連載対談 哲学は中学からはじまる――古今東西を旅する世界の名著ガイド

第4回 各教科と哲学のつながり――①科学(理科)と哲学(下)

(対談者)
福谷 茂(京都大学名誉教授、創価大学名誉教授)
伊藤貴雄(創価大学文学部教授)

 

中学生時代の自分にお勧めしたい哲学書(続き)
~伊藤「デカルトの『方法序説』」

編集部 伊藤先生は、中学時代の自分にお勧めするとしたらどんな哲学書でしょうか。

伊藤 やはり、デカルト(※)『方法序説』(山田弘明訳、ちくま学芸文庫)ですね。
 最近はとても読みやすい翻訳も出ています。しかも、内容は自伝的です。映画にもできそうなくらいです。
 さきほど福谷先生が三浦梅園を紹介した流れで、日本の思想家と対応する近世ヨーロッパの人物を考えていたのですが、文系と理系の両面を合わせ持つ「文理融合モデル」の人物として、デカルトが浮かんだのです。

 『方法序説』は大きく6つから成り立っています。
 第1部で、「学校での勉強は役に立たなかった。だから私は〈世界という書物〉を読むために旅に出た」と述べています。学校教育への反逆から始まるのが面白いですよね。
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民意を削る「議員定数削減」――合理的な理由欠く暴挙

ライター
松田 明

「政治とカネ」から論点をすり替える

 12月5日、与党である自民党と日本維新の会は、衆院議員定数を約1割削減するための法案を衆議院に提出した。自民と維新は10月の連立合意で、議員定数1割削減の目標を掲げ、「臨時国会に法案を提出し、成立を目指す」と明記していた。
 ただ、両党の法案には問題点が多すぎるとして、野党はもちろん、新聞各紙や、連立を組む自民党内からも強い批判と疑問の声が上がっている。

 今回の案には、自民が抵抗する「政治とカネ」の改革から論点をすり替える思惑がある。議員歳費などの削減額は限定的だ。
 与党が「身を切る改革」をうたうのであれば、より痛みを伴う企業・団体献金の規制強化や、政党交付金の減額などに踏み込む方が理にかなっている。
 臨時国会の会期は残り2週間を切り、審議時間も限られる。「結論ありき」で拙速に推し進めるようなことがあってはならない。(『毎日新聞』「社説」12月5日

 法案は、現在465の衆議院定数を「45以上」減らすと明記。しかも、与野党協議で1年以内に結論が出なければ、小選挙区25、比例代表20の計45を「自動削減」するという条項を盛り込んでいる。
 この法案の抱えている〝異常〟ともいうべき問題点を整理してみたい。 続きを読む

【道場拝見】第17回 拳龍同志会(下)

ジャーナリスト
柳原滋雄

2人の師匠

 新城孝弘館長が27歳で師事した當真正貴(とうま・せいき 1922-1998)は、松林流の長嶺将真(ながみね・しょうしん 1907-1997)、渡山(とざん)流の兼島信助(かねしま・しんすけ 1897-1973)、少林流の島袋善良(しまぶくろ・ぜんりょう 1909-1969)などから空手を学んだ。広く弟子をとる空手家ではなかったこともあり、事実上、マンツーマンで教えを受けた。

當真先生は通ってくる弟子だけに教えていました。僕が最後の弟子だったから、えらくかわいがってもらった。

 師匠の自宅(沖縄市泡瀬)の居間を稽古場に、週2回通ったという。型や武器の練習をした後は、関節技を中心とする裏技の稽古にも熱心に取り組んだ。
 稽古が終わると空手談義で夜遅くまで語り込むことも多かった。當真師より少し遅れて、久場良男館長にも師事したので、泊手と剛柔流の両方の空手を学んだ。つまり、首里手・泊手と那覇手に通暁する。

僕は流派という概念があまりないわけ

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『摩訶止観』入門

創価大学大学院教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第104回 正修止観章 64

[3]「2. 広く解す」 62

(9)十乗観法を明かす 51

 ⑬大車の譬え

 この段の冒頭に、

 是の十種の法を、大乗の観と名づく。是の乗を学ぶ者を、摩訶衍と名づく。云何んが大乗なる。『法華』に云うが如し、「各おの諸子に等一の大車を賜う。其の車は高広にして、衆宝もて荘校す。周匝(しゅうそう)して欄楯あり、四面に鈴を懸く。又た其の上に於いて幰蓋(けんがい)を張り設け、亦た珍奇の雑宝を以て之れを厳飾し、宝縄交絡して、諸の華瓔(けよう)を垂れ、重ねて綩莚(おんえん)を敷き、丹枕(たんしん)を安置せり。駕するに白牛を以てし、肥荘にして力多く、膚色(ふしき)は充潔に、形体(ぎょうたい)は姝好(しゅこう)にして、大筋力(だいこんりき)有り。行歩(ぎょうぶ)は平正(びょうしょう)にして、其の疾(はや)きこと風の如し。又た、僕従(ぼくじゅう)多くして、之れを侍衛(じえ)せり」と。(第三文明選書『摩訶止観』(Ⅲ)、近刊、頁未定。大正46、100上4~10)

とある。 続きを読む

【道場拝見】第16回 拳龍同志会(上)

ジャーナリスト
柳原滋雄

千客万来の沖縄市の道場

 新城孝弘館長(しんじょう・たかひろ 1956-)が沖縄空手道「拳龍同志会」を設立したのは1983年。まだ20代後半だった。
 14歳で空手を始め、本部流や少林流に親しんだ後、上京して仕事をした8年間は松濤館空手で腕を磨いた。そこで本土の伝統空手の特徴を学んだ。沖縄に戻ってからは自分の道場を開いた後、泊手の使い手である當真正貴(とうま・せいき 1922-98)に20年以上師事した。現在は沖縄空手道拳法会拳武館の久場良男館長(くば・よしお 1946―)に師事する。前回紹介した剛柔流渡口系の流派である。そのため新城館長は自ら「流派という概念があまりない」と語るとおり、流派を超えた指導を行えるのが強みだ。
 この道場の特徴は、武術空手としての沖縄伝統空手を教えるだけでなく、青少年を中心とした競技空手の指導も熱心に行っている点にある。2021年東京オリンピック男子型部門で金メダルを取った喜友名諒選手が子ども時代に在籍した道場といえばわかりやすい。 続きを読む