「生理の貧困」打開へ――女性の声受けとめた公明党

ライター
松田明

5人に1人が困難抱える

 東京都品川区立の小中学校で、この4月から女子トイレに無償の生理用品の設置がはじまった。
 これは防災備蓄用品のひとつとして区が保管していたもののうち、交換期限が近づいているものを有効活用したもの。
 世界的にも〝生理の貧困〟への啓蒙と取り組みがはじまっているなか、3月18日に公明党の伊藤こういち都議と品川区の公明党女性区議たちが品川区の濱野健(はまの・たけし)区長に申し入れしたことがきっかけだった(「コレカラしながわイノベーション」3月19日のツイート)。
 この品川区の取り組みは各メディアでも大きく報道された。
 日本では、女性が年間に購入する生理用品のコストは2万円強といわれ、さらに鎮痛剤や関連用品まで含めると負担はさらに大きくなる。
 とりわけコロナ禍で家計の収入が減った所帯では、必要な生理用品を買えない女性たちが少なくない。
 任意団体「#みんなの生理」によるインターネット調査では、5人に1人の若い世代が金銭的理由で生理用品の購入に苦労している実態が浮き彫りになっていた。
 こうしたことから「#みんなの生理」は、2020年10月1日に生理用品を軽減税率の適用対象に含めてほしいという4万人近い署名を、与党である公明党に提出していた。
 厚労省が定めた「女性の健康週間」(毎年3月1日~8日)を迎え、公明党は21年3月2日、党青年委員会と女性委員会が連携して、若い世代の声を直接聞く「ユース&ウイメンズトークミーティング」をオンラインで開催。
 20代、30代の女性から生理をめぐる悩みなどを聞いた。また「#みんなの生理」の谷口歩実(たにぐち・あゆみ)共同代表に講演をお願いした。

突破口ひらいた公明党

 3月4日。参議院予算委員会で公明党の佐々木さやか議員は、次のように政府に問いただした。

 今、世界各国で女性の月経に関する生理の貧困という問題について動きがございます。生理の貧困とは、生理用品を買うお金がない、また利用できない環境にあることを指し、発展途上国のみならず、格差が広がっている先進国でも問題になっております。
 例えば、イギリスでは2020年から全国の小学校、中学校、高校で生理用品が無償で提供されており、フランス、ニュージーランド、また韓国などにおきましても同様の動きとなっております。
 この問題は日本でも無関係ではございませんで、日本の任意団体が行ったオンラインアンケート調査によりますと、日本でも5人に1人の若者が金銭的理由で生理用品を買うのに苦労したと、こうした結果が出ております。また、個別の事案といたしましても、貧困の中で購入ができない、またネグレクトなどによって親から生理用品を買ってもらえない、こういう子供たちがいるということも聞いているところでございます。
 日本においても、この生理の貧困の問題について、女性や子供の貧困、児童虐待などの観点から実態を把握し、学校での無償配布など必要な対策を検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。(「参議院予算委員会」議事録

 これは、「生理の貧困」について日本の国会で初めて取り上げられた質問となった。
 答弁に立った丸川珠代内閣府特命担当大臣は、

 経済的な理由で生理用品を購入できない女性や子供がいるという生理の貧困の問題に対応するため、海外では生理用品の無料配布などが行われているということを伺っております。
 我が国でも、コロナの感染拡大によって女性が特に大きな影響を受けているということも踏まえ、文部科学省、また厚生労働省など関係省庁とも連携をしながら、今後何ができるかということを検討してまいりたいと思います。(同)

「チーム3000」の連携

 画期的な政府答弁を引き出したことで、まず地方自治体が動きはじめた。
 じつは、ここで大きく機能したのが、地方議員と国会議員がフラットに綿密に連携する公明党の「チーム3000」だった。
 3月9日には、公明党豊島総支部(総支部長=長橋けい一都議)が豊島区に対し、「防災備蓄品の生理用品を必要な人に配布すべき」と要請。高野区長から「必要としている人に提供する」との回答を引き出した。
 豊島区は3月15日を皮切りに、備蓄していた生理用品の無償配布を開始した。
 3月12日には、都議会公明党(東村くにひろ幹事長)が、都の藤田裕司教育長に学校における生理用品の無償提供などを緊急要望。
 3月15日には、公明党の竹内譲政務調査会長らが菅義偉首相に対し、「追加の生活支援・雇用対策についての緊急提言」を申し入れた。主な内容は、

 ①子どもの数に応じ給付金支給
 ②ひとり親家庭の自立支援強化
 ③無利子の特例貸し付けを延長
 ④雇用支援強化へ職業訓練充実
 ⑤女性の貧困問題の実態を把握

で、とくに女性の貧困問題の実態把握と必要な対策の検討を求めている。
 菅首相からは、

阿吽(あうん)の呼吸で対応したい。(「産経新聞電子版」3月15日

との考えが示された。
 豊島区の場合は、たまたま防災備蓄品として保管していた生理用品の交換時期が近づいていたため、すぐに対応ができた。
 ただ、区市町村によっては交換したばかりであるなど状況が異なる。
 3月17日の東京都議会では、やはり公明党の松葉多美子議員がこのことを指摘し、都が持っている防災備蓄品の活用を要望。都からも積極的な対応の意向が示された。

3週間弱で政府が閣議決定

 3月23日、政府は新型コロナウイルス対策で、個人や事業者への支援策のため、今年度の予備費から2兆円余りの支出を閣議決定。
 このなかで「女性に寄り添った相談支援等に必要な経費」として13億5000万円を計上した。
 女性を支援するNPOなど民間団体の活動を後押しすると同時に、交付金を活用した生理用品の購入も可能になった。
 佐々木議員の国会質問から3週間弱でここまで政府が動いたのは異例。
 その速さの背景について、公明党参議院幹事長の谷合正明議員はツイッターで、

参院予算委員会の基本的質疑(3月4日)で佐々木さやか議員が、生理の貧困を取り上げた時はまさか1ヶ月以内にここまで動くとは予想しませんでした。基本的質疑は総理、全閣僚が出席する場なので、その質問を全省庁に聞かせるという意義もあったと思います。(3月24日のツイート

と記している。
「#みんなの生理」の谷口共同代表は、

活動を続ける中で生理用品の購入に苦労している若者が多いことは感じていたが、アンケートの結果は想像以上だった。「トイレットペーパーで代用している」など衝撃的な声もあった。

関わりを持った当初から、公明議員は「一人の声を吸収しよう」という思いを持って話を聞いてくれていると感じた。そうした思いが迅速な行動として表れ、国や自治体の支援につながったのだと思う。(「公明ニュース」3月25日

と率直な声を寄せている。
 3月29日には、超党派の国会議員が集まった。

今、政治が“生理”に目を向けている。3月29日、公明党の呼びかけで、自民党、国民民主党の議員らが参加した「生理の問題について話を聞く会」が国会内で開催された。(「FNNプライムオンライン」3月29日

 すでに、この生理用品の無償配布の動きは、全国各地の自治体に波及しはじめている。
 もっとも声を上げにくかった女性の切実な問題を、公明党の「小さな声を聴く力」が拾い上げ、「チーム3000」のネットワークで迅速かつ的確に、国と地方自治体を動かしたのだった。

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