G7サミット広島開催へ――公明党の緊急提言が実現

ライター
松田 明

多くの成果上げた日米首脳会談

 5月22日から24日にかけて、米国のバイデン大統領が就任後初めて日本を訪問した。大統領に就任して初めてのアジア訪問として韓国と日本を選んだもの。
 ロシアによるウクライナ侵攻の渦中、また北朝鮮がミサイル発射実験をくり返すなかでの歴訪であり、公明党の山口那津男代表は23日夕、同日におこなわれた日米首脳会談について次のような見解を語った。

一、日米首脳会談には二つの意義がある。一つは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持していく重要性を確認したこと。二つ目は、インド太平洋の平和で繁栄した地域を確保していく重要性を共有し、両国が主導的役割を果たしていくことを確認したことだ。米国が、この地域に対する関与を一層強めていく意思を明確にしたことが大きな意義だ。

一、韓国で新しい大統領が誕生し、オーストラリアでも新しい政権、新首相も誕生した。このタイミングで、バイデン大統領が韓国、日本を相次ぎ訪問し、日米首脳会談を行うとともに、24日にはインド、オーストラリアを加えた「クアッド」首脳会合も開かれる。この点も、同地域に米国が関与していく重要性を示すものだ。今回の日米首脳会談は、多岐にわたる成果を生んだ。大いに評価したい。(「公明ニュース」5月24日


 国連憲章では国連安全保障理事会について「国際平和と安全維持の主要な責任を負う」と定められている。本年1月以来、安保理はウクライナ情勢をめぐる緊急会合を十数回開催してきたが、非難決議案は常任理事国であるロシアの拒否権で否決。
 ロシアが議長国となる会合で各国代表がウクライナ侵攻を回避するよう訴えている最中に、常任理事国であるロシアが国際法に違反する侵略戦争を開始した。
 今般の日米首脳会談では、国連安保理の機能不全と改革の必要性を訴えた岸田首相に対し、バイデン大統領は賛同。安保理改革が実現したのちに日本の常任理事国入りを支持すると表明した。

経済・人道分野での多国間連携

 ロシアはウクライナ侵攻に乗じて、極東でも動きを活発化させている。3月下旬にはクリル諸島(北方領土と千島列島)で3000人以上が参加する大規模な軍事演習を実施。北方領土の軍事要塞化も進んでおり、4月5日には国後島・択捉島での新たな軍事演習の写真も公開された。
 5月24日に首相官邸で開催されたクアッド(日本・米国・オーストラリア・インドによる連携枠組み)首脳会議では、東・南シナ海での中国による「現状変更の試み」を念頭に、「あらゆる威圧的、挑発的、一方的な行動に強く反対する」とした共同声明が出された。
 今回の日米首脳会談ならびに4カ国首脳会議においては、安全保障の問題だけでなく経済分野での連携も大きな比重で議論されている。
 クアッド首脳会議でも、インド太平洋地域で今後5年間に500億ドル以上のインフラ支援・投資、対外債務に苦しむ国々の能力強化、4カ国間での衛星情報の提供、人道支援・災害救援パートナーシップの創設を進めることが合意された。
 米国のトランプ前政権が環太平洋連携協定(TPP)から離脱したことによる空白を埋めるため、バイデン政権は新たに13カ国(日本・米国・オーストラリア・インド・韓国・ニュージーランド・インドネシア・シンガポール・マレーシア・ベトナム・タイ・フィリピン・ブルネイ)によるインド太平洋経済枠組み(IPEF)を東京で発足させた。
 岸田首相はこれを支持して参加したが、首脳会談後の記者会見では米国が将来的にTPPに復帰することが望ましいと述べている。

「核兵器不使用」へのサミット

 公明党は首脳会談に先立つ18日、岸田首相に「核兵器の不使用の記録」を継続させるため、明2023年に日本が開催国となる先進7カ国首脳会議を被爆地・広島でおこなうよう緊急提言していた(参考記事:核兵器不使用へ公明党の本気――首相へ緊急提言を渡す)。
 今回の日米首脳会談では、岸田首相から広島開催の意向がバイデン大統領に伝えられ、バイデン大統領もこれを支持した。
 山口代表は記者会見で、広島開催の公表に先立って岸田首相から電話があったことを述べた。

一、来年のG7首脳会議を広島で開催するとの公表に先立ち、岸田首相から電話で「先に公明党から要請を受けていたG7広島開催でG7各国の賛同・了解が得られ、バイデン米大統領から共同会見での公表に賛同を得られた」と話があった。

一、公明党の要請は、「核兵器の不使用の記録」を継続させるため、来年のG7首脳会議を被爆地・広島で開催して被爆の実相をG7首脳と共有し、核軍縮・不拡散、「核兵器のない世界」へ議論を深めていく機会にすべきという趣旨だ。岸田首相も「日本が核兵器のない世界へリーダーシップを取る。その最もふさわしい場所が広島である」と明確にしていた。(「公明ニュース」5月25日

 さらに山口代表は、G7には核保有国と非保有国の主要なリーダーが集うことを挙げ、「核兵器のない世界へ共に役割を果たす共通認識がつくられることを大いに期待したい」と述べ、その準備と成果のために公明党も協力する旨を語った。
 日米首脳会談で岸田首相は防衛費の拡充を表明している。これは日米が安全保障の上で緊密に連携することを国際社会に発信しようとするものだろう。
 ただし、少子高齢化が進み税収が増えないなかであり、冷戦時代につくられた陸海空の人員配置を抜本的に見直し、宇宙やサイバー空間といった新たな分野が登場する今日の安全保障に効果的に転換する必要もある。
 自民党の一部には数値目標ありきの議論があるのに対し、公明党は憲法の精神を踏まえ専守防衛の枠内で緻密に議論を積み上げていくべきだという立場を崩していない。
 安全保障については2018年に策定された「防衛計画の大綱」(およそ10年後までの基本方針)と「中期防衛力整備計画」(5年ごとの政策、装備調達を定めたもの)にも公明党は連立与党としてしっかりコミットしている。
 岸田首相の示した決意は決意として、実際には予算の裏付けとなる「大綱」「中期防」を無視することはできない。
 わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す時代だからこそ、政権のなかでの公明党の発言力を強くしていくことが重要だ。

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