※写真は、民主党政権時代の枝野官房長官(当時)
知れ渡った「敵の出方論」
日本共産党の志位委員長は、9月8日の第3回中央委員会総会で、同党のいわゆる「敵の出方論」について、
この表現は使わないことを、中央委員会総会の決定としても、明確にしておきたいと思います。(『しんぶん赤旗』9月9日)
と述べた。方針を撤廃するのではなく、あくまで〝表現は使わない〟らしい。
最近にわかに注目を浴びている、日本共産党の「敵の出方論」とは何か。
日本共産党は1951年の第5回全国協議会で「武装闘争」方針を決定。翌52年、札幌で警官を射殺した「白鳥事件」、皇居前広場で群衆が暴徒化した「血のメーデー事件」、名古屋で火炎瓶を持った数百人が暴徒化した「大須事件」などを引き起こした。
この一連の凶悪事件をうけて、同じ年につくられたのが「破壊活動防止法(破防法)」であり、公安調査庁なのだ。
以来、民主党政権だった時期も含めて、公安調査庁はオウム真理教や過激派組織と並んで日本共産党を〝調査対象団体〟としてきた。
公安調査庁のウエブサイト上には、こう明記されている。
その後、共産党は、武装闘争を唯一とする戦術を自己批判しましたが、革命の形態が平和的になるか非平和的になるかは敵の出方によるとする「いわゆる敵の出方論」を採用し、暴力革命の可能性を否定することなく、現在に至っています。
こうしたことに鑑み、当庁は、共産党を破壊活動防止法に基づく調査対象団体としています。
驚くべき枝野発言
志位委員長の発言について記者から問われた加藤官房長官は、9月14日の記者会見で、
日本共産党の、いわゆる敵の出方論に立った暴力革命の方針に変更はないものと認識している。
これまで国会答弁、質問主意書(に対する答弁書)などで累次にわたり明らかにしており、志位氏の発言によって、政府の認識は何ら変更するものではない。
との政府見解をあきらかにした。
一方、あの民主党政権で官房長官だった立憲民主党の枝野代表は、この従来からの政府の立場について記者から質問され、衆議院選挙で政権交代した場合、変更する可能性に言及した。
国会内で記者に「枝野内閣で変更するのか維持するのか」と問われ、「少なくても私は、今、共産が暴力革命を目指しているとは全く思っていない」と述べた。(『産経新聞』9月16日)
日本共産党の志位委員長は、16日の自身のツイッターで、この産経新聞報道を引用し「心強い発言です」と述べている。
しかし、枝野代表の発言は不可解である。
まず「少なくても私は」というのは、立憲民主党としてではなく、あくまで個人的な見解であることを強調したのだろう。政権交代をめざして、この衆議院選挙で野党共闘を組む立憲民主党としてはどう考えているのか。党代表であるなら、本来そこを答えなくてはならないはず。
しかも「今、共産が暴力革命を目指しているとは全く思っていない」という言い方は、過去においてどうであったかはさておき、という意味なのか。
民主党政権時代も、公安調査庁は一貫して日本共産党を〝破防法に基づく調査対象団体〟としてきた。
その政府の官房長官だった枝野氏が、ここにきて「今~全く思っていない」と言うのなら、民主党政権時代と現在とで、180度認識を変えた理由を説明すべきである。
民主党政権時代から今日に至るあいだに、日本共産党の何がどう変わったから、枝野氏は「今、共産が暴力革命を目指しているとは全く思っていない」と言うのだろうか。
似たもの同士の立憲と共産
枝野氏を筆頭に、現在の立憲民主党の主要メンバーは、あの民主党政権の要職にあった人たちだ。
その自分たちが民主党政権時代に決めた「消費税率引き上げ」「辺野古新基地建設」「原発再稼働」などを、今回の衆議院選ではことごとく〝反対〟と掲げている。
そして今度は、日本共産党に対する認識まで、民主党政権時代とは真逆のことを言う。
有権者の歓心さえ買えれば、なんでもあり。こんな無責任な人たちに政権を担う資格などない。
9月19日に投開票がおこなわれた大阪府阪南市の市議会議員選挙(定数14)で、日本共産党はひとりも当選できず議会での議席を失った。
阪南市といえば半年前に、日本共産党が偽装FAXを送信した舞台となった場所だ。
3月16日、日本共産党大阪府委員会の矢野忠重・阪南地区副委員長は、公明党の〝40年来の支持者〟を名乗って公明党大阪市議会の議員たちにFAXを送信。目前に迫っていた条例案の採決に「反対」しなければ、今後いっさい支援しないと脅迫した。
このFAXは、日本共産党の阪南地区委員会事務所から送信されていた。本人は非通知設定にすればバレないと思い込んでいたのが、発信者名がFAXに印字されたことで偽装工作が発覚したものだ。
驚いたことに、この矢野忠重氏は、過去3回の衆議院選挙に日本共産党公認候補として大阪18区から立候補していた。その前には泉大津市長選挙や大阪府議会議員選挙にも出馬している。
この幹部による信じがたい謀略が明るみになっても、日本共産党は阪南地区委員会に、
地区常任委員会は、ただちに矢野忠重を副委員長から解任するとともに、公明党市会議員団への謝罪文(別紙参照)を出しました。文書は、20日に届けましたが、直接お会いすることは出来ていません。(「公明党大阪市議への「要望書」の送付について」)
との「声明」を出させただけで、党本部も大阪府委員会も謝罪すらしていない。同党の悪質さと謀略体質を物語っている。
民主党政権として決定した重要政策を、まるで自分たちは無関係であるかのように平然と覆してくる立憲民主党。
過去に「武装闘争」路線を決定し、殺人事件や騒乱事件を起こしたからこそ破防法が制定され公安調査庁が設立されたにもかかわらず、
党が分裂した時期に、分裂した一方の側に誤った方針・行動がありましたが(『しんぶん赤旗』9月15日)
などと、仲間割れした相手が勝手にやったことだと言い逃れる日本共産党。
このような政党が、今や一体化して政権奪取を図ろうとしているのだ。有権者は絶対に騙されてはいけない。
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