「40年来の支持者より」
さる3月16日、10数人の公明党大阪市議会議員宛てに、あいついで1枚のFAXが届いた。手書きの文字で文面はどれも同じ。
広域行政一元化条例に
反対して下さい。
賛成したら公明党に今后一切
投票しません。40年来の支持者より。
差出人は匿名で「40年来の支持者」と名乗っている。なるほど、ふつうは「今後」と書くところを「今后」と書くなど、年輩の人の筆跡を思わせる。
長年の公明党支持者からの抗議とあれば、受け取った市議団も言葉を尽くして説明をしなければならないだろう。
ところが受け取った市議たちは奇妙なことに気づいた。FAXには送信日時とともに送信者の情報が印字される。そこには、
日本共産党阪南地区委員会
と記されていたのだ。
公明党の「40年来の支持者」が、なぜわざわざ共産党の事務所からFAXを送信したのか。もしや、共産党阪南地区委員会には公明党を熱心に支持している共産党員がいるのか。
あまりの不可解な事態に、受け取った1人である辻義隆市議は、
発信元を見ると、日本共産党阪南地区委員会と記されており、驚いた次第であります。(3月18日のツイート)
とコメントし、送られてきたFAXの画像を自身のツイッターにアップした。
送信者は共産党阪南地区副委員長
日ごろからSNSを活用している辻議員は、ツイッターのフォロワー数も5万6千人を超えている。そこに動かぬ証拠のFAX現物の画像がアップされた。
すると3月20日になって、共産党阪南地区委員会がホームページに〈公明党大阪市議への「要望書」の送付について〉(3月21日)と題する「声明」を掲載した。
この問題について、当地区委員会で調査・聞き取りをしたところ、地区副委員長の矢野忠重氏が送付したことが明らかになりました。要望の内容は別にしても、支持者を装ってこうしたファックスを送ることは、社会的に到底許されるものではありません。
支持者を装って送信した者が、じつは共産党阪南地区副委員長だったことを公表し、謝罪したのだ。
折しも、愛知県で知事のリコール署名が大量に偽造されていたことが発覚し、捜査が進んでいる渦中である。
共産党の役職者が公明党支持者を装って採決への反対を迫り、〝賛成したら今後一切投票しない〟と脅迫するようなFAXを10数人の市議に送信していたとなると、これは民主主義を揺るがす不正行為である。
さすがに共産党もことの重みを理解したらしく、関西記者クラブに宛てた文書では、
支持者を装ってこうしたFAXを送る事は、社会的に到底看過出来ない問題であり、公明党市会議員・団にも不快な思いをさせたことも重大です。地区常任委員会は、ただちに矢野忠重を副委員長から解任するとともに、公明党市会議員団への謝罪文(別紙参照)を出しました。
と、矢野忠重氏を副委員長から解任したと発表している。
21日にはNHKや新聞各紙もこの事件を報道した。
この際、副委員長は、自らの名前を明かさず、「40年来の支持者より」と記し、公明党の支持者を装ったということです。
送信されたFAXに「日本共産党阪南地区委員会」と送信元の情報が印字されていたことから発覚し、共産党は、社会的に到底、許されない行為だとして、副委員長を解任するとともに公明党側に謝罪文を提出しました。(「NHK関西NEWS WEB」3月21日)
繰り返し共産党から立候補
矢野氏は、共産党委員会事務所から「非通知」で送信。FAXに発信者情報が出ることも分からずに、これで身元がバレないと思い込んでいたのだろう。
しかも、この偽装工作をした矢野忠重氏は、単なる地区副委員長ではない。
1996年には泉大津市長選挙に立候補(結果は落選)。さらに2011年の大阪府議会議員選挙にも岸和田市の選挙区から立候補。
その後も、2012年、2014年、2017年の衆議院選挙に大阪18区から立候補している。
いずれも落選しているわけだが、市長や府議、国会議員の候補者として共産党から公認を受け出馬した人物だったのだ。
今回はたまたま党の事務所から送信するというマヌケな失態で明るみに出たわけだが、今回だけなのか、組織的に繰り返しおこなわれている工作なのか、疑念は深まるばかりである。
公明党の大阪市議のなかには、同じような内容の匿名電話を数名から受けたという証言(3月21日のツイート)もある。
阪南地区委員会の〈公明党大阪市議への「要望書」の送付について〉(3月21日)なる声明は、タイトルだけでは何のことか分からないようにした巧妙なものだ。いかにも共産党らしい。
共産党は大阪府委員会すら公式コメントをせず、府委員会がツイッターで阪南地区委員会のアカウントが出したタイトルだけの事務的なツイートをリツイートしてごまかす無責任さ。偽装文書を送信した当事者になる阪南地区委員会の委員長さえ処分を受けていない。
あくまで個人に責任を押しつけ、しかも役職の〝解任〟という形式的な処分だけで早急に逃げ切ろうとする考えなのだろう。
他党の支持者になりすまし、「賛成したら今後投票しない」という脅しで議会での賛否を変更させようとする。これは民主主義の根幹を揺るがす重大な偽装工作ではないのか。
それを実行していたのは、過去25年間、市長選や国政選挙の公認候補者に共産党が担いでいた党の専従職員なのだ。
その責任すら認めようとせず幕引きを図る日本共産党。
公安調査庁のホームページには、共産党について、
「軍事方針」に基づいて武装闘争の戦術を採用し,各地で殺人事件や騒擾(騒乱)事件などを引き起こしました。(「共産党が破防法に基づく調査対象団体であるとする当庁見解」)
当庁は,共産党を破壊活動防止法に基づく調査対象団体としています。
と明記している。
公正な議論ではなく攪乱工作で政治を動かそうとした日本共産党の謀略体質は、到底許されるものではない。
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