離党理由さえ公表しない無責任さ
千葉市議会の会派「日本維新の会・無所属の会」が、市民の請願を〝自作自演〟して9月定例会に出していたことを認め謝罪した。
守屋聡幹事長が13日の議会運営委員会で、問題の請願に会派所属の桜井崇議員と大平真弘議員の2人が関与していたと説明。「請願そのものがでたらめな書類だった」「すべてが自作自演の請願書」と述べた。(『読売新聞』9月15日)
千葉市議会は17日、請願提出に関わった同会派の桜井崇市議と大平真弘市議に対する議員辞職勧告決議案を可決した。2人が所属する「日本維新の会・無所属の会」は棄権した。
市民の請願を装って〝自作自演〟とは、まさに日本維新の会という政党の体質をよくあらわしている。
そして、党内を覆う「ハラスメント体質」への絶望なのか、「不祥事」の連続で支持率が低迷する「沈む泥船」からのイチ抜けなのか、ここにきて日本維新の会から〝離党者〟が続出しているのだ。
まず、統一地方選で大躍進したはずの2023年に、自らの意思で「離党」したのは以下の面々。
2023年――
4月23日の統一地方選挙で、「日本維新の会」公認候補として東京・中央区議会選挙に当選した白須夏区議。当選した翌月に日本維新の会を離党し、1人会派での活動を始めた。
不思議なことに本人の公式サイトには、離党したことも理由も一切記されていない。もちろん、日本維新の会としても一切公式に発表していない。
白須区議に投票した中央区民の多くは、離党したことさえ知らないのではないか。この非常識と無責任こそ〝維新クオリティ〟である。
7月12日。
神奈川・川崎市議会の三宅隆介市議と飯田満市議が「日本維新の会」から離党した。同会派は3カ月前の統一地方選で1議席から7議席に大躍進したばかりだった。
離党した2人は読売新聞の取材に「党勢拡大ばかりを目指し、新人教育を現場任せにする党のやり方に疑問を感じる」などと党のあり方を批判した。
10月31日。
神戸市議会「日本維新の会」は、辻康裕市議が離党したと発表した。ここでも理由は説明されていない。辻市議は無所属で活動を続けている。
11月2日。
札幌市議会の会派「維新・大地」の会長・脇元繁之市議は会見を開き、会派から離党すると発表した。地域政党・新党大地代表の鈴木宗男参院議員が日本維新の会を離党したことなどが理由という。
11月10日。
香川県でただ1人「日本維新の会」所属の県会議員だった宮岡陽子県議が離党届を提出。同14日に受理された。これによって、香川県議会における維新所属議員はゼロになった。宮岡県議は4月の統一地方選挙で初当選したばかり。
離党理由については「一身上の都合」だけで取材には応じず、文書で「不用意な発言でかつての仲間や日本維新の会に迷惑を掛けるのは本意ではないので、詳細な離党理由の公表の判断は党に任せる」とコメントした。
「日本維新の会」香川県総支部・代表代行の町川順子衆議院議員は16日の会見で、「6月ごろから党の方針や香川県総支部の運営などで意見が対立していた」「党の方針に従うことに納得がいかなかったようだ」と語っている。
当選したばかりの議員が離党するのに、議員も党も明確な理由を有権者に説明できないというのは、あまりにも無責任というしかない。
11月24日。
「日本維新の会」長崎総支部に所属する3人の市議会議員がそろって離党届を提出した。
離党届を出したのは、長崎市議の梅本圭介氏と都留康敏氏、大村市議の中村仁飛氏。3人とも4月の統一地方選挙で初当選したばかりの議員である。
記者会見に臨んだ3人は離党理由として、党幹部からのパワハラがあったなどと告発。総支部の役員会で幹部が「ポンコツ3人を除名したらいい」などと語っている音声データを公開した。
中村市議は、党幹部から家族のいる前で「他党市議と不倫関係にある」などと言われたとし、都留市議は党幹部からLGBTQに対する差別的な発言があったことなどを語った。
この3人の離党で、長崎県内の維新所属議員はゼロになった。
「もう維新の未来はないと思った」
2024年になっても離党ドミノは続く。
1月17日。
「日本維新の会」に所属していた川村みこと足立区議会議員が、昨年12月に離党届を出していたことを自身のXで公表した。「党との方向性の違いから、今後同じ未来を描いて歩んでいくことは難しい」と考えたという。
3月25日。
「日本維新の会」川崎市議団の三浦恵美市議が、離党届を出し無所属になった。大阪・関西万博の開催時期などをめぐって党と意見が対立していた。
5月31日。
土井達也大阪府議が会見を開き、所属する「大阪維新の会」に離党届を出したことを明らかにした。土井府議は2020年から大阪府議会の 第113代 議長をつとめた人物。阪南市内の産業用地造成事業をめぐり、維新公認で当選した水野謙二市長の情報公開のあり方などを問題視したという。
6月6日、大阪維新の会代表の吉村大阪府知事は、「維新を名乗れば、誰もが当選する」「選挙互助会」との文書を配布したなどの理由で土井氏を除名処分にしたと記者団に答えた。
6月17日。
「日本維新の会」横浜市議団・無所属の会に所属していた関嵩史市議が離党。7月1日付で1人会派「横浜ラーメン構想」を立ち上げた。関市議も昨年4月の横浜市議選で初当選したばかり。離党の理由について「活動方針の違いを感じた」などとしている。
6月28日。
世田谷区議会の稗島進区議が、「日本維新の会」東京都総支部である「東京維新の会」へ離党届を提出した。稗島区議は日本維新の会から初めて世田谷区議に当選した、東京の維新における先駆的な人物。2023年4月の統一地方選挙(世田谷区議会選挙)でもトップ当選している。
だが、その維新の支持率は昨年末から急降下。今年4月の衆院補選では、候補者を立てた2選挙区ともに立憲民主党に敗れ、東京都議補選でも2選挙区ともに敗北した。東京都知事選では候補者さえ立てられなかった。
これ以上の党へのダメージを恐れる執行部は、都知事選ではどの候補者の支援にも立たないよう、党内に「静観」を命じた。稗島区議は個人的に石丸候補を支援できなかったことが納得できなかったらしい。
稗島区議は会見で、「維新は地方議員の声を大事にしてきた政党。最近トップダウンが目につくようになった」と党執行部を批判。『週刊現代』のインタビューでは、「もう維新の未来はないと思いました」(2024年7月20・27日合併号)と語っている。
7月24日。
「日本維新の会」は、次の衆議院選挙で宮城3区から立候補を予定していた新人の水戸由美氏が立候補を辞退し、離党すると発表した。
「宮城維新の会」が6月に「党勢拡大の活動が確認されていない」として水戸氏に質問状を送ったところ回答がなく、「健康上の理由として離党する意向」が伝えられたという。
8月26日。
「大阪維新の会」の中川嘉彦府議会議員が議会に辞職届を出し受理された。「一身上の理由」としているが、摂津市長選挙候補者の党の公募に漏れたことで離党したと朝日新聞などで報じられている。8月30日、大阪維新の会の吉村洋文代表(大阪府知事)は、摂津市長選挙の候補者擁立断念を発表した。
9月2日。
愛知・武豊町議会の鳥羽悠史町議が「日本維新の会」を離党し無所属となったと自身のSNSで発表した。党と話し合った円満離党だとしているが、「正式な離党理由は今は言えない」「数カ月後にはお伝えできます」とポストしている。
9月11日。
香川・高松市議会の五条ようこ市議が「日本維新の会」に離党届を出した。「一身上の理由」としかコメントしていない。五条市議は昨年春の統一地方選で初当選したばかり。昨年11月の宮岡陽子県議の離党に続いて五条市議が離党したことで、香川県下の維新所属地方議員はゼロになった。
9月12日。
「衆議院東京都第15選挙区支部長」だった金澤結衣氏が、「日本維新の会」に離党届を提出した。金澤氏は4月の衆院補選東京15区で日本維新の会から立候補していた。国政選挙で党の公認候補だった人物が5カ月足らずで離党するという異常な事態である。
14日に本人がX(旧ツイッター)に公開した離党届には、「私の目指す政治の在り方と日本維新の会の在り方が変わってしまったと感じる様々な出来事があり、また地域の方々からのご指摘も多く頂きました」と記されている。
〝不祥事〟による離党も続々
一方で、「不祥事」がらみで党籍を離れた議員も多い。この1年ほどだけでも以下のとおり。
2023年――
6月3日。
「大阪維新の会」は、大阪府議会代表だった笹川理府議を除名処分とした。笹川府議は過去に後輩の女性議員に対してパワハラやストーカー行為を繰り返し、さらに性的行為まで要求していたことを『週刊文春』に報じられていた。
6月5日。
大阪府議会の橋本和昌府議が「大阪維新の会」に離党届を出した。橋本府議は自身が代表をつとめる2つの政治団体の収支報告書を期限内に提出していなかった。
7月14日。
埼玉県選挙管理委員会は、4月に初当選したばかりの中村美香県議の当選を無効とすることを発表した。立候補の要件である居住実態を満たしていなかったことが発覚したもの。
中村氏は上告していたが、最高裁は2024年3月15日付で上告を棄却している。「日本維新の会」埼玉県総支部は、「信頼に応えられない結果となり心よりおわびする。指導が不足していたことを重く受け止め、再発防止に努める」などと謝罪した。
7月17日。
埼玉・上尾市議会の佐藤恵理子市議が、所属する「埼玉維新の会」から離党勧告を受けた。理由はネットアイドルだった佐藤市議が党総支部への届け出をしないまま、自身の下着姿の写真などをネット販売していたことだという。
7月31日。
兵庫・西宮市議会の森健人市議が「日本維新の会」西宮市議団を離党し、無所属となった。森市議は4月の統一地方選挙で初当選したばかりだったが、『週刊文春』で自身の経営する企業の宅建業法違反疑惑、下請け業者への未払いや脅迫まがいの行為などが次々に報道されていた。
9月4日。
愛知・東海市議会の村瀬進治市議が「日本維新の会」に離党届を出した。村瀬市議は市職員へのパワハラ行為で市議会から辞職勧告を受けていた。
10月4日。
「日本維新の会」の前川清成衆議院議員が辞職した。前川氏は、2021年の衆議院選挙の公示前に、投票を呼びかける文書を不特定多数の有権者に送ったとして、公職選挙法違反の罪に問われていた。大阪高等裁判所は、1審に続いて罰金30万円の有罪判決を下していた。
10月27日。
和歌山県議会の林隆一県議が、県議会会派「日本維新の会」を離党した。
林県議は、議員報酬の一定割合を寄付するという党のルールに従わなかったとして、党県総支部から離党勧告を受けていた。林県議は正当な理由があったとして不服申し立てをしたが認められなかったため離党したという。
林県議の妻は、同年4月の衆議院補選で和歌山1区から出馬し当選した林佑美衆議院議員で、党和歌山総支部の副代表。妻が副代表をつとめる組織からクビを切られたことになる。
11月15日。
千葉・柏市議会の小川学市議が、「千葉維新の会」に離党届を出して受理された。小川市議は8月の市議選で初当選していたが、公職選挙法で定められている居住実態がなかったとして県選管に審査が申し立てられていた。
裁決によると、複数の飲食店の領収書で、日付が店側の控えと食い違ったり、小川氏が「ご飯」と説明した金額が飲料相当だったりした。銭湯の店員は「日付なしの領収書を求められ、10枚ぐらい発行した」などと証言。県選管は「日付を意図的に加筆した可能性が否定できない」と断じた。(『朝日新聞』2024年3月14日)
居住していたように見せかけるため領収書まで偽造していた疑いがあるというのである。「千葉維新の会」は、党紀規則の「政治倫理に反する行為」に該当する行為があったとして11月6日付で離党勧告処分をおこなっていた。
12月5日。
「日本維新の会」和歌山県総支部が、和歌山市議会の志賀弘明市議を除名処分としていた。「身を切る改革」として党が所属議員に求めている議員報酬の一部寄付について、適切な実施報告を行わなかったなどというもの。
12月14日。
和歌山県議会の林隆一県議が「日本維新の会」からの離党にあたって開いた記者会見に許可なく同席したなどとして、党総支部から離党勧告を受けていた和歌山市議会の新古祐子市議が日本維新の会を離党した。
2024年――
2月13日。
北名古屋市議会の小村貴司市議が、パワハラを受けたことなどを理由に「愛知維新の会」に離党届を提出。これに対して愛知維新の会は2月22日に小村市議を除名処分とした。
小村市議は7月10日、除名処分によって精神的な苦痛を受けたとして、同会を相手取り慰謝料など350万円の損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁に起こしている。
3月4日。
「石川維新の会」は、金沢市議会の大西克利市議を除名した。大西市議は昨年4月の統一地方選で当選していたが、今年に入って離党届を出していた。金沢市議会の維新議員はゼロになった。
5月23日。
埼玉県・上尾市議会の津田ひとみ市議が、飲酒後に自転車で単独事故を起こしたとして「日本維新の会」から離党した。
5月24日。
朝倉亮市議が京都市議会議長宛てに辞職願を提出した。朝倉市議は昨年4月の統一地方選挙で初当選したばかり。理由は「健康上の理由」とされているが、本人からも党からも明確な説明はなく憶測を呼んでいる。7月7日に補欠選挙がおこなわれ、自民党の元職が当選。維新の新人は落選した。
6月23日。
「福岡維新の会」は、所属する大木町議会の馬場高志町議を除名処分とした。馬場町議が道交法違反(酒気帯び運転)容疑で現行犯逮捕されたことによるもの。馬場町議は町議会から2度にわたる辞職勧告決議を受けているが拒否し、今も町議として在籍している。
8月21日。
「日本維新の会」に所属する兵庫・姫路市議の岡部敦吏市議が離党した。委員会や視察などで遅刻が相次ぎ、「市議としての規律を欠いた言動を複数回、確認した。注意をしたが改善が見られなかった」(兵庫維新の会)として、離党勧告が出されていたもの。岡部市議は昨年4月の統一地方選で初当選したばかり。
昨年の統一地方選挙のあと、この1年半足らずのうちに、自ら離党した議員は把握できただけで19人。不祥事等で党から切られて離党した者を合わせると36人。もはや、マトモな政党とは呼べない異常な数である。この先も〝離党ドミノ〟はますます加速していくのではないか。
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