公明党が果たす役割――地方でも国政でも重要な存在

ライター
松田 明

唯一の安定した枠組み

 公明党が自民党の要請で連立政権に加わったのは1999年10月5日のことだ。
 北海道拓殖銀行の経営破綻、山一証券の自主廃業、日本長期信用銀行の破産申請など、90年代後半の日本経済は未曽有の危機に陥っていた。
 アジア通貨危機に加え、98年7月の参院選では自民党が過半数割れ。98年9月9日の日銀・金融政策決定会合で速水優・日銀総裁(当時)が、

 大銀行19行ですら、デフォルトを起こしかねないという、考えられもしなかったことが現実化しつつある(「ロイター」2009年1月28日※デフォルト=債務不履行

と深刻な危機感を表明していたと、10年後に公開された議事録で明らかにされた。
 冷戦終結から10年。日本発の世界恐慌の恐れが現実味を帯びるなかで、もはや自民党単独政権では立ち行かないことが明確になっていた。〝政治の安定〟は日本の命運を左右する喫緊の課題だった。
 99年5月、小渕恵三首相は訪問先の米国で、「自公」協力への期待を記者団に述べる。7月の自公党首会談では小渕氏から正式に政権参画への要請があり、公明党は臨時党大会で連立への参加を決定した。
 以来、3年3カ月の民主党政権時代を除いても、連立与党としての合計日数は6570日を超えた。年数に換算すると18年超となる。
 民主党政権も国民新党や社民党との連立で始まったが、政権の座に就くなり政権内での権力闘争が激化。連立が崩壊したばかりか民主党内からも離党者が相次ぎ、わずか3年余で終焉した。
 下野したあとも仲間内での合意形成ができず、対立が先鋭化。民主党は消滅し、かつての最大野党の流れをくむ社民党も事実上消滅したに等しい。
 かつての民主党政権の顔ぶれがズラリと復活した立憲民主党は支持率が伸びず、共産党との連携協力がなければ国会運営も選挙もままならない。

 誤解を恐れずにいえば、自公連立は現在の日本政治での唯一の安定的な政権の枠組みになっている。(中北浩爾『自公政権とは何か――「連立」にみる強さの正体)』

元・全国市長会会長の評価

 それにしても、なぜ公明党だけがこれほど長く連立のパートナーであり続けているのか。
 ひとつには、公明党が「大衆とともに」を理念とし、全国津々浦々の生活者のなかに根を張っている政党だからだろう。
 政治はバラ色の夢物語ばかりを出す玉手箱ではない。国民に困難や負担を要請しなければならない局面もしばしばある。
 風頼みの政党は、どうしても耳あたりのいいポピュリズムに走りがちだ。次の選挙での当落だけを意識して目まぐるしく合従連衡をくり返し、そのたびに議員の主張もあっさり変わる。
 公明党のことを「地中深く打ち込んだ杭」と評した政治学者がいたが、大衆の信頼と支持を得ているからこそ、中長期的な政策課題にも取り組める。
 もうひとつは、合意形成を図る能力の高さ。これは、市区町村のレベルから外交・安全保障まで、一貫してあらわれている公明党の傑出した資質といってよいと思う。
 公明党と自民党とは政治理念も支持層も大きく異なる。だからこそ、公明党が自民党とはチャンネルの異なる大衆の声を拾い、粘り強く合意形成を図ることで、結果的には政治が極端に傾くことを回避し、より幅広い国民の意見に沿うことを可能にしてきた。混乱が続く世界の先進国のなかで、日本は飛びぬけて政権が安定している。
 自民党選出の山口県議会議員を3期、防府市長を5期20年、第29代全国市長会会長をつとめた松浦正人氏は、市長時代に公明党の意見を聞く必要性をいつも感じていたという。

 全国市長会の会長を務めてきた中で、全国の市長たちも皆同じように感じていたとも思っています。そして、それは国においても同じです。さまざまな日本の危機にあって最悪の事態に直面することを免れたのも、公明党の現場目線に立った政策提言があったからだと思っています。(『第三文明』2月号

「24時間365日議員」

 しかし、コロナ危機が深刻化するなかで、あいかわらず自民党のなかでは不祥事が絶えない。
 松浦氏は、小選挙区制度が導入されてから自民党では派閥の領袖や党本部の存在感が弱まり、自民党の国会議員が〝小選挙区を牛耳る一部の人たちに選ばれるもの〟に変わったことを率直に指摘している。

 その仕組みを自民党の地方の県連のボスたちがつくってしまったのです。(同)

 そして、この点で公明党の議員は日頃から地道に地域に貢献している党員・支持者が資質を認めた候補者が、さらに選挙でふるいにかけられていると言明する。だから信頼に値する議員が誕生するのだと。

 公明党はそのような議員を全国自治体に三〇〇〇人もの陣容で広げているのです。全国各地の地方自治において、この三〇〇〇人の方々は、政治の地崩れを防ぐ〝敷石〟のような存在になっています。(同)

 公明党の議員たちがいかに真剣に仕事に取り組んでいるかは、党派を超えて衆目の一致するところだろう。
 2019年に刊行された『日本の地方議会』(辻陽/中公新書)でも、第2章「議員の仕事」のなかで、「24時間365日議員」と題された第3節が、市議会議長まで務めたある公明党市議の姿で綴られている。
 多いときは日に3件の市民相談を受けるなど、まったくプライベートなどないに等しい激務をこなし、同時に議長に選出されるほど公平性と見識をもっている。
 書籍の性質上、この議員の名前は明かされていないが、地方/国政を問わず公明党議員を象徴する姿だろうと思う。

「チーム3000」の圧勝を

 公明党のもつ高い能力の3番目として、3000人の議員がフラットかつ密接に連携するチームワークがある。閣僚も市区町村議員も互いに「さん」づけで呼び合い、松浦氏が語ったような「ボス」も存在しない。
 たとえば都府県境をまたぐ道路やインフラの整備なども、公明党はそれぞれの地方議員が、あるいは地方議員と国会議員が連携して対処してきた。
 この「チーム3000」のネットワークこそ、日本の政党のなかで公明党だけがもつ特質である。
 2021年は、2つの大きな〝政治決戦〟が控えている。7月22日に任期満了を迎える東京都議会議員選挙と、10月21日に任期満了を迎える衆議院選挙だ。
 そのほかの統一外も含め、公明党の「チーム3000」を構成するピースが欠けることなく引き続き機能し続けられるか否かを決する選挙の年になる。
 世界全体で新型コロナウイルス感染拡大のスピードが高まっている困難な時期であり、都政にも国政にも遅滞や混乱は許されない。
 ウイルスとの戦いが2年目に入り、誰しもがストレスや不満、不安を強くしている。支持率が伸びない野党は、そうした人々のネガティブな感情を煽って燃料にしようとするだろう。
 批判や非難をするのは簡単でも、実際に合意形成をしながら政治を前に進めることは至難である。
 政治の傲りや腐敗を拒絶し、社会の分断を避けて多様な意見を集約するためにも、公明党には〝圧勝〟をもって、より一層の存在感を示してもらいたい。

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