初めて入った著者の名前
上皇后・美智子さまの歌集『ゆふすげ』(岩波書店)が、本年1月15日の発売から1カ月で10万部を超えたという。
美智子さまの歌集には、これまでにも上皇さま(当時は皇太子)との共著『ともしび』(1986年/ハースト婦人画報社)、単著としての歌集『瀬音』(1997年/大東出版社)がある。
ただし、それらには「皇太子同妃両殿下御歌集」「皇后陛下御歌集」とあるのみで、作者の個人名が記されていなかった。今回は初めて、この歌集の詠み人である作者の名が「美智子」と記された。
皇室の和歌の御用掛(ごようがかり)で、歌人であり細胞生物学者でもある永田和宏氏は、本書巻末に寄せた「解説」で次のように記している。
もちろんお二人は、わざわざ名前を記さないでも、その歌集が誰のものであるかは一目瞭然です。
しかし、今回、私は著者としての美智子さまのお名前を記すことを、強くお勧めいたしました。「美智子」という名を持った一人の歌人の歌として、皇太子妃、皇后、上皇后などといったバイアスをかけずに、読者の目に届いてほしいとの願いからです。美智子さまの御歌は、そのように読まれてこそ、本来の歌としての輝きを見せてくれる歌であると私は信じております。(本書/永田氏の「解説」)