立花隆氏の『日本共産党の研究』
幅広い分野で取材と執筆をつづけ、「知の巨人」と称された立花隆氏の逝去が先ごろ公表された。
立花氏の関心は多岐にわたった。政治分野では、現職の首相の金脈を暴いた『田中角栄研究』と、共産党の実像に迫った『日本共産党の研究』が代表作だ。
リンチ事件など暗部を詳細に追った『日本共産党の研究』の「序章」は、冒頭でこう触れている。
共産党が、〝暴力革命などというものは、共産党の方針とは縁もゆかりもありません〟といくら強調しても、〝いや、あれは羊の皮をかぶったオオカミだ、いざとなれば暴力革命をやるのだ〟との見方があとをたたない。(『日本共産党の研究(一)』講談社文庫)
立花氏が『日本共産党の研究』を月刊誌『文藝春秋』に連載したのは1976年から77年の2年間。
それから45年が経った今も、日本共産党は本質的に変わっていない。
警察庁が刊行しネット公開している『焦点269号 警備警察50年』は、「暴力革命の方針を堅持する日本共産党」という項目を特記している。
また、公安調査庁も「共産党が破防法に基づく調査対象団体であるとする当庁見解」を公開。オウム真理教や過激派と並んで日本共産党への警戒を継続している。
革命の形態が平和的になるか非平和的になるかは敵の出方によるとする「いわゆる敵の出方論」を採用し,暴力革命の可能性を否定することなく,現在に至っています。(「公安調査庁HP」)
日本国憲法に反対した政党
近年の日本共産党は、ソフト路線で「平和の党」「護憲の党」を演出している。そのイメージ戦略をすっかり信じている人も少なくない。
けれども事実として、民主党政権時代も含めて、警察庁も公安調査庁も同党を〝暴力革命の可能性〟を否定しない集団として警戒し続けている。
しかも「護憲の党」どころか、1946年8月に今の日本国憲法が帝国議会で採択された際、唯一これに政党として「反対」したのが日本共産党なのだ。
共産党は反対討論で「羊頭狗肉の憲法」「わざわいを将来にのこす憲法」と批判し、
当憲法が可決されたのちにおいても、将来当憲法の修正について努力する(「帝国議会議事録」衆議院本会議 昭和21年8月24日)
と、憲法の改正を主張して演説を締めくくった。
日本共産党の綱領には、今もはっきりと、
発達した資本主義の国での社会主義・共産主義への前進をめざす(日本共産党綱領)
とある。
日本国憲法とは異なる「社会主義・共産主義」の体制をめざしながら、一方で「憲法を守る」というのは矛盾もはなはだしい。
手段を選ばない謀略体質
思想・信条は各人の自由であるし、「労働者階級による一党独裁の社会」を望みたい人は望めばいいと思う。
しかし、問題は日本共産党の体質だ。
明治学院大学の川上和久教授は、こう警鐘を鳴らす。
「共産主義のためならば何でも許される」「目的のためには手段を選ばない」。これが共産党の正体です。(『日本共産党の矛盾と欺瞞【改訂版】』)
たとえば共産党の立候補予定者が、選挙期間の前から氏名の入ったタスキを掛けて街頭に立つのは、もはや常習化している。
公職選挙法では「候補者等の氏名又は当該公職の候補者等の氏名が類推されるような事項を表示する文書図画」を選挙期間以外に掲示することを禁止。
東京都議選にあたっても、2020年12月23日、東京都選挙管理委員会事務局長名で各会派に、
公職の候補者等の氏名等を記載した「たすき」の着用や、街頭演説の際に公職の候補者等の氏名等を記載した看板やのぼり等を掲示することなどはできません。(「令和3年任期満了による東京都議会議員選挙に係る公職の候補者等の政治活動用ポスター等の取扱いについて)
と明記した文書が配られた。
それにもかかわらず、日本共産党はこれを守らない(togetter「日本共産党の名入りタスキ 公職選挙法違反の疑い?」)。
また2021年3月には大阪で、他党の支持者になりすました〝偽装FAX〟を送り、法案の採決を曲げさせようとした謀略事件が明るみに出た。この送信者は、過去3回も衆議院選の候補者になった同党大阪府委員会の幹部。FAXは共産党の地区委員会事務所から送信されていた(WEB第三文明「『共産党偽装FAX』その後―浮き彫りになった体質」)。
民主主義を破壊する政党に、そもそも政権批判などする資格はない。
接種遅らせた〝ポンコツ〟政党
コロナ禍では、ワクチン確保や接種のための第2次、第3次補正予算に共産党だけが反対。ワクチン不安を煽って、実施困難な大規模国内臨床試験を要求するなど、立憲民主党と一緒に国の接種開始にブレーキをかけた。
そのために政府は「特例承認制度」の活用を断念。3カ月も日本の接種開始が遅れたことを、朝日新聞系のアエラドットさえ「戦犯」「立憲、共産党もポンコツ」と厳しく断罪している。
しかし、ワクチン慎重派だった立憲や共産党はその後、国会で豹変し、菅政権のワクチン接種の遅れを舌鋒鋭く追及した。(「AERAdot.(アエラドット)」6月17日)
私たちの社会には、多様な価値観や意見、利害が存在する。刻々と変化する複雑な国際情勢もある。そのなかで合意形成し、社会の安定・安心をつくり出していくこと。それが政治の果たす責任だ。
ゼロか百かの極端な空論をかざしても、社会を分断し、不安定にするだけなのだ。
意見の異なる人々と、いかに合意形成していけるか。課題を見つけ出し、利害関係者を説得し、改善策を考え、それを実行する財源をどう捻出するか。
日本共産党には、これができない。ひたすら「革命」のために、弱者の味方のように振る舞いながら、不安、不満、怒りを煽り立て、社会を分断することで勢力を伸ばそうとする。
こんな危うい政党のプロパガンダに騙されてはいけない。
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