪に全部集中しちゃう。日本維新の会は少なくとも約34億円の政党助成金をもらっているんです。では、その34億円の使われ方がきちんと情報開示されているかと言えば、されていない。私はそう思っています。

――党内の民主主義、公平性、お金の透明性、どれをとっても問題が大きいのですね。鈴木さんは1983年の初当選以来、自民党でも閣僚など要職を歴任され、地域政党「新党大地」を結成。2019年6月に日本維新の会に参画され、7月の参議院選挙比例区で当選されました。

鈴木 あえてハッキリ申し上げますが、私は2002年に北海道開発局の工事をめぐって、身に覚えのないあっせん収賄罪で起訴されました。民主党政権時代は上告中の身でしたが与党に参画し、衆議院外務委員長もつとめました。2010年に最高裁が上告を棄却したため、2017年まで公民権停止となります。
 けれども、私はやましいこと、法に触れることは何一つしていません。再審請求を出し、今も最高裁に特別抗告をしています。袴田さん事件のように、検察の筋書きに沿って事件がでっち上げられている。これは最後まで戦い抜く決意でおります。
 そういう経験をしているからこそ、私は何よりも民主主義は「手続き」だと思いますし、情報の公開が重要だという信念なのです。

 私が日本維新の会に加わったのは、安倍首相・菅官房長官の時代でした。維新は保守政党ですから、官邸とのパイプ役として安定させる役割を期待されたのだと思います。
 当時の共同代表だった松井一郎さんから言われたのは、「鈴木先生、北海道のことはお任せするので『新党大地』は残してください」「北方領土問題とアイヌ民族への差別問題も鈴木先生にお任せします」と。

 じつは、私が加わる直前に日本維新の会の丸山穂高議員(当時)が、元北方四島島民のビザなし訪問に同行して、こともあろうに酒に酔って「戦争による奪還」を叫んだり、「俺は女を買いたいんだ」と言って禁じられている外出を試みたりして大問題になっていましたね。党が完全に信頼を失っていたんです。

 私は松井一郎さんとの信義で日本維新の会に加わりました。その約束のもとで任された範囲の仕事を自由にやらせてもらってきたのです。しかし、馬場代表になってからは、そういう経緯すら党内に伝わらなくなった。何も知らされない若い議員のなかには、鈴木宗男に対して「勝手なことをしている」と思った人もいたでしょう。
 外交の世界のブラックジョークで、〝約束はしたけれども、約束を守ると約束した覚えはない〟というのがあります。馬場体制になってからの維新は、まさにそんな感じでした。

――日本維新の会は「身を切る改革」を旗印に、保守層だけでなく比較的リベラルな層にも支持を広げてきました。しかし、直近でも衆議院選候補予定者の事務局長が対立陣営に偽名で潜入していたなど、異常なまでに不祥事が絶えません。前兵庫県知事の問題に象徴されるパワハラ体質、万博をめぐる混乱、国会論戦での迷走ぶりなどで支持率が下落しています。

鈴木 「身を切る改革」と言うけれども、私から言わせれば何も切っていない。国会議員の歳費を2割天引きしているだけです。それを被災地に7億円寄付したと豪語しているけれども、そんなものは「身を切る改革」ではありません。
 では34億円もの政党助成金をどう使っているのかと、私は逆に尋ねたいですね。天引きした議員歳費にしても、これこれを寄付しましたというお知らせは来ます。しかし、その他の使途は明かさない。

 われわれ政治家には、次世代の政治家を育てるという義務があります。私は2019年に日本維新の会で当選して以来、やはり新しい政党で特に若い議員は大変だろうと思い、毎年500万円ずつ党に寄付しました。これは領収書も受け取っている公明正大な政党への寄付です。
 しかし、そのお金が何にどう使われているか、一切報告はありません。私は国会議員団のナンバー2の立場だったわけです。その私にすら、私が寄付したお金はもちろん、党内のお金の収支をまったく報告しないんです。幹部の飲み食いに使われているのでは意味がない。浄財を寄せてくださった支援者に申し訳が立たない。何に使われているかわからないので、3年目には寄付をやめました。

現実には何の実績もない日本維新の会

――党の生みの親である橋下徹氏も、維新の「政治とカネ」については、「自分たちの執行部の金の使い方すら徹底検証できない政党に政府のチェックなんてできるわけがない」「ここまで徹底して隠したがるというのはよほどチェックされたら困る金の使い方をしているのかと疑ってしまう」(10月1日の橋下氏のX)と痛烈に批判していました。
 9月25日におこなわれた維新の国会議員団役員会では、党本部の政策活動費の不透明さなど、執行部の問題点への批判が公然と起きました。

鈴木 維新の人たちが今、さかんに自民党の〝裏金問題〟を騒いでいる。じゃあ、維新のあなた方は自分たちの政治資金の帳尻合わせをちゃんとやっていますか? と、お尋ねしたいですね。一部の幹部だけで、さんざんブラックボックス化した政策活動費を使ってきた維新に、自民党を責める資格はありません。

――「身を切る改革」という美辞麗句で構成員から〝上納金〟だけ納めさせ、親分が裏で好き勝手に組織の金を使うというのでは、もはや政党というよりも何か別の団体の姿を想像させます。

鈴木 日本維新の会に入ってわかったことは、党内にも不協和音があるんです。同じ大阪でも大阪市と堺市ではそれぞれの価値観やプライドも違う。大阪市選出の市議や府議、国会議員からすれば、馬場代表に対しても「堺の市議会議員だった人間が偉そうに」という反発がある。
 そういう内側のバラバラ感を知って、私も唖然としました。一枚岩になって皆で頑張ろうとか、人を育てようという政党文化が、日本維新の会には欠けています。

 密室政治というか、結局は「馬場-藤田」ラインだけでものごとを決め、皆がそれに黙って従っているのです。誰もものが言えなくなっている。私が若い頃から面倒を見ていた議員などからは、今でも党への不満が聞こえてきます。それが離党や不祥事にもつながっている。
 国会での政治資金規正法をめぐる迷走や、自民にすり寄ったり立憲民主にすり寄ったり、そうかと思えば潰してやると息巻いたり。今の日本維新の会の国会議員団には、党内からも不満が噴出していますよね。

――もはや国政政党としての基本的な能力に疑問を抱きます。

鈴木 ご存じのとおり、日本維新の会は大阪の地域政党からスタートして国会にも進出してきましたね。しかし、私から言わせれば国政を担うだけの力量がない。議員の資質が足りない。
 名前は「日本維新の会」で、そのネーミングに惹かれた有権者も多かったでしょう。しかし、所詮は大阪の地域政党でしかないのです。

 逆に言えば、大坂の地域政党であるうちは、まだよかった。「東京に負けるもんか」と言っていればよかった。しかし、国政に進出すれば、オール日本でものごとを考える責務が生じます。
 自民党や公明党には、やはり政策通の議員が多数揃っている。さまざまな意見や価値観があるなかで、合意形成して実現する力量もある。

 維新は「身を切る改革」なんていう歯切れのいいことも言ってきましたね。しかし、国政でこれを実現しましたというのは何かあるでしょうか。「大阪・関西万博」は維新が要望したけれど、当時の安倍さんと菅さんの尽力で誘致できたものです。じゃあ、万博開催を要望した側の維新は、何か汗をかいたでしょうか? どんな努力をしたのか。あと半年後に開幕するのに、いまだに問題噴出でバタバタやっている。

 喝采を浴びるときは「維新がやりました!」と言う。問題が起きると「国の事業だ」と責任を転嫁する。
 維新は「誘致しました」と言うだけで、パビリオンも当初の宣伝どおりにはできない。建設業者が足りないとか言い訳しているけれど、きのうきょう決まったイベントではないのですから。万博をめぐる行き詰まりを見ても、維新の〝基礎体力〟の程度がうかがい知れる。残念ながら、これが日本維新の会の実態だと思います。

 万博の跡地利用についても問題があります。いろいろ観測気球を上げるのはいいけれども、民主主義の基本は「対話」ですよね。さまざまな意見があるわけですから。それをまとめていくのが「手続き」なんです。しかし、結論が先行して「手続き」をないがしろにするのが、維新のやり方だと私は受け止めているんですよ。これじゃ、もたんなと思います。お粗末です。

 本来なら、党内でそういう悪弊を正す声があがっても然るべきでしょう。しかし、日本維新の会は議員1人1人に基本的な力が足りないから言えない。上に逆らえない。
 私は長く自民党にもいました。自民党や公明党は、朝早くから集まって、侃々諤々(かんかんがくがく)ものすごく議論をするわけです。徹底的に話し合う。そこでまとまっていくんですね。

 維新の場合は「こう決めたから従え」というだけです。トップダウンです。今や。そういう体質を批判して離党していく議員も後を絶ちませんね。
 経験の浅い政党なんだし、幅広い識者から勉強して研鑽すればいいものを、幹部の意見に合う学者だけを招いて勉強会をやっている。視野が狭い。政策に実現性もない。
 だから私は、時間の問題で日本維新の会という政党はしぼんでいくと思っています。

維新は共産党そっくりの全体主義

――政治資金規正法の改正をめぐる国会論戦でも、最後まで「政策活動費」の存続を主張し、しかも「領収書の公開は10年後」と法律の付則に書き込ませたのは日本維新の会でした。ところが、法案を通した後で、「政策活動費の廃止」などと言っています。

鈴木 維新はテープレコーダーのように、ことあるごとに「既得権の打破」と言うわけですよ。それを〝改革〟するんだと言う。しかし、そんなのはもはや言葉の遊びです。実態は「反対のための反対」です。異論を許さないトップダウンも含めて、私は日本維新の会は共産党とそっくりだと思っています。右か左かの違いだけで。

 維新は自分たちを〝真の改革政党だ〟と言いますが、真逆です。「改革」を語る資格はない。上が決めたことに黙って従えというのだから、むしろ「全体主義」に近い。
 社会に多様な価値観、多様な利害関係者があるなかで何かを改革するというのは、「話し合い」「合意形成」が不可欠なんです。民主主義ですから。

 日本維新の会が華々しく掲げながら2度にわたって住民投票で否決された「大阪都構想」がいい例です。大胆な〝改革〟をする自分たちと、それに反対する既得権益者という絵を描いてみせたけど、実態は維新の都構想こそ「反対のための反対」の典型なんです。
 だから腰を据えた話し合いや合意形成ができない。トップダウンで決めたことを意固地になって突き進めようとするから失敗する。公明党が維新の思うとおりに協力しないとなったら、平気で公明党を攻撃する。
 これも政党同士の議論なら大いにやればいい。しかし、当時の維新代表は支持者である創価学会員の信仰を侮辱するような発言をしましたね。人間の内心の大切な部分を踏みにじって平気という感覚も、共産党と似ている政党ではないでしょうか。

有権者は厳しい目を持つべき

――そもそも、維新は本当に改革政党なのかという疑問があります。「身を切る改革」と言っても、結局は誰の身を切るのかすら明確ではないように思います。

鈴木 おっしゃるとおりです。トップとそのお気に入りのインナーサークルだけで赤坂あたりで飲み食いして、「馬場-藤田」にツケ回しし、明細も明かさない政党の金で処理している。その原資は本(もと)をただせば政党助成金、つまり税金も入っているわけでしょう。「赤坂で飲み食いする政治家」「ツケ回し」なんていうのは、それこそ60年くらい前の「宴会政治」の時代の政治家の姿ですよ。
 既得権の打破とか、改革とか言いながら、維新がやっていることは、きわめて古い体質の政治そのものなんです。これが、維新に4年半いた私の率直な感想です。

 維新は今になって選挙公約に「企業・団体献金の禁止」を入れています。これまでは、パーティー券の購入など、事実上の企業・団体献金を受けてきました。個人の購入であっても、実際には企業として処理している場合もあります。今後そういうことはしないのか、まずはそこの説明をしてもらいたいですね。
 ましてや維新は関西で知事も市長も持っている。知事や市長は大統領制と同じで絶大な権限を持っています。影響力が大きい。やむなく付き合わざるを得ない企業も多い。関西の有権者は、もっと維新に対して厳しい目を向けるべきだと思います。「言ってることと、やってることが違っていないか」と。

 今回の政治資金規正法改正で、これまで20万円超だったパーティー券購入者の情報公開基準が5万円超になりました。これは寄付の公開基準に合わせたもので、まさに公明党が国民目線で尽力した賜物です。公明党に説得され、自民党内の反対を押し切って、最後は岸田首相が折り合いをつけて決断した。公明党も我慢しながら自民党に熟慮の時間をくれた。これが民主主義の政治なんですよ。
 一方で、政策活動費を存続させ、領収書の公開を10年後にしたのが日本維新の会です。しかも、法律が成立してから政策活動費は廃止するなどと言い出すお粗末さです。あの一連の国会論戦は、どの党が真に改革を成し遂げる意思と能力を持ち、どの党が改革とは程遠いのかをハッキリさせた気がしますね。

公明党は〝大人の対応〟に徹してくれた

――公明党が連立政権に加わって、この10月で25年になりました。鈴木さんは公明党が日本の政治に果たした役割をどう見ておられますか?

鈴木 公明党が連立に参加したのは1999年10月、小渕政権のときでした。橋本首相が1998年の参議院選挙で負けて小渕さんの内閣に変わりました。橋本さんは50%くらいの支持もあったけれど参議院選挙で大敗して過半数割れになった。衆議院と違って政権選択選挙ではないのだけれど、橋本さんは潔く小渕さんに交代しました。

 小渕さんはあまり人気が出ず、しかも参議院で自民党は過半数に遠く及ばない。当時は大銀行すらデフォルト(債務不履行)を起こしかねなかった金融危機で、日本発の世界恐慌が起きることが真剣に危惧されていました。私は当時、自民党で官房副長官でした。

 どうしても政治を安定させなければ、大変なことになる。それで、小渕政権は公明党にお願いをしました。当時の神崎代表と話し合って、まず自民党は小沢一郎氏の自由党と連立します。その半年後に、公明党と連立して、1999年10月に自自公連立がスタートしました。
 公明党が連立に加わってくれたことで、日本は危機を脱しました。

――3カ月後の自民党大会に招かれた神崎代表は「危機的な日本を立ち直らせるために、泥をかぶってでも日本の政治に真正面から取り組まなければならない。政治を安定させて改革を着実に進めなければならない」と挨拶しています。

鈴木 2000年4月に小沢さんの自由党は連立を離脱してしまいます。しかし、公明党さんは政権に残ってくれた。私は、これが日本の政治にきわめて大きな意義を持つ、光り輝く出来事だったと思っております。
 2001年7月の参議院選挙のとき、私は総務局長、今の選挙対策委員長を拝命していました。自民党と公明党とで選挙をやる、その責任者だったわけです。

 その後、自民党を離れて外から25年の歴史を振り返るとき、まずやはり公明党の決断のおかげで日本は危機を免れたという率直な感謝があります。
 同時に、公明党は一貫して〝大人の対応〟をし続けてくれたなと思います。ここは、自分たちが前に出過ぎるとよくないな、一歩引いて我慢したほうがいいな。そういう公明党の〝大人の対応〟のおかげで、これだけ長く自公の連立が保たれてきたと思っているんです。私は自公連立へのレールを敷いた1人として、公明党に申し訳ないという思いでいます。
 この点、私は自民党の若い議員の皆さんにも、そういう歴史の事実をよくわかってもらいたい。公明党がいかに我慢をして連立を守ってくれたか。ここをわからないと、自民党は大変なことになるなと心配しております。

 25年といえば4分の1世紀です。慣れてしまって自公連立が当たり前だと思っている人もいる。あるいは、とくに選挙の強い人は、「自分は公明党の応援がなくても選挙勝てるんだ」と思っているかもしれない。でも、それは自分1人の話です。民主主義はその考えではダメなんです。仲間を助けよう。友党である公明党がまず第一だ。自民党にこういう心構えがなければですね、本当の幅広い合意形成、国民に根差した政治はできません。

(2024年10月10日/参議院議員会館で収録)

※インタビューのダイジェスト版はこちら⇒「鈴木宗男氏インタビュー・ダイジェスト版」

 
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まつだ・あきら●ライター。都内の編集プロダクションに勤務。2015年から、「WEB第三文明」で政治関係のコラムを不定期に執筆。著書に、『日本の政治、次への課題』(第三文明社)がある。