立憲民主党はどこへゆく――左右に引き裂かれる党内

ライター
松田 明

一度は決まった「共産党外し」

 右に行くべきか、左に行くべきか、立憲民主党内が揺れている。
 2月14日、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、有志の会の野党4会派の国会対策委員長代理らが会合を開き、今後、国会内で連携を深めていくことを確認し合った。
 会合終了後に会見に臨んだ立憲民主党の奥野総一郎・国対委員長代理によれば、立憲民主党が呼びかけた会合で、「できれば毎週開催したい」と決まったという。
 これまで立憲民主党は日本共産党、国民民主党など主要野党との国対委員長会談を継続していた。ただ、ここには日本維新の会は含まれていなかった。
 昨秋の総選挙後、国民民主党がこの定期会談から抜けることを表明。立憲民主党の泉代表が日本共産党との連携を「白紙」に戻すと発言して以来、国対委員長会談の定例開催が見送られたままだった。

昨年10月の衆院選後に立憲や国民のほか共産党も参加する「野党国対委員長会談」の枠組みがなくなり、野党の協力体制構築が課題だったが、共産が外れる形となった。(「朝日新聞デジタル」2月15日

 立憲民主党が日本維新の会を〝野党〟としてこれと連携する動きを見せ、しかも日本共産党を外したことに、共産党の小池書記局長は14日の会見で、

共産党を外して維新を『野党』として扱うのであれば、野党の立場が根本から問われることになる(『しんぶん赤旗』2月15日

と猛反発した。

一夜で方針撤回するお粗末

 すると一夜明けた15日、なぜか立憲民主党はあわてて方針を撤回。国対委員長である馬淵澄夫氏が日本共産党などに謝罪したことを明らかにした。

立憲の泉健太代表は15日に馬淵氏らに見直しを指示し、自身のツイッターで「立憲は、共産党を除外することも、維新と組むことも、考えておりません」と釈明の投稿をする事態に追い込まれた。(「朝日新聞デジタル」2月16日

 立憲民主党が発起人となり前日に国対委員長代理レベルの会合で合意して会見までしたことを、翌日に党代表が撤回し、国対委員長が謝罪に回るという党内ガバナンスのお粗末さ。
 しかも日本維新の会には謝罪すらないとして、維新の馬場伸幸・共同代表は自身のツイッターで、泉代表の先のツイートにかぶせるかたちで、

「朝令暮改」とはあなた達の事でしょう‼️

またこちらには何の説明も謝罪もなく個人プレイだったとか言うんでしょうね‼️
2月15日の馬場氏のツイート

と皮肉たっぷりに投稿した。

共産との連携は「あり得ない」

 騒動があった15日、NHKは別の動きを報じている。連合傘下の労組から支援を受ける立憲民主党と国民民主党の議員ら約30人が、定期的に意見交換の会合を持つことを決めたというものだ(「NHK NEWS WEB」2月15日)。
 立憲民主党内は日本共産党と「閣外協力」すると公言するまで連携を深めたことで、昨秋の衆院選で大敗した。
 立憲民主党と日本共産党の「パーシャル(部分的)な連携」については、連合の前会長だった神津里季生(こうづ・りきお)氏も昨年6月に「あり得ない」(6月23日都内の講演で)と拒絶反応。
 その後、両党が「限定的な閣外協力」を発表したことに、新会長になった芳野友子氏も「あり得ないことはあり得ない」(昨年11月18日の定例会見)と、重ねて拒絶を明言していた。
 衆院選で立憲民主党が敗北したことについて芳野会長は、日本共産党と連携を深めたことで連合傘下の組合員の票が「行き場をなくしてしまった」と批判。
 その票が国民民主党や日本維新の会に大きく流れたことから、立憲民主党内には日本共産党との連携を解消して国民民主党と連携し、できればひとつの党にまとまりたいと考える動きがある。
 14日の国対委員長代理クラスの定例会合という話も、こうした党内の空気を反映したものだったのだろう。

労組にも野党離れが進む

 連合は17日の中央執行委員会で、今夏の参院選について「立憲民主党、国民民主党と連携をはかる」と表明。あえて「支援」と言わず「連携」にとどめた。

立民が共産党と共闘した衆院選の反省を踏まえ「目的や基本政策が大きく異なる政党と連携・協力する候補者は推薦しない」と明記した。
支援の基準は「人物重視・候補者本位で臨む」との方針を示した。(『日本経済新聞』2月17日

 具体的な党名こそ挙げていないものの、日本共産党と連携・協力する候補者は推薦しないとクギを刺したのだ。
 民主党政権が耳あたりのよいマニフェストを羅列しながら、結局は画餅のままで政権から転落したのは10年前の2012年。
 以後も、民主党は自分たちの失敗を反省するどころか迷走を続けた。2015年秋からは日本共産党と連携を深め、小池都知事が「希望の党」を立ち上げると一晩でそれまでの主張を放棄して、ここに乗り移ろうとして分裂した。
 立憲民主党はさらにイデオロギー政党化して日本共産党とふたたび連携を深め、その結果が昨年の衆院選での大敗だった。
 連合傘下の組合員のなかからは、もはや立憲・国民への信頼感そのものが薄まりつつある。

連合が組合員を対象に実施した政治アンケート調査では16年に旧民進党支持が39%、支持政党なしが35・6%だったのに対し、19年は支持政党なしが36%で、旧立憲と旧国民の支持を合わせた34・9%を上回った。自民党支持も17・3%から20・8%に増加した。立憲関係者は「自民支持が50~60%の民間労組もある」と打ち明ける。(『毎日新聞』2月17日

 立憲民主党内には日本共産党の協力をアテにして今夏の参院選で共闘しようとする勢力と、日本共産党と一線を画して保守的な野党と連携したいと考える勢力がある。先のドタバタ劇が物語るように、そもそも執行部のガバナンスが効いておらず、党としてどこに向かうのか党内の議員や支持者にもよく見えない。
 政権交代を掲げる野党第一党が、綱領に「社会主義・共産主義の社会」の実現を掲げる政党と手を組むというのであれば、有権者からの信望はますます失われていくだろう。

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