山口代表、豪雨の熊本へ――野党はそれどころではなく

ライター
松田 明

安倍首相の視察に先立って

 7月3日から梅雨前線に湿った空気が流れ込み、九州を中心に列島各地で豪雨が続いている。
 福岡県大牟田市、熊本県山鹿市、鹿児島県鹿屋市、長崎県長崎市などでは、72時間の降水量がいずれも1976年ないし77年に統計を取りはじめてから最大量を記録。
 内閣府の発表(「令和2年7月豪雨による被害状況等について」)では、7月13日6時30分現在で、全国の死者は70人、心肺停止1人、行方不明11人となっている。
 7月9日の時点で、気象庁は進行中の豪雨を「令和2年7月豪雨」と命名した。気象庁が進行中の豪雨災害に命名するのは初めてのことだ。
 これほど長期間にわたって豪雨災害が継続するのは、気象庁でも過去に例がないという。
 まだ豪雨が続く渦中の7月11日、公明党の山口那津男代表は熊本県入りした。
 山口代表はまず熊本県庁を訪れ、蒲島知事と面会。面会後の記者会見では、以下のように述べた。

 人命救助を最優先でやっていきますし、またお願いしたいということを申し上げました。また、すべての被災された方々にお見舞いを申し上げた上で、避難生活を余儀なくされている方々に対する支援の手を迅速に及ぼしていく。
 特に夏場で湿気の多い季節ですから、できるだけ快適な避難生活を送れるよう配慮していきたい。また、お願いしますということを申し上げました。
 県の力だけでは到底、財政的に困難がありますので、やはり国のバックアップが重要だと思います。
 これは避難の支援とともに、復旧復興の過程においても重要だと思いますので、まずは激甚災害の指定を一刻も早くとわれわれは考えておりますし、また安倍総理にも強く申し上げたいと思っております。(YouTube公明党チャンネル)

 山口代表はさらに、現在、一次補正、二次補正が執行中であることに触れ、地方創成臨時交付金、国の予備費などの積極果断な活用についても言及した。
 また、公明党として議員の立場から地元の声をしっかりつかみ、国会の閉会中審査に反映させることを言明。
 国の防災減災緊急3カ年計画が今年度で終了するが、来年度以降について必ずしも国の姿勢が積極的でないとして、政府に中長期的な対策を求めることを述べた。
 その後、山口代表は球磨川が氾濫した人吉市、芦北町、八代市などを訪問。被災現場を視察するとともに、避難所を訪れて被災住民らの声に耳を傾け、励ましをおくった。また、市長らとも懇談し、被害状況の把握に努めた。
 安倍首相は13日に日帰りで現地を視察したが、これに先立つ形で連立与党の党首が現地を視察し、政府が取り組むべきことがらを具体的に明言したことの意味は大きい。
 視察には党の対策本部長代理である江田康幸衆議院議員や、地元の県議、市議らが同行した。
 新型コロナの感染が続くなかでの大規模な豪雨災害。公明党の「チーム3000」のきめこまやかな連携に期待したい。

「合流」は「分解」のはじまり

 一方、野党は同じ時期、〝お家の事情〟で紛糾が相次いだ。
 野党第一党の立憲民主党は、国民民主党との合流話がいまだ前に進められず、枝野執行部の求心力がますます低下している。

 立憲民主党の枝野幸男代表は12日、国民民主党との合流を巡り、国民民主の玉木雄一郎代表が求める対等な立場での協議などの条件に対し、6月下旬以降に打開案を提示したと明らかにした。視察先の千葉市で記者団に「どうしたら条件をクリアできるのか、考え方を打診している。残念ながら何のお答えもいただけていない」と述べた。(「共同通信」7月12日

 国民民主党の内部には、立憲民主党との合流を図る小沢一郎氏らのグループと、それに強い拒否反応を示す前原誠司氏らのグループが存在している。
 立憲民主党を離党した山尾志桜里衆議院議員は、国民民主党への入党が認められた7月8日、自身のツイッターにこう投稿した。

国民民主党への入党が決まりました。

さあ、野党共闘に代わる旗印を作ろう!それは「経済」と「憲法」で示す骨太の国家像であり社会像だ。(7月8日の山尾議員のツイート

 立憲民主党や共産党が掲げる「野党共闘」の非現実性を痛烈に皮肉った内容だ。
 山尾議員の入党を認めたこと自体が、国民民主党として立憲民主党とは距離を置きたいという意思表示だという見方もある。
 いずれにせよ、仮に立憲民主党と国民民主党が合流するとなれば、離反する勢力が出ることは避けきれず、新たな〝分解〟のはじまりとなるだろう。

「命の選別」発言の衝撃

 都知事選で3位に終わった山本太郎氏が率いるれいわ新選組でも、新たな問題が起きている。
 2019年の参院選で同党の比例候補者になっていた大西つねき氏が、7月3日にアップした自身の動画(その後、謝罪して削除)のなかで、

高齢者をもうちょっとでも長生きさせるために子どもたちか若者たちの時間を使うのかってことは真剣に議論する必要があると思います。(「テレ朝ニュース」7月10日

こういう話、たぶん政治家怖くてできないと思いますよ。ま、「命の選別するのか」とか言われるでしょ。生命、選別しないとだめだと思いますよ。もうはっきり言いますけど、何でかっていうと、その選択が政治なんですよ。その選択するんであれば、えっと、もちろん高齢の方から逝ってもらうしかないです。(同)

などと発言した。
 これには、ナチスの優生思想そのものではないかという批判が殺到。支持者や他の野党などからも批判が出たが、山本太郎代表は7月7日の時点でも、

大西氏を除名するという判断はこちらにとっても簡単なことではあるが、
それでは根本的な解決にはならない。

多くの人々の心の中にもあるであろう何かしらかの優生思想的考えに、
光が当たったことを今回はチャンスと捉え、
アジャストする責任が私たちにはあると考える。(「れいわ新選組サイト」大西つねき氏の動画内での発言について

と、「チャンス」などと表現し、厳しい処分をしない考えを党の公式ページに表明した。
 山本代表のあまりにも〝軽い〟感覚がさらなる批判を招くと、翌8日には、

この発言の問題は、
単に個人を処分すれば終わりにできるものではありません。

できるだけ早く、今月中にインターネットで完全公開での複数回のレクチャーを始めます。

加えて、大西氏への最終的な処分に関しては、
党の意思決定の場である総会において行います。(同 大西つねき氏について(続報)

と弁明。
 10日に開かれた山本代表の記者会見も、通行人の行き交う路上でおこなうという、常識を疑うものだった。
 一連の経過は、この政党が掲げていた「弱者」や「いのち」への〝理念〟めいたものが、いかに薄っぺらな、もっとはっきり言えばハリボテのようなものだったかを物語って余りある。
 加えて対応の稚拙さは、もはや同党が政党としての体(てい)をなしていないのではと思わざるを得ない。

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